お遍路さん【5日目】
今日は、遍路道最難関と呼ばれる、焼山寺への道に挑戦する。GoogleMapには、寺に到着するまでの距離が麓から7時間と書かれており、アプリが壊れたのかと宿の女将さんに伺ってみたが、どうやら本当らしい。
6:30に宿を出発し、11番札所の藤井寺の入口に到着した。山道入口がこの寺の裏にあるのだが、そこに焼山寺までの所要時間が書かれていた。「健脚5時間、並6時間、弱足8時間」。コロナウイルスの後、お寺の営業時間は8:00~17:00に変更されたため、体力に自信がなく、早めに出発しなければならない方々は、藤井寺の納経を前日までに済ませておくことを勧める。
実は、ここから約6時間、写真を1枚も取らなかった。理由としては、ガチの山道だったため、ポケットに携帯を入れながら登ると落としたときに取り返しがつかなくなると判断したからだ。噂だと、ここは本当に空海が歩いた道の中で、最後に残った場所らしい。他の道は、舗装されたりコンクリートになったりしており、昔と同じ姿のままとはいえないそうだ。
もはや、そこに整備された階段などなく、石と木の根っこが階段状にかろうじてなっているらしい道を、大股で登っていく。滑落しないように、慎重になりつつ、息を切らして登る。重い荷物を預けず、全然運動していなかったため、8人くらいに追い抜かされてしまった。
「遍路ころがし」と呼ばれるきつい道の途中で休んでいると、地元のおばあさんが、スタスタとやってきた。「こんなところでバテてたらあかんよ。あんた、もう少し痩せないと膝悪くするよ」と言われ、颯爽と去っていった。聞いてみると、年齢は確か、75歳だったか80歳だったか忘れたが、とにかくとんでもない脚力の持ち主だった。
実はお寺までは山を3つ昇り降りする。「なんで登ったのにわざわざおりるねん!」と心の中で叫んでいたが、実際に声にも出ていたのだが、とにかく下るときも整備されていない山道は気をつけないといけない。私は3回転んでしまった。楽で、すこし危険を犯す道を選んだときに、転んでしまったとき、それ以降は、「慎重に、着実な道をゆく」と方針を切り替えた。
ひたすら登り、限界に達すると、土に汚れることをなりふり構わず座り込む。この瞬間の森の中は、静寂で、空気もよく、気持ちが良かったことを覚えている。3本もってきた水も飲み干したため、川の水を1L汲み、登る。
のぼる、のぼる…長い階段を上がる。
すると、大きなお大師様の像が「お前よくやったな」と言わんばかりに、朦朧とする意識の中、たち現れた。思わず泣きそうになった。このときの感動は、登らないと味わえないだろう。
動画撮影している方と、ここから1時間登った。映画や歴史の話をしながら登っていった。14:30頃、焼山寺に着き、お参りを済ませた。「着いたら絶対にタクシーで宿まで行く!」という誓いを心の支えにしながら登っていたので、タクシー会社に連絡する。「すみません、今出払ってまして」。次、「すみません、お待ち下さい…今出払っておりまして」。合計5箇所に電話をかけたが、全滅だった。コロナの影響で、バスもなくなったそうだ。近くの宿も多くが閉業し、1ヶ月前に取らないと予約が取れない状況だった。ここから3時間歩かなければならない…追い打ちをかけるかのように、外国人のおじさんに舐めた態度を取られて、イライラする。「クソが!ふざけんなよまじで!」と思わず言ってしまった。
宿まで歩いていく途中、金剛杖の鈴をなくしてしまった。お遍路の心得として十善戒があるのだが、その6つめ、不悪口がある。この鈴の音は、着実に歩いている感じがあって好きだったのだが、戒律を守らなかったためになくしてしまったのだろうか。少し作りが甘い気もするので、金剛杖の紐や鈴が取れないように(ある時を境に、1時間に一回くらいは外れていた)お店の方には改善してほしい。
山道の葉っぱが優しく足を包んでくれる道と違い、コンクリートの道は痛くて嫌いだ。人間が歩くためではなく、車のために作ったのだろう。僕が次に公共事業をするとしたら、歩道が足に負担のかかりづらい設計にするだろう。
限界を突破して3時間歩く。この道は満開の枝垂れ桜が続いており、私の身体とは裏腹に、目を楽しませてくれた。
宿についたのは18:00だった。19:00までにチェックインしなければならなかったため、時間制限もある中、なんとかやりきった。
重い足を引き継ぎながら、近くのレストランへ入った。山に持っていったのはおにぎり3個だけだったため、なんとここで4200円分もの食事を平らげてしまった。リバーサイドのコテージで、カメムシの匂いとともに、茂木健一郎さんのYoutubeで、脳科学では意識が全く分かっていないことを聞きながら、眠りについた…
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