ケッショウ ーそれを食べれば『なれる』ー#1

あらすじ

我々の世界からそう遠くはないファンタジーな並行世界。
ここでは魔法や特技が使える人間と、そうでない人間の両方が混在し、共生して社会を営んでいる。

そんな世界に生きる一人の男、『トルバ』は、『勇者』になるための試験を受けに行くものの、『特技も呪文も転生経験』もないただの人間だったので、会場にすら立ち入ることができずに不合格にされてしまう。

勇者になりたいと強く願っていたトルバは、未だ勇者になれていない現状を歯がゆく思いながら、『何でも屋』という最近流行りの企業を経営して生活していた。

そんなある日、トルバの元に正体不明の人物、『クデラ』が現れてーー

人が強い想いを抱く時、そこに新たな神話が生まれるーー


寒い 寒い 寒い

トルバ「……わかってた」

寒い 寒い 寒い

トルバ「募集要項を守っていないのに、受かるはずなんてないんだ」

寒い 寒い 寒い

トルバ「…………でも!!」

ドサッ

しんしんと雪が降り積もる銀世界。

一人の少年が膝から崩れ落ち、地面に自身の拳を打ち付ける。

トルバ「諦め……きれなかった!」

この少年の名はトルバ。
少し前まで勇者を目指しているだけの、ただの快活な大学生であった。
彼の在籍していた大学は英知大学。

決してHなことを教えている大学ではない。
この辺りではとても有名な難関大学だ。
入れるだけでもとても優秀である。

このトルバという男、幼い頃から今まで職業:勇者を目指して頑張ってきた人物であるが、
『特技 呪文 転生経験』のどれも持たなかったがために、勇者の採用試験を受けることすら許されず、こうして来た道を引き返している。

トルバ「……俺、これからどうすれば……」

夢とは時には希望を与え、またある時には絶望を与えてくる。


これでいいーー

こうでもしなければ次の一歩は踏み出せない。

大丈夫、君はそのままで充分に特別な存在だ。

君が今持っている感情は新たな飛躍を生みうる。

それでいいのだ、それでーー


ーー先輩! 先輩! 朝ですよ!

トルバ「うーん、寒いよお……」

というのは一月前の話。

イロハ「あっ! 先輩またうなされてる! どうせまた変な夢でも見てるんですね!
先輩! 早く起きてー!」

トルバ「うーん……」

トルバは起こしに来てくれた後輩のイロハを抱き締める。

イロハ「ひゃっ/// 私を湯たんぽ代わりにしないでください!」

イロハは照れながらトルバを引き剥がすが、満更でもないような顔をしている。

トルバ「H(体力)とC(知力)だけなら誰にも負けないのに……」

イロハ「もう……またあの時の夢見てるんですかー? 早く起きてー」

トルバの顔をイロハがぺちぺちと叩く。

このイロハという女の子はトルバの高校からの後輩で、トルバの恋人(本人は強く否定)である。
イロハとトルバの仲は良好で、トルバが大学を出て自営業をするとなると、すぐにイロハは手伝うと申し出て同棲し始めた。

それでも彼女はトルバを彼氏ではないと断言する。

トルバ「ん? んーー、ここはどこ? あなたは面接官?」

イロハ「違いますよ! あなたの! 後輩の! イロハですよ!」

トルバ「え? イロハ? あれ?」

トルバは朝日が微量に差し込む薄暗い部屋を見回す。
朝が弱すぎて周囲の状況をいちいち確認しないと、夢の中から現実へと帰還できないのだ。

トルバ「ああ、そっか……夢か……」

イロハ「また、あの時の夢を?」

トルバが魘されてから起きると、イロハは大抵心配そうにトルバを見つめてくる。
イロハはネコと人間の混血族、いわゆる亜人で猫の耳と尻尾があるのだが、この時はいつも耳が垂れ、尻尾も元気を失くしている。
イロハの優しさが現れるこの光景だが、トルバにとっては自己嫌悪と彼女のその浮かない表情が胸に突き刺さる地獄の光景だ。

トルバ「はは……もう一ヶ月たったのに、全然未練捨てきれてないや……」

イロハ「先輩…………誰が何と言おうと先輩は勇者にふさわしいと思いま」



トルバ「いや、そういうの良いから」

イロハ「せっかくフォローしたのに!」

寝起きのトルバはそれなりに不機嫌で無粋だ。

トルバ「はあ……顔洗うか」

イロハ「ご飯もうできてるので、食卓に並べておきますね」

イロハはそれでもいつもと変わらない笑顔でトルバに接する。

トルバ「ありがとう……えへへ」

トルバはベッドから出ると、顔を洗うために廊下を歩き、洗面台で歩みを止める。

トルバ「眠い……さっさと目覚まそ」

蛇口をひねって水を出し、顔につけるのを繰り返す。

トルバ「……さっぱりした。 食前だけど歯磨きもしておくか」

シャカシャカシャカ……

何てことのない、歯ブラシが音を立てるだけの空間。

イロハ「せんぱーい、今日は下にお客さん来ますか?」

そこにイロハの声が響く。
一人でいる時よりも心が明るくなるのは何故だろうか。

トルバ「いや、今日は『何でも屋』起業したばっかだし、新聞とかで情報仕入れて、自分から人の役に立つサービスを提供しに行かなきゃ。 だから、多分今日はここにはお客さん来ないよ」

