アラフィフ女が始めたスポーツはオリエンテーリングだった

 初めまして。MKです。オリエンテーリング Advent Calendar 2023(裏版) の12月15日担当となりました。よろしくお願いいたします。
 MKって誰?と思ったあなた。そうですよね。MKとは……タクシーではありません。マイクさんでもありません。MK←Mayumi KUWANO←クワノマユミ←桑野真弓名義でエントリーしている51歳女子(2023年12月現在)。ユニフォームがないので、紫色の安物スポーツウエア(下はジャージ)で参加しています。

こんな人です

 身長165cmと恵まれた体格にも拘わらず(学生時代に飲み会でイケメン医学部生から「いい躰してるね」「君の体が欲しい」と言われ、「もしかしてナンパ?」といい気になっていたら、「素敵な骨格標本になるだろうなぁ」と言われ身の危険を感じた)、50歳目前までスポーツに関わることはありませんでした。一見スポーツができるように見えるらしく、でも運動音痴なので、バスケットボールをすると試合始めはやたらパスが回ってきますが後半は一切ボールが回ってこなくなります。また、見た目で陸上部に勧誘され、入部3日目の100m4本ダッシュで嘔吐し、転部した経験もあります。入ったのは天文部。物凄い方向転換。

 オリエンテーリング歴はもうすぐ2年。陸上部在籍は3日だったのに、オリエンテーリング歴は2年弱。生まれてこのかたスポーツをたしなむことはなかったのに、オリエンテーリング歴は2年を迎えようとしている。これは、我ながらすごいことなので、「よもやま話でも書いてみようかなー」と思い、分不相応ながらこちらに投稿させていただくことにしました。ちなみに、他の投稿者の方々とは異なり、内容が大変拙いものとなっておりますことをお詫び申し上げます。茶番です。申し訳ありません。

 実は、オリエンテーリングより前に、ロゲイニングに参加しました。
 2018年秋、地元の広報誌に、観光ロゲイニングの案内が載っていました。ロゲイニングがどんなものかは知りませんでしたが、「ウォークラリーみたいなものかな。夫婦でゆっくり秋の観光地巡りでもしよう。」という気持ちで申し込みました。
 大会当日、スニーカーに平服姿、お散歩気分で出発。会場に着くと、N古屋城(スポーツに似つかわしくない歴史的建造物)だというにもかかわらずランニングウェア姿のランナーがいっぱい。金シャチもビックリ、私もびっくり。「えっ……ロゲイニングってガチのスポーツなの……私トレンチコート着てるじゃん……あまりにも場違い……どうする私……」と激しく動揺。主人は「まぁ、俺たちはのんびりでいいんじゃない?」とお気楽発言。そうだね……と身を小さくしながら開会式に参加。競技説明を聞くにつれて、何故か主人の目の色が変わる。地図を受け取り、作戦タイム。
 私「(CP一覧を見ながら)えーっと、見に行きたい観光地は…?」
 主人「(地図を見て点数を瞬く間に計算しながら)こうやってああやってこう行くと○点、こちらに行ってああ行ってこう回ると△点、こっちだと…」
 私「?!?」さっきののんびり発言はどこいったの?!?
 えぇい、こうなったら、やるしかない。骨格標本として見染められた体格と、3日間の陸上部経験を活かしてやる!スタートの合図と共に、ランナーにまみれて、トレンチコートにショルダーバッグを引っ提げてスニーカーで走る私。何だこれ。
 結果は……死にそうになりながら走る私を尻目に「あと□km走ったら☆点取れる」と鬼のプランニング・天才的な地図読みをし続けた主人のおかげで、3時間混合の部で優勝しました!まさにビギナーズラック!!実はガチランナーがみんな5時間の部参加だった!!!というオチ。

 こんな美味しい思いをしてしまったら、また参加しちゃいますよね、ロゲイニング。
 出場する度に、動けないほどの筋肉痛になったり、膝を痛めたり、足の爪をはがしたりと、散々な目に会いながらも、コツをつかんだのか、走る距離は長くないのに点数を稼ぎ、ちょくちょく入賞し、賞品を貰う。ロゲイニングは賞品が出る大会が多いんです。これがまた嬉しい。
 体育の成績が低かった私なのに、50歳を控えてこんな薔薇色の人生が待っていたなんて!スポーツで良い成果を収めるのは純粋に嬉しいし、走るから健康にいいし、夫婦で過ごす時間が増えたし(少なくとも競技中は「常に一緒に行動しなければならない」by 日本フォトロゲイニング協会 公式ルール)、これからも続けようかな ♪

