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私の大切なロン 本当に有



はじめに
これは、当時、数十年前8才だったのんちゃんとマルチーズの仔犬ロンのお話です。ロンとの想い出を形に残したいと思っていたのんちゃんの思いをようやく、数十年たった今、形にできました。ペットがいる人、ペットを飼いたいと思っている人に読んでいただけると嬉しいです。

No.1 ロンくんとの出逢い

3月6日でもまだはだ寒い日でした。
待ちに待った子犬がやって来たのです。

座布団とタオルにくるまって
寒そうにふるえていました。

名前はロン、テレビで見た勇敢で素敵な主人公の犬の名前からとってつけました。
    ーーー8歳ののんちゃんより

のんちゃんは、ずっと子犬を飼いたくて飼いたくてたまりませんでした。

ある日、のんちゃんのおとうさんが、タオルと小さな布団にくるまっている子犬を抱えて家に帰ってきました。のんちゃんはこの日をどんなに待ち望んだことでしょう。

タオルの中からお顔がちょこんとのぞいていました。
目や鼻はまっ黒でぬれていました。

寒いのか恐がっているのかわかりませんでしたが、その子はふるえていました。

のんちゃんが顔を近づけると、ビー玉のような黒い目がじっとのんちゃんを見ていました。

おとうさんがそっと畳の上に布団ごと置くと、タオルからはい出して、ちょっとよろよろしながら2、3歩きました。

「うあー、かわいいなあ。」
のんちゃんが手を近づけると、その子はそっとのんちゃんの手をペロッとなめました。
くすぐったい!と思ったのんちゃんは、この時とってもとっても幸せな気持ちでいっぱいでした。

のんちゃんのおかあさんが小さいお皿にお水を入れてその子の前に置くと、
ペロペロと小さい音をたてながらしばらくお水を飲んでいました。

「のどが乾いていたんだね。」
「どこに連れて行かれるのか心配だったのかもしれないね。」
「もう安心して!あなたはこれからずっと家族だから。」
「毎日一緒に散歩しようね。」

のんちゃんはこの子犬に「ロン」という名前をつけました。
それは、のんちゃんが小さいときにテレビで見た、1人旅を続ける勇敢で優しい犬の名前「ロンドン」からとったのです。
ロンドンは大きくて堂々としていましたが、この子は小型犬で、ぬいぐるみのような軟らかい白い毛をしています。だから、最初の2文字だけ取ってかわいらしく「ロン」にしました。

こうして、ロンくんとの出逢いが、のんちゃんの心に大きな感動を与えることになっていきました。

No.2 ロンくんのご飯

のんちゃんはロンくんにいろいろとおいしいものを食べさせたいと思いました。でも、おかあさんが、「おなかをこわしてしまうといけないからドッグフードにしましょうね」といいました。のんちゃんはしかたなく、みかんやあんぱん、たまご焼き、チョコレートをあげることをあきらめました。
ドッグフードを食べているのをじっと見ているのんちゃん。
おかあさんは、夕食に作った肉じゃがのお肉をそっとドッグフードにまぜてくれました。
ロンくんはまるでお肉を飲んでしまったかのようにペロッと食べてしまいました。「あんなにすぐに食べちゃって味がわかるのかな?もっと味わって食べればいいのに。」とのんちゃんは思いました。そのあとロンくんはドッグフードについた肉じゃがの汁をペロペロなめ、再びカリカリと音をたててドッグフードを食べました。
ドッグフードっておいしいのかなあ?
のんちゃんはちょっと不思議になりました。

No.3 ロンくんのお家

のんちゃんのお父さんは、ロンくんのためにお家をつくってくれました。
黒いベニヤ板で作った四角い箱です。ロンくんが入っていけるぐらいの入り口があります。中には小さくたたまれた毛布、入り口の横にお水用のお皿があります。
のんちゃんはこのお家のことを「ハウス」と呼んで、ロンくんに一生けんめい教えました。いつの間にかのんちゃんがロンくんに向かって「ハウス❗」と言うと、ロンくんは、お家に入りたくなくてもしぶしぶお家に入っていきます。
ロンくんはハウスの入り口がちょっと小さいと思っていたのか、毎日ベニヤ板をガリガリ歯でかんで、お気に入りの高さになるように削っていました。
「歯を鍛えているのかもしれないね。」とお母さんが言っていましたが、のんちゃんは、「ロンくんはぜったいもっと入り口を大きくしたいのだと」と思っていました。
ロンくんは、お部屋で遊ぶのはもういいやと思ったときは1人でハウスに入っていきます。温かい毛布の上に伏せて、前足だけちょこんと出して、その上に顔をのせてくつろいでいます。真っ黒な瞳がじっとのんちゃんの目を見ています。何か言いたいのかな~。

