【毎週ショートショートnote】 訓告したいの四六時中


「川井! 俺の曲、イヨさんに聴かせたのか!?」
「ダメだったの?」
「ダメじゃない! ダメじゃないけど、けど…」

小番が雄叫びに近い悲鳴をあげた。

「うるさい」
「うるせえ! 俺だって、俺だってなあ!」

いなちゃんは、やれやれとため息をついた。

二人が話してるのは、小番の曲の譜面を勝手にイヨさんに教えたことだろう。
イヨさんから、ひさびさに、とんでもない曲を妹から聞いたと教えてもらい。
聞けば、小番のボツ曲だったときの俺の心境を述べよう。

イヨさんと小番くっつけ。俺がいなちゃんを口説ける。

いけない。

俺の心のアラームが鳴る。

いなちゃんは、特に深い意味もなく、小番の曲をお兄さんに聴かせただけだ。

そう、意味はない。

「狩田」
「なっ、なんすか? いなちゃん」
「小番と兄貴で、飲み会でもして。なんか、めんどい。狩田、兄貴と仲いいでしょ」
「はっ! …はああああああああ!?」

俺の頭のなかで、アラームが大音量で鳴る。

いなちゃん。そりゃ、ないっすよ。