 と思っていたら…

 主人「俺、走るの嫌いなんだ。」
!!!まさかの告白!!!今まで私を騙していたの?!?どうしてロゲイニング参加に快諾していたの?!?
 主人「地図読みが好きなんだ。」
キーッ!まるで「他の女が好きなんだ」と言われた気分だわ!!そんなこと初めて聞きました!!!
 主人「俺、子供の頃、親父と何度かオリエンテーリングをしたことがあるから。」
?オリエンテーリング??小学生の時に野外活動でグループ散策したアレのこと???
 主人「真弓と行ったK華山、あそこでオリエンテーリングのポスト(コントロール)を見掛けたんだよ。気になって調べてみたら、オリエンテーリングのコースがあるみたい。一緒に行ってみない?」
 一緒に行ってみない?という甘い言葉に騙されて 誘われて、日本オリエンテーリング協会公認のパーマネントコースへ行くことになりました。

 JOAの公認コース一覧を見ると、地図取り扱い場所が「梅林公園」となっていました。G阜市の梅の名所だね、一度行きたかったんだよね、SLもあるしね。よし、Let's GO!
 現地へ向かう自家用車の中で、ふと、「地図を切らしていたらどうしよう?」「公園事務所に電話して確かめよう。」TEL「もしもし、オリエンテーリングの地図ってありますか?」公園事務所「ないです」…えっ?
 「どうする?」「市役所でも取り扱っているらしいよ」「でも今日は日曜日だから役所は開いていないんじゃない?」「もう近くまで来ているし取り敢えず梅林公園へ行ってみよう。スタート場所にもなっているし。」
 いざ、公園事務所へ直撃してみると……「あぁ、たまーにそういう問い合わせあるんだけど、地図はここには置いてないんだよねぇ」そもそも置いていないの?「どこにありますか?」「どこだろうねぇ?」!?!
 どうするクワノ家?!?「ダメもとで役所に電話してみよう」TEL…奇跡的につながりました!「今日はイベントがあるので、午前中なら対応できますよ」おぉ!すぐにお伺いします!!
 無事に地図をゲットし、いざ、パーマネントコースへ。
 やる気満々でスタート!「こっちだね」「あそこのお社の裏から登るんだね」「地図の点線道を登るんだね」……スタートしてわずか数分、目の前には道なき山が広がっています。どうするクワノ家?!?初心者ですもの、「507 小径」を見つける力はありません。踏み跡なし、道迷い間違いなし。
 ここでお気楽主人君臨。「方角と距離を頼りにポストへ向かおう。」コンパス直進クラブですか?私はもはや迷える子羊ですから、あなたについていきます。先導してください。「分かった。」と主人、いきなり直登。いやいやいや、こんな急な傾斜登るの無理ですって。しかも落ち葉で滑るし。頑張ってもほとんど移動できていない私を尻目に、主人はザクザク登っていく。置いていかないでー。ところで、本当にこっちで間違いないんでしょうねぇ。これだけ大変な目に合わせておいて、ポストが見つからなかったらとんでもないですよ。
 ……見つかりません。はい、お約束。
 主人の名誉のために説明致しますと、実は主人は正しく向かっていたのですが、ヘタレ私がブツブツ文句を言いながら「(楽な方を指して)こっちじゃないの?」なんて言うものだから、進路を変えてくれたのでした…。
 主人は「もっとあっちだと思うから、そこで待ってて。」と言って、険しい斜面を進んでいきました。「あったよ。」主人は正しかった。ごめんなさい。
 その後は、登山道が現れ、順調にK華山へ。とはいえ、私にとってはハードな登りで、ヒィヒィハァハァ言いながら死に物狂いで登りました。山頂のG阜城付近では、ロープウェイでやってきた観光客が驚くほどの形相のワタシ。さすが織田信長の山城。やっと頂上に着いたよ。ふぅ。
 さぁ、ここからは下りだと安堵したのもつかの間、いくつかの下山ルートの中から私が選んだのは最短ルート。ということは、急こう配。そこまで読めていない初心者。いやもう死ぬかと思うくらいの下り坂、岩をつかみながら必死にジリジリ降りましたよ。そんな私を横目に、柴犬がヒョイヒョイ降りていく。こんな急こう配を下りるだなんて犬ってすごいなぁ、ところで飼い主はどこ……?あぁ、置いて行かれている(飼い主の青年が)。

 いやぁ、楽しかったですよ、パーマネントコースデビュー。

 パーマネントコースって、地図を二人分買っても500円以内!そして数時間遊べる!!コスパ最高!!!
 大切なことなので、もう一度言います。二人でワンコイン!You can enjoy  for hours!!コスパ最高!!!
 というわけで、パーマネントコースへはたくさん行きました。愛知、岐阜、三重、静岡、滋賀、福井、長野、山梨を制覇、ただ今、石川県に挑戦中。高速道路使って片道3時間、コスパは……言えない。
 これだけ行けば、パーマネントコースにまつわるお話が、これまた積もるほどありまして……来年のAdvent Calendarにでも書けるくらい。

