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〈my story〉「相手のことを考える」これが私の仕事の意味

現在、実習生として、「京都で働く私のライフストーリー」メディア作りに参加。自分たちで取材対象者様へアポを取り、お話をお伺いし、自分が将来、何をしたいのか、考えるきっかけとなりました。今回、ご協力いただいたのは、現在派遣社員として働きながら、やりたいことに向かって歩みを進める秦由美子さんです。インタビュアーは大西、佐藤、編集は大西、𣆶葉が担当しました。

職業:印刷会社 Webデザイン 年齢:30代

【学生時代~就職】青春と、難航した就活


京都の大学で、体育会のバドミントン部に所属していました。勉強のほうは全然だったんですけど(笑)、人生で大学時代が一番青春していましたね。

でも、今思えば、ちゃんと勉強しとけばよかった。もったいなかったなぁ、って思います。

アルバイトは葬儀場で。実は、葬式場とは知らずに応募したんですよ、ホールスタッフだからいいなっていうノリで(笑)。
行ってみたら「あ、なんか式場やな」って感じで。実家がお寺なので、あまり抵抗感もなくそのままご縁があって、そこで4年間働きました。
宗派によっていろんなお葬式があることを学んで、驚きもありましたね(笑)

就職活動は、全然ダメでした(笑)。

合同説明会で「人事担当の人が面白そう」とかで選んだ会社を60社くらい受けて全部落ちて、精神的にもかなり落ち込みました。

就職活動では自分の軸がないなぁと思ったので、自分の軸をもつことが大事だということを実感させられました。

あと2か月で卒業というときに、就職支援部の方から紹介のあった会社が、福祉施設の事務員を募集していたんです。応募したら、ご縁があったので、そこに就職を決めました。

【福祉施設】事務員として

希望していた仕事ではなかったですけど、結果的に11年、総務課という部署で働かせてもらいました。そこでは、給与計算とか経理とか、介護請求って言って国にお金を請求したり、色々していました。

11年働く中で、大きな失敗もありました。入所されたばかりの利用者さんの顔を覚えていなくて、施設の外に出てしまったのを見過ごしたことがあったんです。家族さんだと勘違いしてしまって……。無事に見つかったんですけど、その失敗が分かったときに「自分」に気持ちが向いてしまったことも恥ずかしかったです。「利用者さん大丈夫かな」って「人」を思うんじゃなくて、「自分がやってしまった」って「自分」を責めたんです。それがすごく印象に残って、利用者さんと直接やりとりすることが少ない事務員でも、ちゃんと利用者さんの顔を覚えよう、と思いました。

名前で呼ぶとすごく喜んでくれるんです。ご家族も、最初はお叱りばかりいただいていたのに、丁寧に説明する内に気に入ってもらえて、相談してくれるようになったこともあります。

逆に嬉しかったことは、職員に「フォローしてくれてありがとう」とかお礼を言われることですね。

介護職員は、利用者さんやご家族を支えますが、事務員はその職員を支えるのが仕事なので。

上司は挨拶をすごく大事にする人で、それを心がけると「話しかけやすい」と言ってもらえるようになりました。そういうコミュニケーションを続けてると、相手のちょっとした変化にも気づけたりして、話を聞くこともできるようになりました。

「顔を見る」って大事だなって思います。

【退職に至るまで】ボランティアでの出会いに刺激

新卒で福祉施設に入社してから10年目くらいに、今やってるボランティアの方々に出会ったんです。施設で新卒採用を担当していたときがあったんですけど、そのときのコンサルのが人脈の広い方で。勉強会に誘われて行ってみたら、その会の主催者がボランティアをやってらしたんです。

それまではボランティアなんて「やる人の気がしれへん」くらいに思っていたのに、誘われて参加したらハマってしまって(笑)。メインは街頭清掃なんですけど、中学生から80代の方まで、幅広い年齢層の方と出会えます。みんな業種もバラバラですし、新しい価値観に触れられるんです。

そんな風に刺激を受ける中で、同じところで慣れた仕事をし続けるんじゃなくて「チャレンジしたいな」って、外に目が向くようになったんですね。

家と職場以外に、もう一つコミュニティ……自分の居場所っていうのかな。それをもつことができたのはよかったです。

ボランティアを始めたのと同じくらいの時期に、総務課で部署異動があって、チームも新しくなったので、転職活動を始めるなら早いほうがいいし、と思い、11年間務めた福祉施設を辞めることにしました。

【転職後】派遣社員として印刷会社に

前職の福祉施設では一時期、新卒採用を担当していました。そこで採用パンフレットを作ったことがあったんですが、コンサルやデザイナーの方に、自分たちの理念やイメージをビジュアルにしてもらったとき感動しちゃって(笑)。退職した後、ハローワークで、WEBデザインとグラフィックを4か月間学びました。

せっかく勉強したんだし、ということで、その知識を活かせる職場で働きたいと思いました。

でも、デザイナーってすごく実力主義の世界なので、経験なしで正社員として採用してもらうのは難しいんですよ。そんな中、派遣会社さんが紹介してくれた会社があったので、まずそこで経験を積んで考えようと思い、その印刷会社で働くことにしました。まずそこで経験を積んで、次のステップを考えようって思って。

