レイヤーをがんばる

Anti-Aging Record Advent Calendar 2019 の21日目の記事です。

曲作りについての記事です。レイヤーについてです。

概要

レイヤー(layer)というのは音を重ねて音を強く、太く、豪華にすることです。特にクラブミュージックを作る人はこのレイヤーというテクニックをとことん使っています。

この曲は太い音がする!凄い音がする!自分のパソコンからはこんな音が出てこないんだけど!と思う曲に関しては、レイヤーがされているかもしれません。

したがって凄い曲を目指すにあたっては、レイヤーをどのように行えばよいのか?を知り、実践できるようにすることが重要です。本記事ではそんなレイヤーの仕方をざっくり説明できれば良いと考えています。

本記事では、
0. レイヤーすると本当に音が良くなるの?
1. レイヤーはどういった方針で行えばよいか 
2. レイヤーの例
3. 実際にレイヤーしてみよう

の順で進めていきます。

2のレイヤーの例は主に私自身の過去曲から引っ張ってきています。また、私はTranceをはじめとするシンセサイザー(電子音)中心で曲を作る人間なので、生楽器の例は挙げられません。しかし、エッセンスはどのような音楽を作るにしても共通していると考えていますので、多少は参考になるのではないかと思います。

レイヤーすると本当に音が良くなるの? 

ひとつ、レイヤーの例を挙げます。これを聴いてみてください。

この音声の中では、"一つ目の音 → 二つ目の音 → 三つ目の音 → これまでのすべての音を同時に鳴らした時の音(つまりレイヤーした時の音)"の順に流れます。
個々の音より、最終的になっている音の方がずっと良い音になっているのではないか、と思います。レイヤーはこういった効果をもたらします。

上手く音をレイヤーすれば、先ほどの例のように、音が太く、豪華なものになります。一方で、適当にやってしまうと、音が濁ったり、とにかく悪い方向に音が変化することもあります。したがって、レイヤーの仕方を知っておくことは曲作りにおいて有利に働くはずです。

レイヤーはどういった方針で行えばよいか 

結論から言えば、"違う音を混ぜる"ことです。後は運ゲーです。

"違う音"というのは、例えば、アタックが速い音と遅い音もそうですし、高い音がたくさん鳴っていてシャリシャリする音と、高い音があまりなっておらず籠った音も互いに違う音です。
どういう観点からでも良いので、異なった特徴を持った音を混ぜると成功率はぐっと上がります。
上で挙げた例をもう一度聞いてみてください。はじめに3つの音が個別に鳴るのが聞こえると思いますが、それぞれが違った特徴を持った音だなと分かると思います。

一方で"似た音"をレイヤーしてしまうのはあまり良い結果が生まれないことが多いと感じています。

あとは運ゲーとか経験則とかです。試行錯誤しかないです。

レイヤーの例

ここからは私の過去曲から、どのように音がレイヤーされているのかをご紹介したいと思います。
まずはこの曲からです。

クソ良い曲だなマヂ・・・・・・・・・・(自分の曲はかわいいので)

この曲のリードがどういった音から成り立っているのかはこちらです。

"一つ目の音→二つ目の音→三つ目の音→全部レイヤーした音→原曲通り"の順で流れます。今後もそういった方式で流れます。

こういったSupersaw主体の音を作りたいときは、Supersawだけではなく、一つ目に流れた音のように"硬くて"、"地味"めな音があると成功しやすいと思います(経験則)。つまりPluckを使うと良いという話です。

次はパッドです。

今回は4つ重ねています。私はパッドのレイヤーが苦手なので、パッドレイヤーガチャを回した結果なんか良いのが出たのがこの音です。
こういう綺麗めなパッドを作りたいときは4つ目の音のようにいわゆる"Atmosphere"を入れると良いです。フォア~~~ホァ~ンみたいなのです。Omnisphereとかが得意とする音ですね。入れると結構クオリティ上がります。

