見出し画像

『白いおかあさん』肥田美代子 鈴木義治

子どもは 大人が思うよりずっと いろいろなことがわかっていて
いろんなことを感じていて
でもそれをどう表現していいかわからず
大人が眉をひそめるような行動で体現してしまうのかもしれない

かつて あの頃「問題児」「問題行動」と言われていたことの
裏側には こんなことがあったのかもしれない 10の短編集

「白いおかあさん」
わたし おとうさんの頭に
 しらがを一本見つけたけど とってあげませんでした

「幸福町四丁目」
ママの字は まえよりずっとへたになっていました
・そうら いよよいだわ
 まゆ子は 自分がいま 
 とてもいじわるな目をしているのがわかっていました

「キリンソウの海」
かよ子は ふと空を見上げた
 じーんと頭がいたくなりそうな青空がひろがっている

「雨あがり」
貯金ばこには 四百五十円はあるはずだ 
 でも おかあさんがほしければ みんなあげたっていいや
・「そんなもん いらねえんだよ」

「オタマジャクシはカエルの子」
・本ばこの整理はとっくに完了 
 机の上だって 自分のじゃないみたいにかたづいている
・いつもの手ぬきママがうそみたい

「かわいそうアパート」
・ふたりは 肩をいからせて 商店街をあるいていきます
・タッくんの目の下が ピリピリとうごきました 
 マアくんのくちびるが きゅっとゆがみました

「ペンギンのトレーナー」
・なんやしらん きゅうにうれしいなって 
 もういっぺんふとんにもぐって ウフフとわろうた
・でも あの子らは ほんまのおかちゃんやよって いいやすいわ
・まずいこというてしもた
 これは死にはったおかあちゃんがすきな花やったもん
 でも おとうちゃんとおかあさんは なにかほかのことをしゃべって
 わろてはった
・わたしの目は おとうちゃん似やさかい 
 赤ちゃんの目も おとうちゃん似やったらええのにな
・なんやしらん よそのおとうさんとおかあさんみたいや
・自分でも すごくこわい顔してるのがわかってたわ

「海の家」
・おへそを波にあらわれながら おとうさんがつぶやきました
・おとうさんがつられて ちょうしっぱずれの大声でわらいました

「ひろしくん」
・ひろしくんは お金をいれず 
 なんどもそうやって 電話をかけていました

「もう一つのいす」
・カラスウリのような夕日
・いっしゅん ぴくっとひきつったように見えました

新・子どもの文学 偕成社
『白いおかあさん』 肥田美代子 作 鈴木義治 絵 
 1986年(昭和61年)11月 初版 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?