ネコヤナギ

現在・過去・未来、物・事・こころ、意識と無意識の間を行ったり来たりの17音。 こんなに…

ネコヤナギ

現在・過去・未来、物・事・こころ、意識と無意識の間を行ったり来たりの17音。 こんなに小さいのにこんなに自在な俳句が好き。 それとエッセイを書くことで、やっとこさ自分に追いついているかな。 主婦兼小規模在宅グラフィックデザイナーです。

記事一覧

フジコ・ヘミング追悼 一句とエッセイ

ラ・カンパネラ千の窓が朝焼ける 2024年4月21日、フジコ・ヘミングが92歳の生涯を閉じた。 冥福をお祈りしたい。 私の母は、長く洋装店を営んでいたが、音楽好きだった…

ネコヤナギ
3週間前
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寒オリオン・俳句6句とエッセイ

一月 俳句6句 窓枠に動かぬ景や冬の雨 決心をあとへあとへと毛糸編む 寒林の一部となれば沈黙す 傷ならば色々とある冬薔薇 冬帽の遥かな上を鳥一羽 寒卵もうひと眠…

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冬銀河 俳句6句とエッセイ

12月 6句 秒針のすみやかに行く冬銀河 一呼吸すれば山茶花ひとつ咲く 煮凝りのような月日を男女かな 冬木立まだ・どこかに・こころざし 落ちてくる落ち葉とそのてにを…

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俳句&エッセイ・11月の無限 / 他俳句6句

十一月のどこにでもある無限 そんなつもりはなかったとしても‥‥‥人はいつの間にか十一月に深入りしてしまう。 それは十一月というものの通低音が「無限」でできている…

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秋の俳句5句 エッセイ・俳句「鱗雲」

満月や人のからだの水動く 秋晴れの古い箪笥に住む祖先 秋の星奇数ばかりが集まりぬ 白菊やひとの祈願が密集す 潔癖な月に問いただされている 少しづつ始動している鱗…

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秋の俳句3句・エッセイ「狗尾草」

鏡には何も映らず虫の声 秋晴れて何処かに神殿ある如く 逃げていくものの速さや十三夜 忘却の底抜けている狗尾草 家から歩いて子供の足で3分ほどの所に、駄菓子屋があ…

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秋冷 俳句とエッセイ、他3句

古き書のアンダーライン秋冷る ネットの古本屋で本を4,5冊買った。ひとつひとつは200円代なので、てっきり文庫本だと思い込んでいたのだけれど、来てみたら皆立派な単行本…

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林檎 俳句とエッセイ、他秋8句

食べ尽くす林檎の中のしじまかな 林檎、梨、葡萄など秋の果物は大好きな私であるが、その美味に浸りながらも、ふと、秋の果実の味覚は、短調のメロディと同質のものを持っ…

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はじめまして

自己紹介 はじめまして、ネコヤナギと申します。 あっという間に60代になってしまいました。 多忙な現代人の生活は、なんだか水が流れるように、日々自分が流れて行ってし…