次はベース(ローリングベース)です。

6つ重ねています。5つ目と6つ目の音はアシッド(Acid)といってまた違う音っぽい気がするのですが、私はローリングベースを作る時に一緒に作ってしまってローリングベースと合体させるので、今回の音声の中にも入れてあげています。
ちなみにサブベースは6つの中に勘定していません。サブベースと今回のようなローリングベースとは別に作っているからです(Tranceでも他のジャンルでもこういった作り方が主流に感じています多分)。
サブベースは原曲部分が始まる前あたりから投入しています。
また、6つ重ねていると聞いて物怖じする方もいるかもしれませんが、初めから6つも重ねなくて良いです。最初は2、3個から始めるのが良いと思います。というか沢山レイヤーし過ぎると調整が大変なので、少なくて済むならその方が良いです。

次はオープンハイハットです。
ちなみに、レイヤーする対象は音階の有るものに限りません。キックをレイヤーするとかスネアをレイヤーするとか、よくあることのようです。

2つ重ねています。オープンハイハットと言いつつ、ライドシンバルとオープンハイハットを重ねています。ライドシンバルとオープンハイハットは当然音の特徴が違うので、この二つをレイヤーすると成功率は結構高くなります。

次はこの曲です。

オタク違法ブートレグです。
この曲からはリードとベースを紹介します。

リードです。

三つ重ねています。
二つ目の音ですが、こういう"どう考えても戦力外だろ"という音がレイヤーすると意外に良い効果をもたらしてくれる時があります。
もっと音を太くしたいけどレイヤーするものが思いつかない!という時は、こういうショボかったり、あるいは変な音を入れてみるのも選択肢の一つです。

ベースです。

5つ重ねています。
今回もアシッドが入っています&サブベースは5つの中に入っておらず原曲部分の前からひょっこり顔を出します。
余談ですが、こういったローリングベースを作る際、Acidと銘打たれた音を細かく鳴らして、ローリングベースと言い張る手法は結構役に立ちます。2つ目の音とかはそうだったと思います。

最後にこの曲です。

UKとかJの方面のハードコアです。リードとベースについて紹介します。

リードです。

3つ重ねています。
ジャンルが変わってもやはり方針は変わらず、違う音を重ねることが重要です。

ベースです。

3つ重ねています。
例のごとくサブベースはハブっています。かわいそうに。
ちなみに2、3つ目の音は四分音符を表拍で鳴らして、サイドチェインで裏打ちに見せかけています。

これで例を紹介するのは終わりです。

実際にレイヤーしてみよう

最初にご紹介したこちらのレイヤーなのですが、

実はSylenth1を持っていれば、それなりに再現することが可能です。
なぜならこれに使われている音のプリセットはこちらで配布されているからです。
ちなみに本記事と同じAdvent Calendarの記事です。2bnsn(にばんせん)さんというMelodic Progressive Houseを作る人の記事です。

ここに入っているプリセットから、"PLK FRESH SQUARE"、"PLK CHIKUSA"、"PLK OTONASI"を使って作りました。
ちなみに最後のOTONASIはそのままプリセットを使っているのではなく、Filter AのCutoffを9時方向と10時方向の間くらいにしています。

あとこれがmidiファイルです。

そして3つの音をバスにまとめて、300Hzくらいでローカット、コンプを掛けて(任意)、サイドチェインを少し掛けて、リバーブを思いっきり掛けます。

コメント 2019-12-21 181348

こんな感じです。
後はそれぞれの音の音量調節等をして完成です。

おまけ

これから作ろうとしているオタクブートレグのベースです。これもどうレイヤーされているかが分かるようになっています。

原曲が何か当てられたら神なので当ててみてください。

おまけ2

私はAnti-Aging RecordのOBなのですが、所属していた当時は2、3年ほど作曲講座をずっとしていました。
その中で"DTM初心者講座"や"シンセ講座"を開いてきましたが、あともう一つ開けと言われたら今回のようなレイヤーに関する内容にしようと思っていました。
今回の記事の内容がレイヤーに関するものになったのはそれが理由です。

おわりに

レイヤー頑張ってください私も頑張ります。

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