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凄いよ。お前凄いよ。

親友でどうしようもない10代後半を過ごした奴がいるんですよ。まあ典型的な当時の不良ですよ。ちょっと見ないなと思ってたら久しぶりに電車で会った。親父さんといて「おー久しぶりじゃん!どこ行くんこれから?」って聞いたら「家裁だよ」なんて事もあった。

学園祭に地元の不良が来ちゃってモメて、「明日もっと連れてくるからな」って言われて、「どうなの?やり合っちゃっても大丈夫だよね?」って電話したら「相手何てグループ?」って聞かれた。聞いた名前言ったら「あー。とりあえず行くから手出さないでおいて」って言われた。

次の日、ちゃんと学校まで来てくれた。1人で。そんで相手が来た。20人くらい来たかな。まあ同級生はビビるよね。俺と親友2人でお迎えしました。当然「誰だテメーは?」って感じになります。親友は

「まあまあ。やめなさい。俺は元○○○○の○○って言うんだけど。」

と静かに、とても穏やかな声で言った。それで終わりだった。それだけで、全員おとなしく帰って行った。「あれ?知り合いだったの?」と聞いたら、「以前少しモメた事があってね」と言った。そして

「あと大丈夫そうだね。帰るわ。」

と言って帰っちゃった。そんな事があった。そんな奴だった。

10代後半から数年間、へんなもんにハマり始めて、その間は連絡取らなかった。久しぶりに飲みに誘ったらまだ少し変で、またしばらく連絡取らなくなったけど、そいつの事諦めた事はただの一度も無いと声を大にして言っておく。

「アイツやばい」「終わった」
そんな声も聞いた。でも諦めなかった。必ずこっちの明るい世界に帰って来るって信じてた。

心が壊れちゃって、かなり苦しい状況にいると聞いた時も信じるしかなかった。助ける事は出来ない。自分で乗り越えるしかない。

それから何年か経って、「サーフィンにハマってるらしい」と聞いた時は嬉しかった。

脱出に成功したんだ

僕の店にも来てくれるようになった。ずっと笑顔だ。帰り際必ず握手の手を出してくる。今でもそうだ。「信じてくれてありがとうな」そう言ってる気がする。気のせいかも知れないけど。

できる仕事を探してそれを一生懸命やって、何年か前に清掃会社を立ち上げた。もう地元にはいないけど、地元の仲間で困ってる奴がいれば仕事回して助けてやってる。結婚して可愛い女の子が産まれた。幸せに、元気に生きてる彼を見て僕も嬉しい。

シゲオって奴なんだけどね。

そんなシゲオが今日店に来てくれた。でね、
「奥さんも在宅が多くなってさー、俺も仕事飛んだりしてて、久しぶりにゆっくり話す時間が出来てさー、家買う事にしたのよ。」って。

え!?こんな時に?ってなった。

新築買ったんだって。今月引っ越しなんだって。こんな時にですよ?凄くないですか?メチャクチャ格好いいよ。

シゲオ良かったな。よく頑張ったな。「いやいや、トンベの方が全然スゲーよ」っていつも言ってくれるけど、シゲオ、メチャクチャスゲーよ。

今でも忘れない。「あと大丈夫そうだね」って言って帰って行く後ろ姿。格好良かったよ。ずっと俺のヒーローだよ。

シゲオおめでとう!これからも幸せにな!



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