イロハ「分かりました。 じゃあ掃除はしなくて良いんですね」

トルバ「うん、ありがとう、手伝ってくれて」

あの採用試験の後、トルバは世間で流行っている『何でも屋』という企業に目をつけ、この企業を自身で経営することにした。

経営に必要なお金、知識、手続き……色々なものを集めてようやく開業までこぎつけた。
とても試験に落ちて意気消沈の人間がやることとは思えない。

さらに、トルバが頑張って二階建ての建物を購入したおかげで、下は職場、上は普段生活する部屋として使い、階段を降りればすぐに事務所へいける。

引っ越しをする時に後輩のイロハが手伝ってくれたおかげで部屋もきれいだ。

トルバはそんな可愛い後輩の存在に感謝するとともに、一緒に住むことができて本当に嬉しいし頼もしいと思った。

トルバ「そろそろご飯食べようか」

俺はリビングにいるイロハに声をかける。

イロハ「そうですね、そろそろ食べましょうか♪︎」

トルバとイロハはリビングの食卓に座った。

トルバ・イロハ「いただきます!」

トルバは挨拶もほどほどにご飯を食べ始めるが、途中であることに気がつく。

トルバ「イロハ、もしかしてこれ、学食のメニュー?」

今日の朝ご飯は、トルバが大学時代に食べていた学食にそっくりだった。

イロハ「あ、気づきました? 英智大の学食再現して見たんです♪美味しいですか?」

トルバ「うん、美味しい。 これを食べてると、リーグスのことを思い出す」

イロハ「リーグス先輩のことですか?」

ほのぼのとしたトルバの顔に影が差す。

トルバ「うん。 リーグスは特別な才能があって、今は勇者をやってるんだ。 だから今は、気まずくて会えてない」

イロハ「ええ!? そうだったんですか?」

リーグスとは大学時代のトルバの親友。

トルバとは違ってあらゆる魔法の『裏』を見て、それを反転させて使えるスキルを使って勇者の採用試験を突破し、活躍している。

ちなみにスキルは先天的なものなので、生まれた時に特に何も持ち合わせていなかったトルバには習得できない。

『レベル1の俺がー!』とか、『ヒキニートだった俺がー!』とか、『雑魚スキル極めたらー!』とかいうフォローはトルバには回ってこなかったようである。

トルバ「うん、イロハとは大学卒業した後、しばらく会えてなかったから言えなかった」

イロハ「そうだったんですね……」

イロハが困ったような顔をする。
それはそうだろう、こんな気まずい以外の何物でもない話、聞いても何も良いことはない。

トルバ「あいつ、今頃どうしてるかな……っと、ご馳走様。 ちょっと新聞取りに行ってくる」

イロハ「ん、いってらっひゃい……」

イロハがモグモグしながら何か言っている。
それだけで何だか癒されるような、得したような気分になるトルバであった。

そしてトルバは玄関へ向かうとドアを開け、外に出ようとした。

ところが

???「どうもー! 初めましてー。 私『クデラ』と申しますー! ちょっとお時間頂けるでしょうかーー!?」



目の前に何かいた。

トルバ「……あんた、誰だ? それに、色々おかしいぞ?」

クデラ「へ?」

ーーそこには不気味な男がいた。

見るからに重たそうな、鮮やかな藍色の鎧?のようなものを身に纏っていて、顔はマスクのようなものに覆われ、そのマスクには文字のXを示すかのように青いラインが入っている。

パッと見ただけでは人間なのかさえもわからず、声を聞かなければ性別さえもわからない。

そんな人物が俺に、元気よく挨拶をして話しかけてきた。

クデラ「……あ、武装したままだったわ」

トルバ「え?」

クデラ「あ、こっちの話です。 ちょいと待っててください」

男はそう言うと、左手についている変てこな"機械"から何かを分離させ、機械的な二足歩行の亀のような姿から、普通の人間の風貌に一瞬で変化した。

トルバ「…あんた、マジで何者なんだよ?」

クデラ「ああ、気にしなくて結構。 私はあくまでも一般人だからね。 アヤシクナイヨ」

トルバ「んー、まあいいか…………」

もしかしたら知らない土地の、知らない武装やファッションの類か何かなのかもしれないし。

俺はひとまず、この男が何故玄関前にいたのかについて質問してみることにした。
郵送とか自治体の連絡とかだったら、このまま無視するわけにはいかないしね。

トルバ「……それで、うちに何か用か?」

クデラ「あー、実はですねー、あなただけに売りたい商品がございまして」

トルバ「あっ、すみません。 そういうの間に合ってるんで」

最悪だ。
どうやらセールスだったようだ。

たまにいるんだよなぁ……こういう人。
正直言って迷惑だから止めて欲しい。
ましてやこういう反応せざるを得ない状況に持っていくなんてやり方がさいて

クデラ「ああ、いいですいいです。 そういう反応間に合ってるんで」

トルバ(こっちの台詞使われた!?)

