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(第9話)時を操る少女【創作大賞2025ミステリー小説部門応募作】2024/08/03公開

第9話「真相への接近」

橘さくらは、深夜の警察署で資料と向き合っていた。10年前の汚職事件の記録を発見してから、彼女の時間管理はさらに厳密になっていた。睡眠時間を削ってでも、この新たな手がかりを追究する必要があったのだ。

中村刑事が、コーヒーを持ってさくらの元にやってきた。「さくら、無理はするなよ。でも、君の頑張りには感心するよ」

さくらは感謝の笑顔を見せた。「ありがとうございます、中村さん。でも、これは無理じゃありません。時間を有効に使えば、十分にできることなんです」

中村は頷いた。「そうか。で、何か新しいことは見つかったか?」

さくらは発見した資料を示した。「はい。10年前の汚職事件で、山本議員が被告人だったんです。そして、その時の担当検事が檜山検事でした」

中村の目が大きく開いた。「なんだって?これは大きいぞ。山本議員と檜山検事の繋がりが、ここまで昔から...」

さくらは続けた。「しかも、その裁判の結果が不自然なんです。証拠が揃っていたにも関わらず、山本議員は無罪放免されています」

二人は、この発見が持つ重要性を理解した。これが、現在の事件の根源である可能性が高かった。

翌朝、さくらたちは高橋健太も交えて作戦会議を開いた。さくらは時間管理表を示しながら、効率的な調査計画を提案した。

「まず、10年前の事件の関係者への聞き込みが必要です。同時に、山本議員と檜山検事のその後の関係性も調べる必要があります」

高橋が提案した。「僕が山本議員の政治資金収支報告書を調べてみます。何か不自然な点があるかもしれません」

中村も頷いた。「俺は10年前の事件の裁判記録を詳しく調べよう。檜山検事の不自然な判断の証拠が見つかるかもしれない」

さくらは決意を新たにした。「私は10年前の事件の関係者への聞き込みを担当します。時間を最大限に活用して、できるだけ多くの情報を集めます」

三人は手分けして調査を開始した。さくらは時間管理のスキルを駆使し、効率的に聞き込みを進めた。

数日後、彼らの努力が実を結び始めた。高橋が興奮気味に報告した。

「さくら、中村さん、山本議員の政治資金収支報告書に不自然な点がありました。毎年、匿名の団体から多額の寄付が入っているんです」

中村も新たな発見を報告した。「俺も重要なものを見つけた。10年前の裁判で、檜山検事が重要な証拠を意図的に提出しなかった形跡がある」

さくらも聞き込みの結果を共有した。「私も驚くべき証言を得ました。10年前の事件の証人の一人が、檜山検事から証言を変えるよう圧力をかけられたと話しています」

三人は、これらの情報をつなぎ合わせた。檜山検事と山本議員の癒着、そして現在の殺人事件との関連性が、徐々に明らかになってきたのだ。

さくらは興奮を抑えきれなかった。「これで、檜山検事の過去と動機がはっきりしてきました。でも、まだ決定的な証拠には欠けています」

中村が同意した。「その通りだ。我々は時間との戦いだ。檜山検事たちが証拠隠滅を図る前に、決定的な証拠を見つけなければならない」

高橋が提案した。「匿名の団体からの寄付...これを追跡調査してみてはどうでしょうか?」

さくらは頷いた。「それは良いアイデアです。高橋くん、その調査を進めてください。私は10年前の事件の証人たちへの再聞き込みを行います」

中村も決意を新たにした。「俺は檜山検事の過去の案件をさらに詳しく調べよう。他にも不自然な判断があったかもしれない」

三人は再び手分けして調査を開始した。さくらは時間管理をさらに徹底し、睡眠時間を確保しつつも、最大限の効率で調査を進めた。

そんな中、思わぬ協力者が現れた。前田真琴だった。

前田は密かにさくらに接触してきた。「橘さん、私...もう黙っていられません。山本議員と檜山検事の関係、そして今回の殺人事件について、知っていることがあります」

さくらは驚きつつも、冷静さを保った。「前田さん、話してもらえますか?」

前田は震える声で話し始めた。「実は...10年前の汚職事件の際、山本議員は檜山検事に多額の賄賂を渡していました。そして、その後も癒着関係は続いていたんです」

さくらは慎重に聞き取りを進めた。「では、今回の殺人事件との関連は?」

