コロナ私史 令和2年4月

新年度が始まる。まさに暗黒の船出といったところで、あの春に新生活をスタートさせた人たちは一体どんな気持ちで大海原に漕ぎだしたのだろうか。4月7日には遂に緊急事態宣言が発令される。国民は歴史的日常に生きることとなる。

経済は低迷し、かなりの短期間で補正予算が編成される。人々は失われた機会を求めて声を上げ始める。楽しみにしていた時間、かけがえのない思い出、入学式、新学期、入社時研修、商売のチャンス、中止されたイベント、本来得られたはずの売上。災害によって失われるものは多い。国民がみな一様に痛みを感じ、その苦しみを乗り越えるべく耐え忍んでいた。そしてまだ感染症は死者をじわじわと増やし、身近な人がいつか亡くなってしまうかもしれないという恐怖さえも多くの国民が共有していた時期であった。それがいまでは累計1万人が亡くなってしまった。人々の意識はどうだろうか。

政策面では、災害と自粛と補償の関係性、税金の使い方やその哲学、積極財政論の信頼性など、国家という理念の根本を左右する重大な論点が芽を出した時期であった。

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