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2週間の”こい”だった[Prologue]

ビルの光に包まれて夜空には一つも星は見当たらない。

空を見上げても希望の方向を指してくれるような星は存在しないらしい。

「俺生きてる意味あんのかな。死ぬか…」

最近抱き始めた疑念と悩みををそっと呟く。

いっそのこと誰かに殺してほしいとすら感じていた。

『あの、すいません。』

そんな時突然、背後からか細い声とともに肩をたたかれる。
振り向くと綺麗というより可愛いという言葉が似合いそうな女性が立っていた。

「僕ですか…?」

肩をたたかれたのだから当たり前なのだが。

『はい。私、遠藤さくらといいます。』

律儀に深々と頭を下げてお辞儀する。
逆ナンの可能性は限りなく低いか、と落胆するあたりどんな状況でも男は男らしい。

「どうかしましたか?」

『いきなりで申し訳ないのですが、死ぬんですか?』

「え…?」

確かに、”死ぬんですか”そう聞かれた。

『私、死期が見えるんです。あなたは何もしなくても2週間後死にますよ』

彼女の口から放たれる言葉とあまりの唐突さに自然と笑いがこぼれる。

「そんな非現実的なことありえないでしょ。」

小ばかにするように言った。

『信じなくていいです。ただ私も同じ日に死ぬんです。自ら死ぬくらいなら私と最後の2週間すごしませんか?』

なぜだろうか。ぐっと夢から引き戻されるような感覚に陥る。

当然意味は一切理解できなかった。
ただ、嘘だと決めつけられない何かがそこにあった。

「わ…わかりました。」

遠藤さくらのあまりに真剣な表情に押されたわけではない。

信じたわけでもない。

ただ、こう返事をすることまでもが運命のように。

こうして、2週間の”故意”で特殊な恋が始まった。

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