前田は顔を曇らせた。「佐藤さんと田中さんは、山本議員と檜山検事の癒着関係を示す証拠を掴んでいたんです。だから...」

さくらは息を呑んだ。「だから、殺されたんですね」

前田は頷いた。「はい。でも、私には直接的な証拠がありません。ただ、山本議員の秘書として見聞きしたことを...」

さくらは前田の証言を慎重に記録した。これは大きな前進だったが、まだ決定的な証拠とは言えなかった。

さくらは中村と高橋に前田の証言を報告した。三人は新たな情報をもとに、さらなる調査の方向性を検討した。

「時間との戦いです」さくらは決意を新たにした。「前田さんの証言を裏付ける証拠を見つけなければなりません」

中村が提案した。「山本議員のスケジュール、特に10年前の汚職事件の前後の動きを調べてみよう。檜山検事との接触があった可能性が高い」

高橋も意見を出した。「匿名の寄付団体の追跡も継続します。それと並行して、佐藤さんと田中さんが発見したという証拠の行方も探ってみます」

さくらは頷いた。「私は前田さんからさらに詳しい情報を聞き出すことと、10年前の事件の関係者への再聞き込みを続けます」

三人は再び調査に没頭した。さくらは時間管理のスキルを最大限に活用し、効率的に情報を集めていった。

数日後、彼らの努力が実を結び始めた。高橋が重要な発見を報告した。

「匿名の寄付団体、その正体が分かりました。檜山検事の実兄が経営する会社のダミー法人だったんです」

中村も新たな情報を共有した。「10年前の汚職事件の直前、山本議員と檜山検事が密会していた形跡を見つけた。場所は、檜山検事の別荘だ」

さくらも聞き込みの結果を報告した。「10年前の事件の関係者の一人が、山本議員から口止め料を受け取っていたことを認めました」

これらの情報を総合すると、檜山検事と山本議員の癒着関係がより明確になった。そして、それが今回の殺人事件にも繋がっている可能性が高まった。

さくらは興奮を抑えきれなかった。「私たち、ついに真相に近づいています。でも、まだ決定的な証拠が...」

その時、高橋の携帯電話が鳴った。彼は電話を取ると、驚きの表情を浮かべた。

「さくら、中村さん、大変です!前田さんが...前田さんが姿を消したそうです!」

三人は愕然とした。前田の失踪は、彼女の証言の重要性を裏付けるものだった。同時に、彼女の身の安全も懸念された。

さくらは決意を固めた。「私たちは、時間との戦いです。前田さんを見つけ出し、彼女の安全を確保しなければなりません。そして、それと同時に決定的な証拠も見つけなければ」

中村と高橋も頷いた。三人は、これまで以上に時間管理を意識しながら、最後の追い込みをかけることを決意した。

真相まであと一歩。さくらたちの時間管理スキルが、この難事件を解決に導くのか。最後の戦いが始まろうとしていた。

時間管理術まとめ:

  1. 優先順位の明確化:重要度と緊急度を考慮し、タスクに優先順位をつける。

  2. 並行作業の実施:複数の調査を同時進行させ、時間を最大限に活用する。

  3. 時間の細分化:大きなタスクを小さな単位に分け、効率的に進める。

  4. チームワークの活用:メンバーの強みを活かし、作業を分担して時間を有効利用する。

  5. 柔軟な時間管理:新たな情報や状況の変化に応じて、計画を柔軟に調整する。

登場人物おさらい:

  1. 橘さくら(18歳、女性):主人公の新米女性刑事。時間管理スキルを駆使して捜査を進める。

  2. 中村刑事(45歳、男性):さくらの先輩刑事。経験を活かして捜査の方向性を示す。

  3. 高橋健太(18歳、男性):さくらの同期刑事。情報収集と分析に長けている。

  4. 檜山剛志(55歳、男性):検事。過去の汚職事件との関連が明らかになる。

  5. 山本議員(60歳、男性):政治家。檜山検事との癒着が疑われる。

  6. 前田真琴(40歳、女性):山本議員の秘書。重要な証言をするが、失踪する。

さくらたちは、時間との戦いの中で真相に迫ろうとしていた。彼らの時間管理スキルと協力が、この複雑な事件の解決への鍵となるのか。

第9話終わり
次は第10話

#創作大賞2025   #ミステリー小説部門

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