アラフィフの主婦が言語学のコミュニティに入ったら数学を勉強することになった話

ゆる言語学ラジオというYouTubeチャンネルをご存知だろうか。この記事はゆる言語学ラジオ非公式アドベントカレンダー用に書いているので、もし知らずにこの記事を読んでいる方がいたら是非見てほしい。

↓おすすめの助数詞シリーズ

    ↓面白記事がたくさん


タイトルのとおり、私は40代後半の主婦である。大学を出てはいるが専攻とは関係のない職に就き、体調を崩して辞め今はスーパーでパートをしている。言語学どころか学問とは全く無縁の生活だ。平穏だが少し単調な暮らしの中、ゆる言語学ラジオがYouTubeのおすすめに登場すると私はすぐに夢中になり吸い寄せられるように有料のサポーターコミュニティに登録した。ここではそのコミュニティに参加して私にどんなことが起きたのか書こうと思う。

自分を取り戻す

サポーターコミュニティに入ってさまざまな世代や立場の人たちの議論を見て、時には自分も参加して大学生の頃のある感覚を思い出した。それは「自分の考えをしっかり持っていないと斬られる」感覚である。

私は子供の頃から一般的な女子が好むようなものにあまり興味を示さず浮きがちであった。それを自覚していたので、会話の際に「普通の女子はこう答えるであろう」という無難な受け答えをするスキルをいつのまにか身につけた。そしてそれで小中高とうまくやってきた。

ところが大学に入るとそれまでとは全く違っていた。大学では私以上に「普通」からかけ離れた人が多く、皆自由に自己主張をしていて受け入れられていた。新しい友人達は私が無難なことを適当に言うとそこに切り込んでくるのである。
例えばこんな感じである。「クリスマスに彼氏いなくて寂しい」などと、自分はそんな事1ミリも思ってもいないけど女子の話題として普通であろうというようなことを言ってしまうと、「どうして?クリスマスだけ?そもそもなんで彼氏が欲しいの?」と話が始まり、私がテキトーに喋っていたことが露呈してしまうのである。そこでは周りに合わせる必要など全くなかったし、合わせるべき「普通」も存在しなかった。

自分の考えを言っていい、むしろ言わなければならない環境があるということに当時の私は目から鱗が落ち生まれ変わったような気分になった。思考を深めて自分の意見を言うということは責任が伴うことでもあり楽なばかりではなかったが、それなりに楽しい学生生活を送った。

その後就職すると再び「常識」の波に飲まれその空気をすっかり忘れてしまっていた。しかしサポーターコミュニティに入ると当時の自由な空気と自身の発言に責任を持つ感覚がはっきりと蘇ってきたのである。

統計に出会う

そのようにして私は自分を取り戻したような気持ちになりコミュニティでの交流を楽しんでいた。コミュニティ内では有志がクイズを出し合って楽しんでいるのだが、ある時一つの気になるクイズに出会った。それは統計に関する問題であった。


Q「ある研究では、高圧送電線の300メートル以内に25年間以上居住している全員を調査し、800を超える病気の確率が統計的に有意に増加するかを探した。この研究では、小児白血病の発生が送電線の近くに居住していた人で4倍高くなっていることを見出し、政府による対応を呼び掛けた。
さて、このような訴えを受けて送電線の撤去を行うことは、適切な判断と言えるのか?」
コミュニティサーバ内クイズより

詳細は省くが正解を言うと小児白血病と送電線は関係なかったのである。

このことに私は大変驚いた。データはまちがってないというのに一体どういう事か。統計知らないとマズいんじゃない?統計の勉強をしたい!と思った。

これまでの自分だったらそうは思っても実際に勉強しようとまではしなかっただろう。恥ずかしながら子どもの時からめんどくさがりで三日坊主になりがちだった。それに数学どころか掛け算九九すら全部言えるか危うい今の自分に果たして統計が理解できるだろうか?その私の背中を押したのはサポーターコミュニティの雰囲気だった。コミュニティの面々はやたらと勉強していた。とにかく貪欲に勉強していた。学生はもちろん、社会人も本をたくさん読み学んでいた。私より明らかに頭が良さそうな人たちがこんなに勉強しているのにアホな私が勉強しなくてよいということがあろうか?何より皆とても楽しそうに学んでいるのである。

書店で統計の本を買うととてもワクワクした気持ちになった。小学校の新学期に新しい教科書をもらった時のような気持ちだ。早速本を開いて勉強を始めた。本だけでは分からないところはYouTubeチャンネル「予備校のノリで学ぶ大学の数学・物理」の助けを借りて理解を進めていった。

       ありがとう、ヨビノリさん

前述のクイズのカラクリもなるほど、そういうことか、と納得できる。しかし、勉強を進めていくとおもしろいなあ、と思う一方で高校の数学を理解していないと進めないことがでてきた。そうだ、もういっそのこと高校の数学全部やり直そう!そう決心するのにもう躊躇はなかった。


(クイズのネタバレ)

道具を手に入れる

数学の勉強は純粋に楽しかった。数学Ⅰから始め今は数学Ⅲをやっている。ところで、サポーターコミュニティには数学スレッドがあり数学についての話をしたり問題を出し合ったりしている。多くは私には難しいものだったが徐々に解けるものも出てきた。楽しむための道具を着実に手に入れている実感があった。
とはいえ歳のせいか記憶力は相当落ちており、三日も空けると公式も解き方も忘れてしまう。老化の現実を痛感しながらもう一度問題を解く。すると気づいた。

これ、一生楽しめるのでは?

忘れたら忘れたで同じ問題を何度も楽しめておトクではないか。受験するわけでもなし、効率が悪くてもなんの不都合もない。もちろん忘れなければその先へ進めて楽しい。ずっとやっていられる。老化バンザイではないか。人生の残りが半分を切った今、新たな楽しみができたのである。

現在の気持ちとしては、今後もう少し勉強を進めて大学レベルの数学までやりたいと思っている。前述の数学スレッドの人たちがすごく楽しそうに数学の話をしているので、そんなに楽しいのなら私もその景色を見たいと思うのだ。果たしてどこまで理解できるかは分からないが、時間は沢山あるし教えてくれそうな仲間もいるのでたとえ登頂することはできなくても道中きっと楽しいだろう。

以上が私が言語学のコミュニティに入ったら数学をやることになった顛末だ。私にとってゆる言語学ラジオは一つのYouTubeチャンネル以上の価値があった。堀元、水野両氏を始めスタッフの方々、いつも何かしら反応してくれるサポーターの方々に心から感謝したい。

これを読んで、サポーターコミュニティに入りたいけどそんな高尚な感じなの?ためらっちゃうわ、と思った方へ
アホな話もいっぱいしてるよ!おもしろいよ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?