見出し画像

CASE 4 人気漫画『ワンピース』のナミを苦しめた感染症について、感染症非専門医の私と名医チョッパーが熱く語ってみた

本日の座長(学会発表の時などの司会進行役)はわたくし予防医Haruくんです。コメンテーター(聴衆に説得力を与える専門家のこと)はなんとワンピースの麦わらの一味の船医であるトニートニー・チョッパー先生です!
素晴らしいディスカッションができればと思います!



Haruくん
: ではチョッパー先生、本日は遠方からお越しくださいましてありがとうございます!ワンピースでは大活躍ですね!

チョッパー: ば、ばかやろー!そんなに褒められても嬉しくねえよ、このヤローが!(〃ω〃) ていうかお前誰だよ!?

Haruくん:ドラム島でナミさんの感染症の治療に当たった時のお話を聞かせて下さい。あれは何の病気だったんですかね?

チョッパー: あれはケスチアって言って、ある虫に刺されると微生物が感染して起こる病気なんだ!ドクトリーヌが持っていた抗菌薬(抗生物質)が効くんだよ!

Haruくん: では早速症例を提示していきましょう!

『ワンピース』小田栄一郎/集英社より


Case 4  ナミ(ワンピース)診断: ケスチア熱(≒ツツガムシ病(リケッチア感染症))


【症例】18歳女性

【主訴】発熱 全身倦怠感(だるい)

【現病歴】
〈背景〉
生来(生まれた時から)健康体で過ごす。元"魚人海賊団"の一味であるが、紆余曲折あり現在は"麦わらの一味"のメンバーで航海士である。(物語は大分はしょりましたd( ̄  ̄))
〈発症エピソード〉
リトルガーデンでの戦いの後、お腹を出して仲間とせんべいパーティをしていた時に腹に虫に刺された。(原作漫画では確認できませんが、アニメではナミが虫に刺されたシーンを確認できます)。
その後船の中で全身倦怠感40度の発熱が出現し、持続した。
3日後には吹雪で雪が積もっているドラム島へ到着した。その後も熱は徐々に上がり42度まで上がった
命の危険が高くすぐに島で医師を探す必要があった。山の上に139歳の女性医師がいるとの情報が入り、厳しい吹雪にも関わらず多くの敵と戦いながらルフィに担がれ、ようやくドクターくれはの家へ運ばれた。

【既往歴】
特記すべき既往なし

【バイタルサイン】(いつもながら想像です)
体温 41度(非常に高熱です) 血圧108/68mmHg   脈拍 80回/分

【理学所見】
視診(医師の診察の一つで実際の目で見て所見を確認することです)
腹部に虫刺されの跡あり(後に述べますが、教科書的にも刺し口という表現が使われます)

漫画『ワンピース』小田栄一郎/集英社 61 P 3,4コマ目より

【検査所見】(いつもながら想像です)
血液検査 
  血小板  4万 /μl
    →血液を固める成分 通常は15万/μl以上ですので極端に低下しています
  CRP   18 mg/dl 
    →炎症マーカーです 通常0.3以下ですので極端に増加しています
  AST 122 U/L , ALT 118 U/L ,ALT 699 U/L
    →肝機能障害を認めます
尿検査 
蛋白尿陽性尿潜血陽性
    →通常、尿には蛋白質も血液も出てきませんので異常所見です
リケッチア抗体検査
→上昇します(漫画ではナミの治療にあたっているチョッパーとドクターくれはとの対話の中で、チョッパーが「抗体が出てるよ」と発言しています。)

【診断】
#ケスチア熱 (≒ツツガムシ病(リケッチア感染症))
  発熱虫刺されのエピソード黒色痂皮(黒いかさぶた)を伴う。また、肝機能障害、尿蛋白、尿潜血が陽性であったことからケスチア熱(≒ツツガムシ病)と判断した。治療方針として、抗菌薬(抗生物質)を数日投与し、治療開始翌日から解熱し数日後に完治した。



ディスカッション

Haruくん: チョッパー先生、いかがでしたでしょうか。僕”ケスチア”って調べてみたんですけど、現実世界でいうツツガムシ病のことなんでしょうかね?リケッチア感染症の一つですが、、、。
僕には「リケッチア」を少しもじった名前になってるような気がします。

チョッパー: 確かに、病気的にもかなり似ているしそれで間違いないと思うぞ。ちなみにリケッチアは細胞内に生息するある一定の微生物のくくりで、ツツガムシはダニのことなんだ!ダニと言っても家にいるようなものじゃなくて、森とか林とか自然の中に生息しているものだよ。

Haruくん: 漫画の中で病気の記述があったので、僕の世界の教科書の記述と比較してみましょうかね?

Haruくん自作(参考資料 イヤーノート 国立感染症研究所HP)

チョッパー: なるほど、若干違う気がするけど、この病気のキーワードは3つあるんだ! Haruくん、なんだと思う?

Haruくん : ’発熱’'皮疹''刺し口'ですね!?刺し口は本当はこんな感じ。

国立感染症研究所HPより

チョッパー: そうだな!この3つは共通してそうだから間違いなさそうだな!
ちなみに肝機能障害とかも出るし、普通はおしっこに出てこない蛋白がでたりもするし、血小板っていう血を固める成分が少なくなったりするとちょっとぶつけただけで出血しやすくなったりするんだ。

Haruくん: 医師国家試験直前の医学生必見ですね!

チョッパー: ちなみにツツガムシってこんな感じらしいぞ

東京都福祉保健局HPより

Haruくん: いやー、きもいですねぇ:(;゙゚'ω゚'):
ツツガムシ病は僕も研修医時代に経験がありますが、抗菌薬がめちゃくちゃ効きました!教科書どおりの症例でしたね!一回経験すれば二度と忘れない感染症かと思います。


教訓 チョッパーと私からのメッセージ

・自然いっぱいの場所で遊ぶ時は、虫刺され(特にダニ)に注意
・インフルエンザっぽい症状が出る
・ただの風邪だと思って油断してると死ぬことがある
・発熱外来に関わっている医療者は頭の片隅に入れておくべき


次回予告

今回は対話形式でしたがいかがだったでしょうか?
次回は徳川家康の糖尿病について頑張ってみたいと思います!

お楽しみに!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?