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「普通煎茶」と「深蒸し煎茶」

煎茶には、「普通煎茶(浅蒸し煎茶)」と「深蒸し煎茶」があるとよく言われます。

ただ、本来は、煎茶があって、その蒸し具合(蒸し度)によって、浅蒸しか深蒸しかを分けています。

なぜ、ややこしいことになっているかというと、かつては、今でいう普通煎茶が「煎茶」と言われており、後から「深蒸し煎茶」が誕生したため、それと区別するために「煎茶」を「普通煎茶」と呼ぶようになったのです。

なぜ、深蒸し煎茶が無かったのかというと、昔は、お茶は綺麗な川が流れる冷涼で霧がかる山間部で取るものであったからです。

冷涼な半日蔭で育つお茶は、葉肉が薄く、煎茶を加工する時に、上手に蒸すことができ、綺麗な針のようなお茶になりました。

普通煎茶

一方、日照時間が長く地が肥えているような台地でお茶を育てると非常に元気に育つ一方で、葉肉が厚くなり、煎茶を加工する時に、芯まで上手に蒸すことが難しく、また加工も難しく、苦渋みが強く太く黒っぽく、山のお茶のように良い品質の煎茶にはなりませんでした。

経済が発展し、お茶が産業として拡大していった際、農家は山を切り開き、お茶を植えたのは勿論、平らな台地も開墾し、お茶を植えていきました。

そんな中で、深蒸し煎茶は、明治時代中期、静岡県の牧之原台地近辺で開発されました。蒸かしが上手く通らないデメリットを克服するために、2倍~3倍の蒸し時間で煎茶を作ったそうです。

今までの煎茶は、針のような形状が当たり前だったのを、形状よりも味を重視したお茶が誕生したわけです。深蒸し煎茶は、普通煎茶よりまろやかで普通煎茶とは別物の味わいです。

後発茶産地は、見事に平地のデメリットを克服し、イノベーションを巻き起こしたわけですね。

こうして、「普通煎茶」と「深蒸し煎茶」が分けて考えられるようになったわけですが、どちらにも、良し・悪しがあり、茶商は、それを理解し、ブレンド(合組)することでよりお茶として完成された「仕上げ茶」を生み出すのです。

同じ煎茶でも、蒸し度によって味・香・形すべて変わってくるなんて面白いですね。

ただ、蒸し度の考え方の根本は同じで、しっかり蒸せているかどうかなんです。

普通煎茶は、蒸し時間が短い方が、一番、良い煎茶になり
深蒸し煎茶は、蒸し時間が長い方が、一番、良い煎茶になるんです。

深いですね。

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