【毎週ショートショートnote】顔自動販売機


「今日は自動販売機になるの! おばあちゃん、好きなの買ってね」
「あら、ありがとうね」

今日も孫は妻と遊んでいる。
自動販売機に自らなるとは、なかなかにトリッキーな遊び方だ。

「なにを売ってるのかしらねえ」
「顔だよ!」

まさかの。

「へえ素敵ね。どんな顔を売ってるの?」

妻はどうじることなく、孫につきあっている。

「えっとね、まずはこれ!」

孫は紙でできたお面をいっぱい持ってきた。
ところどころ細工が甘いところがあるが、5歳の子供がつくったにしては、よくできている。


「あら、これ全部つくったの?」
「うん、すごい?」
「すごいすごい。あら、これは、だれかしら?」
「キツネだよ!」
「そうなの。可愛いわね」


「おばあちゃんは、これにしようかしら。これはだあれ?」
「メガロドンだよ!」
「へえ、そうなのね」

え…? なにそれ。
気になって妻のお面をみてみるが、トラバサミを開いて、正面からみたような感じでわからない。
まるで、大きな口を開けているようだ。