【マダミスを再定義する:ジャンル拡張宣言】について考えました。

人が集まる旗の名称定義ってむずかしいよねって話。

にっしーさんのマダミスを再定義する:ジャンル拡張宣言の記事( https://note.com/nissy_mmg/n/nc3e7c1507f83を読み、取り急ぎXの方で https://x.com/CLOSS_LARP/status/1741819306122576252?s=20
のように書かせていただきましたが、流石に言いっぱなし感がありましたので、改めて読ませていただいたことに対する言葉を書き記させていただきます。

なお、この文章は体験型LARP普及団体CLOSSの代表の星屑が書いておりますが、文責は星屑個人に帰属します。

もし届けば、にっしーさんにも読んでいただき、対話や物語体験型コンテンツをより一層盛り上げていくための提言のきっかけになったら嬉しいなと考えています。

まず、私たちは体験型LARP普及団体CLOSSとしてLARP(ライブ・アクション・ロール・プレイング)という文化活動を普及しようと、活動を続けています。

※「プレイング」で切っているのには理由がありまして、LARPの中には「ゲームであるもの」と「ゲームではないもの」が(日本においても)存在しているからです。

代表作には全員LARP初心者でもどんとこい! なチュートリアルLARP「山賊たちの甘き受難(中世ファンタジー)」や「あかいみず(ホラー)」。ミステリーに寄せたLARP「時の檻」などのある程度筋書きのある世界観に没入して楽しむストーリーLARP。ダンジョンをサバゲーフィールドを使って作り出す! 「Quest Of Labyrinth」などのようなストーリーがその場で作られていくワールドダイブ型のLARP。教育的な視点を持って構成される図書館を舞台にしたLARP「Book World」。などなど、LARPという「様々なジャンルや実施目的、参加目的を包括する文化活動そのもの」をなんとか日本の多くの人たちに知ってもらえるよう、イベントや広報活動を通して活動しています。

LARPチャーター&デリバリーなどを通して、全国に出張公演などもしています。

さて、まず最初に書いて置かなければならないこととして、にっしーさんが記事で仰っていることの多くの部分に対しては「わかる。そうだよね」と、私自身は頷いたところが多かったということです。ご提言いただいたことについて、真摯に受け止めたいと感じましたし、なにかの形で返させていただきたい。そう感じたため、こうして文章を認(したた)めています。

そして、結論から言うと

・ジャンル(共通の特徴やテーマに基づいて分類したカテゴリー)とカルチャー(思考や感情、技術や制度の一つのまとまり)として存在するものを一緒に括ろうとすると、誤解釈が多発して本質的な話になりづらいのでもったいないです。
・『マダミス』から生まれた『文化』を何らかの名称を用いて、定義、構成してみるとすっきりするのではないでしょうか?

となります。以下、なぜ結論に至ったのか。

まず、ここ数年のマーダーミステリーというジャンルを遊ぶ人たちの人口の伸びは目覚ましいものがあり、それはこのジャンル・コンテンツに関わる多くの人たちの情熱や想いの強さを伺えるものですし、「体験型のコンテンツ」の1つとしては1、2を争う「熱い」ジャンルです。そうした「熱い」ジャンルの名称をして「『マダミス』を再定義」してはどうか。という提言については、力強さを感じました。

(この力強さがあればこそ、様々な反響も産んでいるように思いました)

LARPは、1980年ごろから、【即興劇的要素や物語の共同創作とゲーム要素(ルール、克服するべき障害等)を組み合わせる手法を用いることで、私達が普段暮らす世界とは「異なる世界を体験できる」を実現したい人たちが構築した文化的活動】として、同系統の「遊び」や「活動」を飲み込みながら最終的には「Live Action Role Playing」という言葉を旗として「文化」として認知され、以後も多くのLARPや体験型のコンテンツを生み出すクリエイターたちと共に創造と再構成を繰り返しながら成長し続けている「文化的活動(カルチャー)」です。「ジャンル」ではなく。
なお、LARPの構成の中には、多様な「ジャンル」や「ローカルカルチャー」が内包され、これらはしばしばLARPクリエイターたちを悩ませます。

物語体験型のコンテンツは、とても楽しいものです!
マダミスを始めとして、体験性のあるものはこれからも日本で多くの人が楽しんでくれる魅力的なものを備えているわけですから、私はLARPという文化を用いて、様々なジャンルのコンテンツを通して盛り上げていきたいと考えています。とはいえ、「プレイ人口がまだまだ少ないよね」についてはおっしゃるとおりでぐうの音も出ない!

さて、マダミスもLARPも「同じ体験型のコンテンツである。」と言うこと”は”できます。(体験型のエンタメとはLARP側としては障りがあるので括れません)。

コンテンツっていう「超でっかい」分類なら親類です。

しかしながら、現定義においての「マーダーミステリー」とは「ジャンル」であると私は認識しています。
そして、にっしーさんが指摘されているように、マダミスは多様化し、拡大し、派生したジャンルを生み出し続けています。
もちろん、マダミスを起源として生み出された「遊び方」や「イベントの建て方」「物語の感じ方」や「参加者同士のコミュニケーションの取り方」「運営の行い方」などなど、様々な「考え方」や「技術」「ノウハウ」「社会性」などは多く存在しており、素晴らしいものです。
こう考えたとき、「あれ?これってすでに『ジャンル』の枠を飛び越えた概念や理念が、即ち文化的要素が存在しているのでは?」と、考えた次第なのです。
この考えは、にっしーさんがした提言にも重なってくるのではないか、と考えました。

