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【企画参加】才の祭小説 応募作品~『アドベントカレンダーの秘密』~

こちらの企画に参加させていただきます。↓


『アドベントカレンダーの秘密』

今日からアドベントです。
朝、目を覚ました翼くんは、
起きるなりすぐにリビングへ向かいました。

リビングに飾られたツリーの下に
『1』から『24』までの数字が書かれた
手のひらサイズの箱がつまれており、
その中から、
『1』の箱を取って開けました。
中には、
"星の形のクッキー"が入っていました。

クリスチャンの翼くんの家では、
翼くんが生まれた6年前から
アドベントカレンダーを続けています。

箱のなかには、
飴やチョコレートやクッキーなどのお菓子、
そして、
クリスマスツリーに飾るオーナメントの時もあります。
ミニカーなど小さなおもちゃが入っている日もありました。
毎年、ママが準備してくれています。

翼くんは生まれた時からずっとママと二人暮らしです。
翼くんは、アドベントカレンダーを開けるのが毎年楽しみでなりません。


その日の夕方6時、
ママが仕事から帰ると、
郵便受けの中に封筒が1つ入っていました。
封筒には、
『そら さまへ』と『1』だけ記されており、
差出人の名前は書いてありませんでした。
"そら"というのは、翼くんのママの名前です。
ママが封筒を開けると、
キャラメルが1個入っていました。
5時に翼くんが学童保育から帰ってきたときには、
新聞しか入っておらず、
封筒は入っていなかったと言います。
一体誰からの送りものなのでしょう。


次の日の夕方、
仕事から帰ってきたママが郵便受けを覗くと、
また、『そら さまへ』『2』と記された
小さな封筒が入っていました。
そしてその日は、
折り紙で折った天使が封筒から出てきました。
天使にはひもがついていたので
ママはクリスマスツリーに飾りました。
「これはきっと、誰かがママにもアドベントカレンダーを贈ってくれているのね。誰かしら?」
ママは不思議そうに首をかしげました。
「誰だろう。僕が帰ったときは入っていなかったよ。」と、
翼くんも横で首をかしげました。


次の日の夕方にも、
『そら さまへ』『3』と記された封筒が
入っていました。
中には、
小さな小袋の一食分のイチゴジャムが
入っていました。


次の日とその次の日の、土曜日と日曜日は、
ママのお仕事はお休みで、
郵便受けにアドベントカレンダーも届きませんでした。


次の日の月曜日の夕方の仕事帰り、
ママが郵便受けを覗くと
『4』『5』『6』と記された封筒が3つ
入っていました。
中にはそれぞれ、
紙粘土で作られた小さな犬のオーナメントと、
飴1個と、
ビーズで作られた小さな指輪1つが、
入っていました。
土曜日と日曜日の分もあわせて3日分入っていたのです。


そのようにしてママ宛のアドベントカレンダーが、
平日の日は毎日、
土曜日日曜日の分は月曜日の分とまとめて、
郵便受けに届きました。

紙粘土で作られたオーナメントや置物。
ビーズの飾り。
折り紙で折ったクリスマス飾りや動物たち。
マシュマロやラムネやグミ。
カップゼリーや一口チーズの日もありました。

誰からの贈り物かはわかりませんでしたが、
ママは、天使からの贈り物のようで
毎日わくわくしながら郵便受けを開けました。


そして迎えた12月24日のクリスマスイブ。
ママは仕事を終え、
クリスマスケーキを片手に帰ってきました。
いつものようにわくわくしながら郵便受けを開け
封筒を見た瞬間ママは驚き、
慌てて封筒の中を覗きました。
封筒の中のものを見て
溢れ出る涙をこらえながら家の中に入り、
玄関で出迎えた翼くんのことを強く抱きしめました。
そして、
「ありがとう翼」と
ママは翼くんの頭を撫でながら言いました。
「ママにアドベントカレンダーを毎日届けてくれた天使は翼だったんだね」
ママに言われて、
翼くんは飛びっきりの笑顔で答えました。
「ママが喜ぶ笑顔が見たかったの。
僕、毎年アドベントが楽しみで、
毎日、カレンダーの箱を開けるのが楽しみで、
アドベントの間ずっと毎日ワクワクして、
開けるときいつも、とっても嬉しいの!
だから、ママにも嬉しい気持ちになってほしかったの。
ママのことが大好きだから!」。


最後の24日目に
郵便受けに入っていた封筒の宛名は、
『そら さまへ』ではなく
『ママへ』と書かれていたのです。
そして中には、
「きょうはぼくのたからものをあげます」
と書かれた手紙と写真が入っていました。
写真には、ママと翼くんが写っていたのです。
翼くんがずっと大事にしている宝物の写真です。

それをみて、
ママはアドベントカレンダーの送り主が
翼くんだと気づいたのでした。

翼くんは、毎朝、ママが用意してくれたアドベントカレンダーの箱を開けるのが嬉しくて、
大好きなママにも嬉しい気持ちになってもらいたくて、
学童保育で出るお菓子の飴やキャラメルを少し食べないで残し、
こっそりポケットに入れて帰り、
学童保育から帰り
郵便受けから新聞を取ったあとに、
残したお菓子を封筒に入れて
郵便受けの中に置き、
ママにあげていたのです。
時には、
給食で出るジャムやチーズやゼリーを。
そして、
折り紙や粘土で作った物も入れました。
どれも翼くんの愛がつまった24個の贈り物でした。


親子の愛のこもったオーナメント飾りが
ところどころで光るクリスマスツリーをみながら、
翼くんとママは素敵なクリスマスイブを
過ごしました。

おしまい




私は、恋愛関係の本やドラマなどもこれまであまりみたことがなく、"二人の愛"というのは、普段あまり触れない分野でした。
"愛"についても、キリスト教の学校に通っていた頃に聖書の授業でイエスさまの愛については学んだことがありましたが、その他はあまり意識したことがありませんでした。
ですが今回、コメント欄に、PJさんから素敵な企画への招待メッセージをいただき、"愛"について考えてみました。
そこで浮かんだのが、この親子の愛のおはなしでした。

私の拙い物語を最後まで読んでいただきどうもありがとうございました。

毎日、皆々様にほっこりが訪れますように🍀


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