【毎週ショートショートnote】名を自動転売鬼


「お面を買ったらね、名前をつけるんだよ」
「じゃあ、おばあちゃんはメガロドンにするわね」
「うん!」

だから、メガロドンとは、なんなのだ。

「じゃあ、みかんちゃんは、どうかしら」
「かわいいね!」
「かわいいわねえ」

みかんに関係するものなのだろうか。
私がそう考えていると、孫は、なにかのお面をつけはじめた。

「ふっふっふ。私は名前転売鬼…! 転売デーモンであるぞ! お前のみかんちゃんは私がいただいた!」
「あら、どうしましょう。名前がなくなっちゃったわ」
「ふふふ、転売デーモンは名無しには甘い…。名前をさずけてやろう」
「あら、いいの。なんて名前かしら」
「歯医者さん」
「いい名前ねえ。歯がおっきいものね」

私は、たまらず妻に問いかける。

「そのメガロドンって、なんなのかな」
「えー、おじいちゃん知らないの」
「ごめんね。知らないんだ。教えてくれないかな」
「鮫よ。海を泳ぐ鮫。絶滅して、もういないけどね」
「さすが、おばあちゃん!」


妻に勝てない。