その中で学んだことは「相手のことを考える」ということ。デザインは「何を訴えたいか」ということが分からなくてはいけない。自分のやりたいことと相手に届けたいことは違っています。デザインする前に、情報の整理をしないといいデザインができないし、情報整理では、受け手だけじゃなく、自社の上層部の意図もしっかり考えないといけない。今もちゃんとはできてないですけど(笑)でもそういう考え方は勉強になりましたね。

今の業務内容としては、ホームページのバナーを作っています。WEBデザインって一口に言っても、ほんとにデザインだけ担当する人と、コーディングっていって、プログラムをする人がいるんです。どっちもできる人もいますが、私はデザインだけをしています。

苦労したことは……やっぱり上司がきびしかったことが一番ですね(笑)デザイナー歴15年のベテランで、めちゃくちゃ厳しいんですよ(笑)。もう3日で辞めようかと思いましたが、何とか踏みとどまり、毎日ズタボロになりながらも必死に勉強しました。でも、そこには私と同じように指導を受けてきた1個上の先輩がいて、その人にすごく支えられました。それに上司も、ド素人の私に正しく指導してくれるんですよ。苦手な上司だけど、ありがたい人ですね(笑)漫画の言葉かなんかで「向いてないけどやろうと思ったやつの方がへこたれへん」っていうのがあって。「ただでは転ばないぞ!」という気概でやってましたね(笑)

嬉しいことは……まあそういう厳しい上司なのでなかなか褒めてはくれないんですけど、「まあよくやったね」みたいに言われただけでも嬉しいです(笑)

この仕事で学んだことは「相手のことを考える」ということ。デザインは「何を訴えたいか」ということが分からなくてはいけない。自分のやりたいことと相手に届けたいことは違っています。デザインする前に、情報の整理をしないといいデザインができないし、情報整理では、受け手だけじゃなく、自社の上層部の意図もしっかり考えないといけない。今もちゃんとはできてないですけど(笑)でも、そういう考え方は勉強になりましたね。


秦さんが作成されたポスター


【これから】学びを生かして次のステップへ

私は派遣社員なので、契約は3か月更新なんですよ。実は「直雇用で働きませんか」って声をかけてもらったんですけど、キャリアアップも考えていて……そこで「はい」って言うと、タイミングを逃すというか、ずーっとその会社でずるずるいることになりそうで「次の更新で辞めさせてもらいます」って言っちゃったんです。

と言いつつ、どうしてもデザイナーにこだわりたいってわけでもないんです。ただ、この仕事で学んだことはすごくいいことっていうか、一生ものだと思うんです。たとえば、とにかく「相手のことを考える」とか。「自分が」やりたいこと、伝えたいことじゃなくて、「相手が」届けたいものを理解しないといけない。違う職種に就くにしても、そういうのを活かせたらとは思っています。
一方で、実家のお寺を継ぐ人がいないので、そこも考えたいというか。お寺の近くで働くことも考えています。考えてみれば、お寺も説法とかで、すごく相手に向き合う仕事なんですよね……。


Q:秦さんにとって仕事とは?

永遠のテーマみたいな(笑)。自分の持ってる力や経験で、問題を解決したり、より幸せになってもらったり……相手の人に喜んでもらえる。自分の生き方というか、自分の生きがいというか、学びの場というイメージはありますね。仕事をとおして学び続ける。

相手が絶対にいるから、自分中心じゃなくて相手の望んでることはなんだろうとか、自分以外の人に喜んでもらいたいみたいな……なかなか言語化できないですけど、そんなイメージ。だからやっぱり期限とかはきっちり守らないといけないなって思います。相手のことをどこまで考えられるかっていうのは大事にしないと。それが難しいんですけどね。

Q:生き方や考え方に影響を与えた言葉はありますか?

「明日は明日の風が吹く」とかケセラセラとかですね。今日どんなにつらくてもどうせ明日が来るから生きるしかないって思ってます。

子供時代にすごいネガティブな時期もあったんですけど、明日は明日でいいことあるかなみたいな。変なポジティブさがありましたね。そうゆう感じで1日1日を大切に生きたいなと思いますね。

Q:自分時間について教えてください

私はランニングが好きでマラソン大会にもよく出ます。ランニングはたくさんの魅力があるんですけど、走っているとき、自分自身と向き合えること、これが最大の魅力かと思います。自分の精神を保つために走るみたいな。情報社会で自分と向き合う時間が作りにくいですけど、走ってるときは自分と向き合うしかないですし。そうゆう意味でも私にとって、大切な時間です。


編集後記

改めまして、インタビューにご協力いただいてありがとうございました。このような機会をいただいて、お話しできたこと、うれしく思っております。実際に社会経験のある人と話すことができ、自分の将来について考えるきっかけになりました。自分が仕事をするということは必ず受け手がいる。そのことを考えると、自分がいいと思うことをするのではなく受け手に自分の伝えたいことを受け取ってもらえるようにするにはどうすればよいかを考えた方がいいことを理解しました。ものごとを相手主体で考えるときが必要なときは学生の今でも多くあると思うので意識したいと思います。

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