 そして時を経て、いよいよ、オリエンテーリングの大会に出ることになりました!記念すべき初大会は……2021年11月のメモリアルセンターでの体験会です。大会じゃないんかい。
 受付をしたら、小指程の大きさの機器を渡されました(SIカード)。何でしょう?コレ。USBメモリ??
 謎のままスタートに立つ。スタッフの方が説明をしてくださる。「地図の○の中心に、(見本のフラッグを見せながら)こういうフラッグがあるから、(スタートユニットを指して)こういう形の機械に、(私が持っているSIを指して)それを入れる。」??? 情報過多。
 「はい、これ、地図ね。スタートするまで見ちゃだめだよ。(私:見られないの?と動揺。)スタートしたら、あの赤白テープに沿って行けば、最初のフラッグがあるからね、でもそこには機械はないからね。(さっきと話が違いますよ??とさらに動揺。)じゃあ、タイマーが鳴ったらスタートだからね。(えっ、タイマーはずっと鳴ってますけど?いつスタートすればいいのですか??とますます動揺)」
 タイマーの音が時を刻む。ピッ、ピッ、ピッ、ピーーー!「はい、スタート!」えぇぇぇ?今??こっちに走ればいいの???あぁぁぁ、フラッグがありました。でもその先に赤白テープがない。どっちに行けばいいの?!?「地図を見て!地図!!」おぉぉぉぉ、そうか、地図持ってたわ。はい、見たよ!で?「地図の△がそこのフラッグだよ!」そうなのか。私の地図上の位置は分かった。で??「コンパスを見て!!」そうか、コンパスも持ってた。北はこっちだ。で???「地図を合わせて!」そっか。そうだった。磁北線を合わせるんだった。で????……
……150m先の1番コントロールまで、2分かかりました……。

いやぁ、楽しかったですよ、初レース。

 そして、記念すべき初「大会」は……2022年1月の岡崎市民オリエンテーリング大会です。
 要綱を読んでも、何だかよく分からない。スコアOって何?ポイントOとスコアOって混乱するなー。クラスのMとかAとか数字って何?よく分からないけど初級個人にエントリー。Eカードって何?よく分からないけどレンタルしましょう。
 その後に発行されたプログラムを読んでも、やっぱりいろいろ分からない。バックアップラベルって何?位置説明って何??アクティベートユニットって???そもそもパンチって何するの?!?殴るの?!?
 こんな状態で出た初大会。会場に着くと、まるでレーシングスーツのようなウェアに身を包んだガチティアがいっぱい。「えっ…オリエンテーリングってこんなに攻めるスポーツなの……私ジャージじゃん(上記写真参照)……あまりにも場違い……どうする私……」と激しく動揺。
 スタート前の1分間で地図を見ながら作戦を立てる。地図は細かいし(10000分の1)、何だかよく分からない表と記号が書いてあるし(位置説明のことです)。雑念だらけでろくに作戦も立てられずにスタート!こうなったらとにかくチェックポイントを探す!あっ、オリではコントロールって言うんだった。見つけた!あれっ、番号が違う。でもスコアOだからどれを取ってもいいんだよね。とにかく取るっ!
 おぉ、意外と順調にポイントが取れているよ。おっ、この先に道から少し外れた所に高得点ポイントがある!これは行くっきゃないね。地図上で数mm逸れるだけだからすぐ見つかるでしょ(注:縮尺10000分の1)……見つかりません。はい、お約束。……50m位のエリアをウロウロウロウロ……狭い範囲なのに見つからないものだなぁ……あらまぁ、くぼ地の中にありました。なんてこったい。教訓、位置記号は覚えましょう。
 次は曲がり道の角だね。見つけやすいじゃん。あぁ、この曲がり角だね。あれ?ない。あぁっ、柵の向こうですかっ!パンチするためには、150m長の柵の端まで行って柵の向こうに回ってこの角まで来なければならない(=300m走る)!!やられた~。教訓2、地図の〇印の中心はよく見極めましょう。
 無駄に疲れちゃったなー。気を取り直して……この先に短い坂があってその上にコントロールがあるね。近いから取りに行こう。はい、坂に着きました……えらく急な登り坂じゃん!よーく地図を見て等高線を数えると……100m進むのに25m登るの!?!無駄に疲れている私にはここを走って登れない。タイムロスだー。時間距離は長かった……。教訓3、等高線はちゃんと読みましょう。
 やっと終わりが見えてきた。あとは〇番と△番を取ってフィニッシュするだけ!はい、フィニッシュ!!頑張った、私!!!計センで記録をプリントアウトしてもらう。どれどれ。あれ?〇番が入っていない。初大会にて初提訴?(ちょっと違う。)すみませーん、〇番が入っていないんですけどー。
 スタッフ「バックアップラベルにも記録されていないから、パンチしていないね。」……え? 「たまにあるんだよね。パンチしたつもりになっちゃうってこと。」教訓4、妄想注意。
 結果は……とにかくフラッグが目に入ったら取りに行ったおかげか、初級個人の部で優勝しました!またまたビギナーズラック!!実はガチティアは上級者クラスに参加だった!!!というオチ。

