ニュース検索「世界を駆け巡る東日本大震災の幽霊たち」

 2月9日、エキサイトニュースの「世界びっくりニュース」の中に、『被災地女子大生の卒論「タクシーに乗る幽霊」が海外でも話題に』という興味深い記事を見つけた。

 なんでも、東北学院大学の工藤優花さんが、タクシー運転手たちが体験した「幽霊現象」をテーマに、3年生の時に1年間石巻市に通って、100人以上のタクシー運転手にインタビューしたところ、7人の運転手が不思議な体感を話してくれたという。

 早速、その記事を紹介しているという英国の[THE Telegraph]紙のサイトを検索。英語が苦手なので、Google翻訳を使って、アーカイブの中から記事が掲載されているという1月21日を探し、検索を進めると、ありました!!「津波被災地レポート「ゴースト乗客の中にタクシーの運転手」という、いかにも怪しげな日本語のタイトルが!だけど、これでは、タクシーの運転手もゴーストの身内になってしまう。ここが、日本語翻訳の難しいところだ。

 まあ、機械翻訳だから文法の細かいことは気にしないで、すぐにタイトルをクリックすると、津波でぐしゃぐしゃになった車と街の写真と文章が登場。よくわからない日本語の本文を読んでいくと、この記事の出所が朝日新聞だということが判明した。

 そこで、朝日の記事を検索する前に、工藤さんが在籍している東北学院大学のサイトを調べて見た方が良いと考え、大学のトップページを開いてみた。そして、新着情報をたどっていくと、「2016年1月のメディア掲載」というタイトルを発見。多分、ここに何かあるだろうとタイトルをクリック。すると、1月23日の「朝デジジャーナル 1位 シェアされました!ソーシャルランキング 被災地のタクシー 幽霊と出会う フェイスブック 1月20日」というタイトルの横に「4年 工藤優花さん金菱清教授(教養学部地域構想学科)」と、目当ての工藤さんの名前があった。

 工藤さんの記事は「呼び覚まされる霊性の震災学――3.11 生と死のはざまで」という金菱清教授編の書籍(定価2200+税)に収められている。はじめにの中に「…本書はタブー視される「死者」に対して、震災の当事者たちはどのように向き合わなければならなかったのかを、綿密なフィールドワークを通して明らかにする。この試みを、意識の古層にあった死が呼び覚まされる〝霊性〟の震災学と名づけることにしよう。未曾有の災害において艱難辛苦を嘗め尽くした経験の末に、彼ら彼女が到達したのが〝霊性〟であった。…呼び覚まされる霊性、生と死の〈はざま〉のコスモロジーへの着目と微細な観察は、生と死の共属関係を捉えることでより慈悲深い鎮魂の場を見いだし、表現するねらいがある。被災者の耐えがたい「災害期」を短縮する防災・減災策に新たな死生観をもたらし、災害社会学に意義深い射程を与えるであろう。」と、その目的を述べている。

 さて、ここからさらに、工藤さんにインタビューした朝日新聞DIGTALを検索。記事のタイトルは「被災地、タクシーに乗る幽霊 東北学院大生が卒論に」2016年1月20日となっている。工藤さんに話しをしてくれた運転手たちによれば、乗り込んだとされる幽霊には男性も女性もいて、共通して年齢が比較的若かったことや、目的地を被災地に指定し、到着した時には姿がなかったことなどを語ったという。そして、どの運転手も「恐怖というよりも、霊現象に対して畏敬の念をもって接していることです。そしてまた出てきてもタクシーに乗せてあげるといっています」と、工藤さんは語っている。

 日本で配信された記事を、イギリスのジャーナリストが発見してイギリスの新聞に掲載し、それを、再び日本のサイトニュースが転載する。これは、ネット社会だからこそ実現する、ユニークな現象だと言えるのではないだろうか?                              (了)

 

 



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