私の中では、にっしーさんの提言は、

「マダミスが遊ばれる中で日本人同士の中に発生した遊び方やその様態」すなわち文化的活動を示す旗印となる用語として『マダミス』を、

「各プレイヤーが登場人物の1人となって行動し、物語を体験するエンターテイメント」

マダミスを再定義する:ジャンル拡張宣言

と、再定義することで『マダミス』に関わる人々の解釈を拡大し、物語体験型のエンターテインメントを示す言葉として確立させたい。と、読み解いているからです。(あくまで、これは星屑がそう解釈しただけであり、御本人の意図から盛大に外れている可能性があります)

多くの人に認識されている言葉は「マダミス」なのだから「各プレイヤーが登場人物の1人となって行動し、物語を体験するエンターテイメント」として意味形成を大衆に対して行って良いのではないか?

この提言自体は、理が通っている部分もあります。また、にっしーさんの想いの大意は次の文章に表れていると確信するところです。

これから新たなプレイヤーが激増するとなると、マダミスやTRPGといったアナログゲームやその文化、文脈をまったく知らない人たちが参入します。

そうした新規層に向けては、従来のマダミスとストプレ、LARPを区別することよりも、そもそも物語体験エンターテイメント全体の存在を認知してもらうことが重要です。

マダミスを再定義する:ジャンル拡張宣言

ぶっちゃけ、物語体験エンターテイメントを表す言葉として、「ライブアクションロールプレイング」だと長いし、「LARP」だと、言葉として日本では流行らないから使えないよね。ってことも(これまでも多くの人から言われてきているし)凄くよくわかります。(私も苦労しているので。あと、LARPだとエンタメではないものも内包するので意味形成としてもそぐわないし)

だからこそ、提言としてももったいないと率直に感じました。なぜなら

「マダミス」はすでに「マーダーミステリー」を省略したカタカナ略語である。
そして、「MURDER」と「MYSTERY」という英語はそれ自体に強い意味を帯びていることは、すくなくとも「マダミス」をプレイする主客層は認知しやすい言葉である。

それに伴って「言葉の意味」はおおよそ、大雑把に「殺人ミステリーものを遊ぶこと」と一旦認識されてしまいがちな言葉です。

以下に、あえて対比をさせます。(途中から茶番)
「各プレイヤーが登場人物の1人となって行動し、物語を体験するエンターテイメント」=「マダミス」
「各プレイヤーが登場人物の1人となって行動し、物語を体験するエンターテイメント」=「LARP」

どっちも、=(イコール)だとパッとは理解しづらくないですか?
冷静に考えて。(いや、これすっごく言いたくなかったけど……ね?)

「各プレイヤーが登場人物の1人となって行動し、物語を体験するエンターテイメント」=「ライブアクションロールプレイング」
うーん、長い。ボツ!でも、いいとこ行けそう。

「各プレイヤーが登場人物の1人となって行動し、物語を体験するエンターテイメント」=「ストーリーテリングロールプレイング」

もうええわ。

閑話休題。

物語体験型のコンテンツを、参加見込みのある人たちが「面白そう!参加したい!」と思ってもらえて、かつ「思ったのと違った!ふざけんな!」を無くしたい。
私のようなクリエイターが悩むのは、いつもここです。そういう時に、ジャストフィットしてくれる旗印たる「言葉」が存在してくれれば苦労しないのに!と、常々思います。

ジャストフィットする言葉がないので、自分自身が生み出したコンテンツを言い表す「言葉」を創造して、認知拡散させて育てる事が行われることもあります(少なくとも、私はします)。

そうして生まれている「言葉」には、作家の作品やコンテンツに対する「想い」が乗っています。これはとても重いものです。
しかしながら、これは結果として「ジャンルから派生したものの言葉の乱立」や「言葉の意味理解の齟齬からくるミスマッチ」をコンテンツの供給側と需要側にもたらします。

しかし、供給側と需要側の、「言葉」に対する共通理解がないと、マッチングが大変であることは当たり前です。
そして、乱立した「言葉」を、大枠で一括りにして「マッチングしやすくなる」ようにするための概念が必要になってくる。

※ただし、仮にすでにある「言葉」が別の意味として広まってしまうことは、その言葉を生み出した作家(の権利や心)を傷つけるかもしれません。そこは、留意しなくてはならない。

そうすることで、(ここでは、便宜的に)
「各プレイヤーが登場人物の1人となって行動し、物語を体験するエンターテイメント」が好きなら、この「言葉」をキーワードとして検索して、詳細なマッチングは作品の詳細を見ながらすればいいよ。
といえる状況が実際に必要になっている。

私は、にっしーさんの記事を読み、上記のように認識・解釈いたしました。
そうすることで「物語体験型のコンテンツ」(ごめんね、LARPも入れたいのでエンタメとは書けない)は興隆することに繋がっていくのではないか!と考えた次第です。

結論は出ない物言いで申し訳ないですが、今回の機会は、とても良い機会になりえると捉え、また体験型のコンテンツが発展的で未来のあるものになる未来を祈念したく、考えを述べさせていただきました。
こうした、それぞれの意見の発露が、より発展する中で「これでいいじゃん!」という「言葉」を産み、それをもって進んでいくことが、望ましい未来であると信じます。
長文を読んで頂き、ありがとうございました。今年も良い一年にして参りましょう!


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