読書記録 THE NIX

「母上は知事を石で襲いました」
「冗談でしょ」

本を開いてカバーの裏にそう書かれていた時、僕はもうこの本を読むことを決めていた

結論から言うと大変だった。何しろこの本は600ページ近くあるし、やたら長いし、心がずきずきするし、妙にエルフの出てくるゲーム場面が長いのだ

けれど面白い本だった
あらすじは、見出しの二つのセリフでわかるだろう。
母親がとんでもない行動に出て、息子はそれを追っかける羽目になる。

「君ね、自力で有名になる人間なんて、連続殺人鬼だけだよ」

自分のルーツというのは、この国、日本では、あまり複雑ではないのかもしれない。
この国で生まれてこの地域で育って、ここにいます。けれど母親はどうだろう?父親は?そもそも父母はほんとに僕と血がつながってる?おばあちゃんおじいちゃんはどう?その両親は?
ここらへんになると、結構面白い話が出てきたりする

僕たちは、僕たちの知らないことで父母ができているということを知ると、動揺したりする。
生まれた時から僕たちを産む父母なんかじゃないことは、わかっているはずなのに。
自分以外の他人を理解するということ、推し量ってみること、その過去を探ることは、危険で、時に自分を傷つけ、相手も傷つける

それでも僕たちがルーツについての話を愛するのは、そこに自分の影を見るからじゃないか、と思ったりする。たとえば海辺の町で祖先が生きていたと知る前と知った後では、きっと海に対する態度が変わるはずだ。

全てが数字で表されていく世界、アメリカ。日本もきっとそうだろう。

けれどディテールを見ると、どうしようもないあいまいさで世界ができていることに気づく。

私たちは時に幻覚を見るし、夢を見るし、生きるし、死ぬ。
主義のために戦うし、命が一番大事だと言ってみたりする。

どんな過去があろうとも、それはすべて自分であり、そこからは逃げられない。
逃げる必要はない。

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