No.4 ロンくんの歌

ロンくんと遊ぼう  🎵🎵🎵
駈け足で遊ぼう
お手玉投げたらとっておいで

ロンくんの昼寝
ぐーすかグーグーグー
ロンくんの寝顔はかわいいね

ロンくんと散歩
駈け足で散歩
いつもの道を通ろうね

これは、のんちゃんが9歳の時に作った「ロンくんの歌」です。

とっても短い歌ですが、3番まで作りました。その時、のんちゃんはエレクトーンを習っていたので、口ずさみながらエレクトーンでその音を確認していました。この音だと思ったらノートに音符を書き留めて、少しずつ曲が出来上がりました。
完成するとのんちゃんは誰かに聞いてもらいたくて、いても立ってもいられませんでした。ちょっぴり恥ずかしかったけれど、お母さんに聴いてもらうことにしました。
一生懸命歌ったのんちゃんにお母さんは、「とっても素敵な歌ができたね。」と言ってくれました。
お父さんはいつも家に帰ってくるのが遅かったけれど、のんちゃんはこのできたての歌を聴いてもらおうと眠いのをがまんしてお父さんを待っていました。
お父さんも
「おお、なかなかいい曲だね。歌いやすいね。」と言ってくれました。
のんちゃんは大好きなお父さんとお母さんにほめられて、とってもとってもうれしかったのです。

No.5 ロンくんと散歩

ロンくんはお外に出るのが大好きです。特にのんちゃんが学校から帰ってくると散歩に行けるので、のんちゃんを見つけるとしっぽを大きく振って、リードを加えてきます。
のんちゃんはこんなロンくんを見ると、どんなに疲れていてもランドセルを置いて散歩に出かけます。
お家を出発して、歩道橋までの道は特にお気に入り。所々に草や小さなお花が咲いていて、その先の公園に立ち寄ったりします。たまに近所のおばさんに声をかけられても、ロンくんは夢中になっているときはそっぽを向いています。ようやく歩道橋に来ると、ロンくんは段差が低い階段を一気に登りつめます。のんちゃんは息を切らしてようやくの思いでロンくんについていきます。
歩道橋の上に来ると、ここはのんちゃんのお気に入りでもあります。ずっと遠くが見えて気分がいいし、大きく息を吸って清々しく感じられます。
時には立ち止まって、今日学校であったできごとや、こまったことなどをロンくんに聞いてもらったりしました。
そんなときロンくんはお座りして首をかしげて聞いてくれるのです。
でも、飽きてくると立ち上がってさっさと歩き出します。「ねえ、もっと私の話を聞いてよ!」と言いながら、のんちゃんはロンくんに引っ張られながら話の続きを始めるのでした。嫌なことがあってもロンくんに話すと、それで気持ちが落ち着きます。「もういいや!考えるのやーめた !」と思えるようになるのです。
来た道をちょっと遠回りして、ロンくんのお気に入りのコースでお家に帰ります。

No.6 ロンくんの寝顔

ロンくんはよく寝ています。寝ていないのかもしれないけれど、寝っ転がっています。
ネコちゃんみたいにくるっと丸まって、頭をお腹にくっつけているポーズ。
手足を全部伸ばして長ーくなっているポーズ。
横になって、手足をそろえているポーズ。
仰向けになって手足も広げているポーズ。これはすごい!こんな無防備なかっこうでよくも寝ていられるね。

寒い冬はこたつに入って温まっているんです。「ネコちゃんなら歌にもあるようにこたつで丸くなるというけれど、ワンちゃんもやっぱり寒いのは嫌なのかなー」とのんちゃんは思いました。

どんな風に寝ていてもどれもみんな本当にかわいいのです。
たまに、
眠っているのかと思いきや、横目でじろっとこちらを見ていたり。
ロンくんはこんなとき何を考えているのだろうね。

No.7 ロンくんのお遊び

ロンくんは遊ぶのが大好きです。
のんちゃんが軟らかいボールをポーンと投げるとロンくんは前足をそろえてウサギさんのようにピョンピョン飛んでボールを追いかけます。
そして、前足でボールを捕まえ、かわいいお口にボールを加えてのんちゃんのところへ持ってきます。のんちゃんは、今度はもっと遠くに投げると、その方向をしっかり見てボールとほぼ同じぐらいに一目散に走ります。
次はお手玉です。
のんちゃんがお手玉を練習していると、ロンくんも一緒にやりたくなって、お手玉を目で追っていると目が回っちゃうのかちょっとよろけたりしています。のんちゃんが1つ落としてしまうとすぐに手を伸ばして、キャッチ! そして意地悪して、わざとのんちゃんには渡しません。
階段の登り降りも大好きです。
自分の体を上手く使って、一段一段丁寧に降りていきます。
でも登りはすごい早さです。ちょっと目を離すと2階に行っていたりします。何しているのかな?
でもロンくんが一番好きなのはやはり、お外で思いっきり走り回ることです。
両足をそろえ、風を切ってビュンビュン走ります。のんちゃんはついていけなくなり、ロンくんに引っ張られているようです。
たくさん遊んだ日は、ぐっすり、グースカグーグーグーです。😪💤💤