 こんな美味しい思いをしてしまったら、また参加しちゃいますよね、オリエンテーリング。
 し・か・も!ワタクシが参加するクラスは、参加者が少ないのです。イコール、入賞しやすい。「優勝 桑野真弓さん」「すごいねー」「いや、エントリー私だけだから」ということもありました。

 そんな私も、初心者クラス(N)から中級者クラス(B)を経て、とうとう上級者クラスへ。それでもW50ですけどね。50歳を超えて「良かった」と思えたのは、オリエンテーリングのクラス分けくらいかな。W50の中では「若い」と言われる(*^_^*) ←いや顔文字使うのが若くないんだってば。
 さすがに上級者クラスになると、ミスも多くなり、時には現在地が分からなくなることも。「とにかくこちらへ向かえば道に出るから、それからリカバリーしよう」と無謀な賭けに出ることもしばしば。競技時間を過ぎて失格になることも度々。遭難の危機を感じて自らDISQしたこともあります。
 もう美味しい思いはできないでしょう。実力相応ということです。

 それなのに、アラフィフ女の私がオリエンテーリングをする理由は……
1.運動能力が高くなくても勝負ができる。
 短距離走にしろ長距離走にしろ、出場選手は皆同じコースを走るので、それでは走力の高い選手が勝つことになります。でも、オリエンテーリングは、コントロールまでのルートを自分で考えるので、走力が高くなくてもルート次第で短い時間で行くことができます。そして、そのためには、地図を正しく読む知識が必要です。さらに、自分にあったルートを選ぶ判断力が要ります。このように、走力以外の要素が勝敗に関わってくるので、私のように運動に長けていなくても、勝つ可能性があります。まさに「体力と知力の融合」。
2.フラッグを見つける喜びを、フィニッシュまでに何度も味わえる。
 途中で何かあっても、数百m頑張れば次のコントロールが見つかり、新たな喜びを感じることができます。順調な時は勿論のこと、ミスしてがっかりした時も、フラッグを見つける度に気を取り直し、次のコントロールをまっしぐらに探しに行きます。まるで宝探しのようです。そして、いつの間にか数kmを走っています。これは私にとってはすごいことです。フラッグを見つける度にドーパミン、その度に嬉しさと達成感。あたかも、フラッグが第1ゴール&第2スタート→第2ゴール&第3スタート…と続いていくようです。オレンジ色のフラッグが見えると、F1のチェッカーフラッグが振られたかの如く、高揚感を味わいます。幾度も。
3.オリエンテーリングで関わる方々が私のやる気を高めてくれる。
 大変ありがたいことです。未経験な私がここにいていいのかなぁと躊躇し、チームユニフォーム溢れる中一人でいることに戸惑いを感じ、セオリーをよく分からずに肩身の狭い思いをしていましたが、スタッフや選手の皆様の温かさ・優しさにいつも救われてきました。体験会に出たことを覚えてくださり声をかけてくださった岐阜OLCのMヶ野さん、岡崎市民Oで褒めてくださった静岡OLCのH間さん、京都のTヶ池でスタートまでの手順を教えてくださった奈良市のO方夫妻、DISQした私にどうやってルートを見つけるか教えてくださった愛知OLCのT屋さん、アルプス公園の体験会で実地指導してくださった松本OLCのK村さん、茶臼山Oで温かく迎えてくださる長野OLCのB谷島さん、またお越しくださいと言ってくださる浜松OLCのK林さん、チームメンバーではない私にも笑顔で話しかけてくださるK下部さん、私のくだらない質問に優しく答えてくださり温かい声援を掛けてくださる学生さん……お世話になった方々はまだまだいらっしゃいます。ここには書ききれない程たくさんの人々に支えられて、私はこれからもオリエンテーリングを続けていきます。ありがとうございます。

 多大なる感謝の意を込めて、末筆とさせていただきます。オリエンテーリングの益々のご繁栄をお祈り申し上げます。

追伸:愛用のジャージズボンが破れて履けなくなったので、これからはオリエンテーリングパンツに見える安物ズボンで参加します!(ジャージの長ズボンって、藪にひっかっかるし、濡れると重くなるし、ひっつき虫(種)めちゃ付くし。)
 上は相変わらず紫色の安物スポーツウエアを着続けます。これが私のユニフォーム。