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版画の左下の数字ってなに? 版画のエディションナンバーとは

版画のエディションナンバーとは?

版画は複数枚数の作品を制作できる絵画作品です。
複数枚数を制作できるため、絵画としての価値を保持する目的で制作する作品の数を予め決めておきます。

【Edition(エディション)】とは日本語で【版】を意味し、版画においては限定枚数を指す言葉です。

部数の管理

エディション、エディションナンバー、シリアルナンバーとも呼ばれ、予め決められた枚数以上は制作できないように保証する番号のことです。
限定枚数を制作した後は、版画の制作に使用した版を壊すか、傷を入れて増し刷り出来ないようにします。
エディションナンバーの番号順は、刷り上がった順ではなく単なる通しナンバーであり、若い番号ほど価値があるといったものではありません。
現代の刷り技術は出来上がりの差が殆どなく、番号によって仕上がりの差が出るといったこともありません。
したがってエディションナンバーは限定枚数の内の1枚であるといった証明にはなりますが、それ以上の価値をもたらすものではありません。
しかし、個人的なラッキーナンバーや思い入れのある番号を好んで収集するといった方もいるため、人によっては価値がある番号というのは存在するのかもしれませんね。

番号ではなくアルファベットが記入されている意味

稀にEA・AP・PP・TPなどの番号ではないものが存在します。
一般的に版画作品は「限定枚数+10~15%のエディションナンバーの無い作品(E.A.やA/Pなど)の枚数」が合計の制作枚数となります。

【E.A】Epreuve d’artiste
【A.P】Artist Proof
上の二つはそれぞれフランス語と英語で【作家保存版】を意味し、もともとは作家が資料として保存するためのものです。
作家が美術館に寄贈したり、美術関係者へ贈ったりすることもあります。
版画作品としての仕上がりは通常のエディションナンバー作品と変わりません。
通常は市場に出回ることのない作品ですが、最近では通常のエディションナンバー作品とともに、版元が管理・販売することが一般的のようです。

【H.C】Hors Commerce
本来は作品が販売される際の作品見本であり、販売されるものではありませんが、E.A版やA.P版のように寄贈されたり、摺師や彫師などの版画作品の制作にかかわった人たちへの贈答用として制作されます。

【T.P】Trial Proof
製品として製作を行う前の最終チェックを行うための試し刷りの作品です。
T.P版を作家が確認し、本生産前の確認を行います。
本生産用のエディションナンバー作品とT.P版の作品とでは色や作品自体の構図が違うこともあります。
T.P版は作家が所有している場合と摺師が所有する場合があり、作家が所有しているものは作家が亡くなった際には遺族に相続され、サインのない状態で稀に市場に出回ることがあります。
摺師が所有する場合は、資料用として作家のサイン入りのものが贈られますが、こちらも稀に市場に出回ることがあります。

【P.P】printer’s proof
版画の制作に関わった摺師への贈呈または保存資料用です。
作家自身が版画を制作する場合など、摺師が担当しない場合はP.P版は存在しません。


エディションナンバーが鉛筆書きの理由

版画のエディションナンバーは殆どの場合、鉛筆で記入されています。
これは、炭素がもっとも光に対して強く、色褪せしにくいという特徴があるからです。
ボールペン、万年筆などのインクは変色しやすく、場合によっては消えてしまうことも。
その他の理由としては、作品に対して目立ち過ぎないようにするためや、偽造対策の面もあるようです。

ナンバーの書かれていない版画

「この版画はナンバーがないから偽物?」と聞かれることがありますが、版画作品を額装する段階で、作品によっては絵のバランスが整えるために敢えてナンバーが記載されている余白部分を隠す場合があります。
このような場合には、額からシートを外すとナンバーがしっかりと記入されています。

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