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フジコ・ヘミング追悼 一句とエッセイ

フジコ・ヘミング追悼 一句とエッセイ

ラ・カンパネラ千の窓が朝焼ける

2024年4月21日、フジコ・ヘミングが92歳の生涯を閉じた。

冥福をお祈りしたい。

私の母は、長く洋装店を営んでいたが、音楽好きだったので、店のバック・ミュージックは大体クラッシックのCDをかけていた。

ある日フジコ・ヘミングのCDをかけていると、入ってきた常連のお客様が、「素晴らしいですね!先生、これどういう方が演奏しているの?」と興味深げに母に尋ねた。

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寒オリオン・俳句6句とエッセイ

寒オリオン・俳句6句とエッセイ

一月 俳句6句

窓枠に動かぬ景や冬の雨

決心をあとへあとへと毛糸編む

寒林の一部となれば沈黙す

傷ならば色々とある冬薔薇

冬帽の遥かな上を鳥一羽

寒卵もうひと眠りの重さかな

俳句&エッセイ 寒オリオン

眉間より我を洗いぬ寒オリオン

我が家には新年は来たけれども、正月はまだ来ていない。

何故と言って、まだ雑煮を食べていないからだ。

昨年末25日にケーキを買いに行った主人が、帰っ

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冬銀河 俳句6句とエッセイ

冬銀河 俳句6句とエッセイ

12月 6句
秒針のすみやかに行く冬銀河

一呼吸すれば山茶花ひとつ咲く

煮凝りのような月日を男女かな

冬木立まだ・どこかに・こころざし

落ちてくる落ち葉とそのてにをは

本当のことは言はずに毛玉取る

12月のエッセイ
クリスマスいつかどこかにあるリボン

「そんなに言う事を聞かないなら、今年のクリスマスは皆プレゼント無しですからねっ!」

母の声には意を決した感があったので、私達兄弟は首

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俳句&エッセイ・11月の無限 / 他俳句6句

俳句&エッセイ・11月の無限 / 他俳句6句

十一月のどこにでもある無限

そんなつもりはなかったとしても‥‥‥人はいつの間にか十一月に深入りしてしまう。

それは十一月というものの通低音が「無限」でできているのだから、当然と言えば当然の話である。

一年を通して賑やかだった日々の舞台の、様々な大道具、小道具も、いつの間にかどこかへ片付けられていて、カメラの超広角レンズを覗いた時のように、風景は一瞬にして、遠景へ退いてしまう。

身の回りには

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秋の俳句5句 エッセイ・俳句「鱗雲」

秋の俳句5句 エッセイ・俳句「鱗雲」

満月や人のからだの水動く

秋晴れの古い箪笥に住む祖先

秋の星奇数ばかりが集まりぬ

白菊やひとの祈願が密集す

潔癖な月に問いただされている

少しづつ始動している鱗雲

何かを始めると、ついつい早くその結果を出したくなる。

特に自分は、せっかちな方だと思う。

サプリメントを呑み始めてまだ3日目だというのに、なにか喜ばしい変化はないものかしらと自己観察するし、花の種を植えて1,2日で芽が出

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秋の俳句3句・エッセイ「狗尾草」

秋の俳句3句・エッセイ「狗尾草」

鏡には何も映らず虫の声

秋晴れて何処かに神殿ある如く

逃げていくものの速さや十三夜

忘却の底抜けている狗尾草

家から歩いて子供の足で3分ほどの所に、駄菓子屋があった。

母にしつこく10円をせがんで、やっとの思いでそれを貰うと、汗ばんだ手の中に硬貨を握りしめて、私は駄菓子屋に走った。

その短い道のりの嬉しさ。

買いに行くのは、駄菓子かもしれない、塗り絵かもしれない、しかし今手の中に握り

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秋冷 俳句とエッセイ、他3句

秋冷 俳句とエッセイ、他3句

古き書のアンダーライン秋冷る
ネットの古本屋で本を4,5冊買った。ひとつひとつは200円代なので、てっきり文庫本だと思い込んでいたのだけれど、来てみたら皆立派な単行本だったので驚いた。
しかも中々に綺麗な品ばかりである。

送料も300円程度だったし、3冊はまとめて同じところから送ってもらったので、一つ分しかかからなかった。
3冊まとめて送料を加えてもまだ一冊分の元値に届かない。
これはいいなあ、

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林檎 俳句とエッセイ、他秋8句

林檎 俳句とエッセイ、他秋8句

食べ尽くす林檎の中のしじまかな

林檎、梨、葡萄など秋の果物は大好きな私であるが、その美味に浸りながらも、ふと、秋の果実の味覚は、短調のメロディと同質のものを持っている、と思う時がある。

美味しいのに変わりはないのだが、
(たとえば音楽にも長調の旋律と短調の旋律があって、どちらが良いと言うことではなく、素晴らしい音楽は、どちらの調であったとしても素晴らしいように。)

秋の果実の味覚には、短調の

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はじめまして

はじめまして

自己紹介
はじめまして、ネコヤナギと申します。
あっという間に60代になってしまいました。

多忙な現代人の生活は、なんだか水が流れるように、日々自分が流れて行ってしまうような心許なさがあります。

そんな中で、20代から続けていた俳句を書くことと、自分の身辺に浮遊している想いをエッセイにすることで、 ふと、立ち止まる。

例えば、忙しかったり、心が重かったりすると、周りのものをあまり見ていないも

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