見出し画像

砂沼から言葉歩いて-2019-5

砂沼から言葉歩いてー2019
2019 第五巻  1月から12月  2010年3月 脳梗塞から八年目 失語症・言語発達障害・ 聴覚障害高次脳機能障害・発声発語・感覚障害

砂沼から言葉歩いて-2019-5

【5月7日 一日一句鑑賞】  瀬戸 優理子先生

愛されてソースやきそば南風 俊克
  
謎の多い句ではあるのだが、
等身大の庶民的感覚と
郷愁を誘う青春性に惹かれる。
 
冒頭の「愛されて」がやや唐突で、
誰から誰が「愛されて」なのか
書かれている情報だけでは
よくわからない。だが、
 
「愛された結果、ソースやきそばがそこにある」
 
という景が、なんとも言えず、
ほのぼのしており、飾らぬ日常の幸せを思わせる。
書き過ぎないからこその、余白が
読み手の想像力を刺激するのだ。
 
豪華な、特別な食事ではなく、
「ソースやきそば」だからこその
「愛」のリアリティと共感。
軽やかながらも、確かな「肉声」が詩と化している。
 
 
そして、焼きそばが似合う季節は、断然夏だ。
春でも秋でも冬でもない。ジュージューと
音を立てて炒められ、香ばしいソースの匂いが
生暖かい南風に乗ってやってくるのがふさわしい。
 
 
…と鑑賞文を書いているだけでも
焼きそばが食べたくなってくる。
 
「愛されてソースやきそば」
これから焼きそばを食べるたび
このフレーズが思い浮かんできそうだ。

俳句

⦿うららけし令和ベビーの産声よ 俊克
⦿山里を背に連峰のさくらかな 俊克
⦿大宝の改元記念春令和 俊克
⦿夏木立息吹終へたる妙義山 俊克
⦿でか山は祝賀ムードの青柏祭 俊克
⦿きらきらし令和みこしの夏始 俊克
●空の果て浮かんで泳ぐ五月鯉 俊克
●神の子は空を焦がして夏の夕 俊克
●櫂を漕ぐ爬龍船(ハーリーセン)の鐘の音 俊克
●愛されてソースやきそば南風 俊克
●そよぐ風ゆらりゆらりの貸ボート 俊克
⦿木の下へ逃げ込む雨やはたた神 俊克
●どら焼きは「令和」の記念五月かな 俊克
●夏星や「令和の星」は小惑星 俊克
●木隠れに歩く坂道女郎蜘蛛 俊克
●母の日は花々染まる誕生日 俊克
⦿桟橋が湖面に映る白い虹 俊克
⦿そよぐ風ポピーの揺るる鬼怒の川
⦿記録とし数カ月咲き竹の花 俊克
⦿奉祝はのぼり飾られ神田祭 俊克
●気持ちよさ真夏日濡れて子は遊ぶ 俊克
●足に飛び破る業師や五月場所 俊克
●竹咲くや穂先に淡い雄花つけ 俊克
●幻のでかにんにくの花芽かな 俊克
⦿Tシャツに限定グッズ天下祭り 俊克
⦿母の日は息子が作る朝ごはん 俊克
⦿夏空を千キロ飛びぬハトレース 俊克
⦿あいの風加賀万歳の名所かな 俊克
●諦めず走る主役やごめの群れ 俊克
⦿風の香や女相撲の寄り倒し 俊克
●瀬の石で八の字の堰鮎の餌 俊克
●シャチの群れ船底くぐる夏の海 俊克
●上品な日傘に香り恋みくじ 俊克
●木くず飛ぶ手彫りフクロウはえの風 俊克
●幻の花や大きなブルーポピー 俊克
⦿親子して東大寺領の田植時 俊克
●薫風や百物揃兜武者 俊克
⦿源流の森を訪ねて九輪草 俊克
⦿山鉾やすずめ踊りの伊達文化 俊克
●里沼が原風景の風薫る 俊克
●布引の分かれ落ちてや苔の滝 俊克
⦿電照を輝き摘みて夜の苺 俊克
●山林に趣味を集めて姫小百合 俊克
⦿落水を滝つぼ青く日が差して 俊克
⦿生き生きとモッコウバラは黄の染めて 俊克
●紫陽花や卑弥呼の花は眼鏡橋 俊克
⦿夏場所はくす玉割りや貴源治 俊克
●鮎ふたついじめて逃げる竿の音 俊克
⦿村民は笠に絣の田植祭 俊克
●田鰻やぬるにょろ動き泥の中 俊克
⦿炬火台が光り輝くポピー咲く 俊克
⦿風の香や呼吸ぴたりと主の心 俊克
●クーラーが勉強出来る試運転 俊克
●謎の木は不思議に思ふクマノザクラ 俊克

短歌

⦿走り出しヘッドマークの常総線
さまざま苦難も令和の始発 俊克
●ボタ山に朝日参加の切れる雲
令和初日の気持ち新たに 俊克
●篝火が揺らめく世界薪能
酒の雨どい酔ってふらふら 俊克
⦿新緑の桧原映える桜の木
人里離れ朝日に照らす 俊克
●船に乗り色鮮やかな扇流し
十二単の清少納言 俊克
●鉄道は懐かしカレーの食堂車
特急「踊り子号」の試乗会 俊克
●木漏れ日をぷくぷくつぼみガンゼキラン
ほんのり弾け光を放つ 俊克
⦿平幕が優勝令和夏の場所
十両幕下兄弟優勝 俊克
●剣鉾が日差し照りつけ嵯峨祭
鈴を鳴らすと歓声沸いて 俊克
●缶詰は流通時期の夏サンマ
初競り小ぶりの漁師が詰める 俊克

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?