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忘れえぬ人々 3 Tさんとの至福のナンチャッテ連句作り

 Tさんは知人のお母さんですが、パソコンを覚えたのでメル友になってもらいたいというお話がありました。当時の私は50代、Tさんは80代という異色の組み合わせでしたが、相性が良かったようで、すぐにメル友になりました。

 日々の暮らしは変わり映えしませんので何か工夫を、と考え連句を提案してみました。連句は四人で5・7・5を36句作ってゆくものですが、そんなことはおかまいなしで、二人でメールで交互に句を並べて36句にし、一巻として仕上げることにしました。

 それが実に楽しかったのです。不思議なほど、次の句が浮かんでくるのには驚きました。発句は交互に行いました。36句で結句すると、Tさんが和紙へ筆で清書し、送ってくれました。それを眺めるのがまたうれしい時間でした。文箱に一つ分、私たちは連句を続けました。

 2年ほどメル友でしたが、残念なことにTさんはご病気になり、交流は途絶えました。短い間でしたが、お互いの感性を言葉にのせ距離を保ちつつメールでやり取りした時間は私にとって至福の時間でした。

 生きていると思いがけないことが起こるものです。それは決して悪いことばかりではありません。




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