No.8 ロンくんのお風呂

ロンくんはお父さんとお風呂に入ります。真っ白でふさふさの毛は、桶のお湯一杯分でしなっとなって、ロンくんの体は一瞬で一回り小さくなってしまいます。ロンくんはお風呂が大嫌いです。シャンプーで体全体を洗われている間、ロンくんはしっぽをずっと下げたまま少しふるえています。
お父さんもできるだけ早く終えようと頑張っています。
最後にお湯をかけられて、泡が全てなくなると、お父さんは、「ロンが出るぞー」と大きな声で伝えます。たいていのんちゃんがバスタオルを持ってお風呂場に向かいます。
まずはタオルで濡れた毛を拭き取って広い部屋につれて行くと、ロンくんも自分で体をぶるぶるやって水分をぶっとばしています。その後でドライヤーで乾かします。ロンくんはこのドライヤーの音も嫌いです。でも、自分でも毛がある程度乾くと、ロンくんは気持ち良いのか、走り回ったり寝っ転がったりピョンピョン跳ねたりはしゃいでいます。でも、実はもう1つロンくんが嫌いなことをやらなければなりません。ブラッシングです。ロンくんの毛は軟らかくて細いのですぐに絡まってしまいます。ブラッシングすると絡まった毛がブラシに引っかかり、ロンくんにとっては本当に痛いようで、キャンと泣きます。でも絡まった毛がほどけない状態が続くと大変なので、のんちゃんも懸命にブラッシングします。
ロンくんはたまに美容院に連れていってもらいます。でも、ロンくんにとっては嬉しくないようです。じっとしていなければならないし、嫌いなシャンプー、ブラッシング、毛玉とりですからねー。
1,2時間ほどしてから美容院にお迎えに行くと、これがロンくんかしらと思うほど、とっても素敵なワンちゃんが現れます。髪の毛はそろえてカットされていて、足元の毛は短く切られています。真っ白でつやのある毛がフワッと体からたれています。おでこの上では長い毛がまとめられていて、その根元に赤いリボンを付けてもらっています。
「ロン」と呼ぶと、ガラス越しにのんちゃんの方を見て、しっぽを大きく振りました。

No. 9 ロンくんはとっても頭がいい

ロンくんは頭がいいとのんちゃんはいつも思っています。
「お手!」と言えば、ちょこりんと右手を出す。
お預け
よし!
ダメ !
お座り
お散歩
ご飯だよ
色々覚えています。
家族の感情がわかります。
怒っている
笑っている
ケンカしていると、仲裁にはいる。
ロンくんは、ケンカなんてやめなよーと言わんばかりに、吠えてみたり、ちょっかいだしたり、自分の方に気を向かせようと頑張ります。
時には、目の前にごろんと寝そべってしまいます。
その懸命な姿を見ると、のんちゃんたちもケンカをやめなければならないと思うのです。

No.10 ロンくん本当に有り難う

それからしばらくたってのんちゃんも素敵なお姉さんになっていました。

いつもはリードを見ると大きくしっぽを振って跳んでくるはずなのに。
それでも散歩は行きたそうだった。
いつもの大好きな道なのに
今日は何度か立ち止まってしまう。
ついには、一歩も進もうとしない。
仕方なくだっこして家まで帰ってきた。
一体どうしたんだろう。
こんなこと今までになかった。
ロンは12歳、犬の年でいえば高齢者の年だそうだ。
疲れたのかなー。
取り敢えず明日の朝病院へ連れていこう。
夜中の間ずっとロンは寝ようとしなかった。私はロンの側にいようとソファーで寝ることにしていた。私が目を閉じて寝ようと横になると、寝ないでと言わんばかりに側にきて私を起こそうとする。
ロンをソファーに乗せると、目を閉じて頭を伏せるのだがすぐに起きてしまう。やっぱり眠れないらしい。
私はうとうとしながら明け方を迎えた。
ようやく眠れたのかなーと思って様子をみたけれど、ロンはそのまま眠ってしまって起きなかった。
ずっとずっと待っていたけれど起きなかった。
きっとお散歩の夢でも見ているのかしら?
眠っている顔は笑っているかのようにみえた。
それなのにロンは目を開けようとしなかった。
ロン、有り難う。
私はロンがいたから
悲しいときも
辛いときも
楽しいときも
ずっと側にいてくれたから
素敵な時間を過ごしてきた。
大切な時間を一緒にいてくれて
本当に有り難う。(^∧^)

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