梅雨空の天の睡りは長きかな ハンカチの忘れてしまった物語 紫陽花や水の転生静かなり 噴水のせわしき告白聞いている かたつむり今どの辺か顧みず 踏み出せば青葉風四…
ラ・カンパネラ千の窓が朝焼ける 2024年4月21日、フジコ・ヘミングが92歳の生涯を閉じた。 冥福をお祈りしたい。 私の母は、長く洋装店を営んでいたが、音楽好きだった…
一月 俳句6句 窓枠に動かぬ景や冬の雨 決心をあとへあとへと毛糸編む 寒林の一部となれば沈黙す 傷ならば色々とある冬薔薇 冬帽の遥かな上を鳥一羽 寒卵もうひと眠…
12月 6句 秒針のすみやかに行く冬銀河 一呼吸すれば山茶花ひとつ咲く 煮凝りのような月日を男女かな 冬木立まだ・どこかに・こころざし 落ちてくる落ち葉とそのてにを…
十一月のどこにでもある無限 そんなつもりはなかったとしても‥‥‥人はいつの間にか十一月に深入りしてしまう。 それは十一月というものの通低音が「無限」でできている…
満月や人のからだの水動く 秋晴れの古い箪笥に住む祖先 秋の星奇数ばかりが集まりぬ 白菊やひとの祈願が密集す 潔癖な月に問いただされている 少しづつ始動している鱗…
鏡には何も映らず虫の声 秋晴れて何処かに神殿ある如く 逃げていくものの速さや十三夜 忘却の底抜けている狗尾草 家から歩いて子供の足で3分ほどの所に、駄菓子屋があ…
古き書のアンダーライン秋冷る ネットの古本屋で本を4,5冊買った。ひとつひとつは200円代なので、てっきり文庫本だと思い込んでいたのだけれど、来てみたら皆立派な単行本…
食べ尽くす林檎の中のしじまかな 林檎、梨、葡萄など秋の果物は大好きな私であるが、その美味に浸りながらも、ふと、秋の果実の味覚は、短調のメロディと同質のものを持っ…
自己紹介 はじめまして、ネコヤナギと申します。 あっという間に60代になってしまいました。 多忙な現代人の生活は、なんだか水が流れるように、日々自分が流れて行ってし…
ネコヤナギ
2024年6月21日 14:59
梅雨空の天の睡りは長きかなハンカチの忘れてしまった物語紫陽花や水の転生静かなり噴水のせわしき告白聞いているかたつむり今どの辺か顧みず踏み出せば青葉風四肢の中までこころの動くとき乳癌の定期検診が近づくと、俄かに自分の中に色んな人間が増殖する。疑い深い人間。最悪の展開ばかり逞しく想像する人間。なるようにしかならないと開き直る人間。きっと大丈夫と、信じる人間。取り越し苦労
2024年5月27日 01:21
ラ・カンパネラ千の窓が朝焼ける2024年4月21日、フジコ・ヘミングが92歳の生涯を閉じた。冥福をお祈りしたい。私の母は、長く洋装店を営んでいたが、音楽好きだったので、店のバック・ミュージックは大体クラッシックのCDをかけていた。ある日フジコ・ヘミングのCDをかけていると、入ってきた常連のお客様が、「素晴らしいですね!先生、これどういう方が演奏しているの?」と興味深げに母に尋ねた。
2023年1月24日 19:43
一月 俳句6句窓枠に動かぬ景や冬の雨決心をあとへあとへと毛糸編む寒林の一部となれば沈黙す傷ならば色々とある冬薔薇冬帽の遥かな上を鳥一羽寒卵もうひと眠りの重さかな俳句&エッセイ 寒オリオン眉間より我を洗いぬ寒オリオン我が家には新年は来たけれども、正月はまだ来ていない。何故と言って、まだ雑煮を食べていないからだ。昨年末25日にケーキを買いに行った主人が、帰っ
2022年12月23日 03:52
12月 6句秒針のすみやかに行く冬銀河一呼吸すれば山茶花ひとつ咲く煮凝りのような月日を男女かな冬木立まだ・どこかに・こころざし落ちてくる落ち葉とそのてにをは本当のことは言はずに毛玉取る12月のエッセイクリスマスいつかどこかにあるリボン「そんなに言う事を聞かないなら、今年のクリスマスは皆プレゼント無しですからねっ!」母の声には意を決した感があったので、私達兄弟は首
2022年11月20日 17:39
十一月のどこにでもある無限そんなつもりはなかったとしても‥‥‥人はいつの間にか十一月に深入りしてしまう。それは十一月というものの通低音が「無限」でできているのだから、当然と言えば当然の話である。一年を通して賑やかだった日々の舞台の、様々な大道具、小道具も、いつの間にかどこかへ片付けられていて、カメラの超広角レンズを覗いた時のように、風景は一瞬にして、遠景へ退いてしまう。身の回りには
2022年10月22日 13:15
満月や人のからだの水動く秋晴れの古い箪笥に住む祖先秋の星奇数ばかりが集まりぬ白菊やひとの祈願が密集す潔癖な月に問いただされている少しづつ始動している鱗雲何かを始めると、ついつい早くその結果を出したくなる。特に自分は、せっかちな方だと思う。サプリメントを呑み始めてまだ3日目だというのに、なにか喜ばしい変化はないものかしらと自己観察するし、花の種を植えて1,2日で芽が出
2022年10月15日 20:33
鏡には何も映らず虫の声秋晴れて何処かに神殿ある如く逃げていくものの速さや十三夜忘却の底抜けている狗尾草家から歩いて子供の足で3分ほどの所に、駄菓子屋があった。母にしつこく10円をせがんで、やっとの思いでそれを貰うと、汗ばんだ手の中に硬貨を握りしめて、私は駄菓子屋に走った。その短い道のりの嬉しさ。買いに行くのは、駄菓子かもしれない、塗り絵かもしれない、しかし今手の中に握り
2022年10月7日 22:56
古き書のアンダーライン秋冷るネットの古本屋で本を4,5冊買った。ひとつひとつは200円代なので、てっきり文庫本だと思い込んでいたのだけれど、来てみたら皆立派な単行本だったので驚いた。しかも中々に綺麗な品ばかりである。送料も300円程度だったし、3冊はまとめて同じところから送ってもらったので、一つ分しかかからなかった。3冊まとめて送料を加えてもまだ一冊分の元値に届かない。これはいいなあ、
2022年10月7日 21:08
食べ尽くす林檎の中のしじまかな林檎、梨、葡萄など秋の果物は大好きな私であるが、その美味に浸りながらも、ふと、秋の果実の味覚は、短調のメロディと同質のものを持っている、と思う時がある。美味しいのに変わりはないのだが、(たとえば音楽にも長調の旋律と短調の旋律があって、どちらが良いと言うことではなく、素晴らしい音楽は、どちらの調であったとしても素晴らしいように。)秋の果実の味覚には、短調の
2022年10月7日 19:09
自己紹介はじめまして、ネコヤナギと申します。あっという間に60代になってしまいました。多忙な現代人の生活は、なんだか水が流れるように、日々自分が流れて行ってしまうような心許なさがあります。そんな中で、20代から続けていた俳句を書くことと、自分の身辺に浮遊している想いをエッセイにすることで、 ふと、立ち止まる。例えば、忙しかったり、心が重かったりすると、周りのものをあまり見ていないも