クデラ「あなたにぴったりの商品がこちらになりまーす!」

そう言うとこのクデラと名乗る男は、ゴツゴツとした結晶のようなものを俺に差し出してきた。

ひどいもんだ。
こっちはそっちの話なんて聞きたくもないのに、強制的に商談に持ち込むなんて……
やだなー、どうせ逃げても、あの変な武装着た状態で追っかけられて、コテンパンにされでもしたら……すごく面倒くさい。
適当な理由見つけて断るためにも、一応話には応じておくか。

俺はクデラが差し出してきたこの物体を、少し顔を前に出して興味があるかのように覗き見る。

トルバ「何だこれ? 結晶?」

クデラ「はい、安心安全の結晶でございます!」

トルバ「何かその言い方逆に怪しいんだけど!?」

クデラ「気にしないでくださいよ。 あ、でも〜、こちらの結晶はあなたにしか使えない、とてもクセのある一品になっております!」

トルバ「ええ、何それ? 俺に特別なところなんか何もないし……俺に扱えるんなら誰でも扱えると思うけど……」

クデラ「いえ、あなたには一つだけ、特別なところがあります」

トルバ「え?何かあるの?」

クデラ「ええ、ありますとも。 何といったって、あなたはこの世界の、いわゆる『主人公』なんですから」

トルバ「?主人、公?」

しばらく話を聞いてやっていたら、何やら漫画とかでしか聞いたことがないような話が飛び出してきた。
この人ドヤ顔で何を言いだしてるんだ……?

クデラ「ええ。 人がいる世界にはそれぞれ、その世界におけるキーパーソンが存在します。 それが主人公という奴です。 あなた、『転生者』なんていう人を聞いたことがあるでしょう?」

トルバ「ああ、あるぞ」

クデラ「ああいう類いの人たちはたいてい、前世で主人公に選ばれていることが多いんですよ。 例外もいるけど」

トルバ「そ、そうだったんだ……」

『前世』だっけか。そんなものを持っている人がたまに存在する。

『転生者』って奴だ。

でも、『転生者』のこととかってあんまり知らなかった。

珍しいわけだ。

『主人公』なんてありがたい肩書きがもらえる人なんて限られてる。
ましてやこの世界に転生するなんていうのは、もっと低い確率だよなー。

……っていかんいかん。セールスの話なんて鵜呑みにしてたらろくなことがない。

クデラ「んで、主人公になると何故転生できるのかってところが気になると思うんですけどー、主人公になると変な補正がかかって、一般人より運が高くなったり、特殊能力に恵まれたりするわけなんですね? まあ、俗に言う『主人公補正』ってやつ?」

トルバ「は、はあ……でも、俺は何にも恵まれてないぞ?」

うちの家庭は一般家庭だし、俺転生者でも何でもないし、これといった能力もないし……

何だか悲しくなってくるな……

クデラ「そうです! あなたはこの世界の主人公なのに、転生してない! 親も一般家庭! 特技スキル呪文一切なし!」

トルバ「うるさいよ! そしてやたら詳しい!?」

追い打ちをかけてくるんだけどこの人!

クデラ「おまけにあなたが持っている能力といえば、全て努力によって成り立っているものばかり! いや努力は主人公だってしますけど! 何というか主人公とは違う方向性な気がしません!?
それってあれですよね!?
レベルを上げて物理で無双とかいうドラ◯エ5みたいな……あれ? あなたもしかしてキラー◯シン?」

トルバ「やかましい!お前人の地雷踏みすぎだろ!」

何だこの失礼な人!!
そして気持ち悪い!!
俺の個人情報ってもうこの人に筒抜けなのかな……
俺はこの謎の人物の得体の知れない恐ろしさにため息が出るばかりだ。

クデラ「失敬。 まあ、そんな『矛盾』を抱えていらっしゃるあなたに! この結晶をお売りしたいというわけなんですよ」

トルバ「ええ……いったいどういう商品なんだ?」

正直貶されて嫌な気分でしかないんだけど……何でそんな気持ちにさせておいて商品を売ろうと思うのかな?
そんな疑念と不満のこもった目が現在突き刺さっているはずのクデラは、特に気に止める様子も見せずにペラペラと商談を進めていく。

クデラ「えー、こちらの結晶、食べると特殊な能力が開花する」

トルバ「おお!」

クデラ「かも!」

ズコーーー!

トルバ「何だよそれ!確証ないのかよ!?」

さっきまであんなに自信があるような様子だったというのに、クデラは急に説得力のない文言を口にする。

クデラ「いやー、実はこの商品、非常に秘めたるエネルギーが高くてですねー、もしこれに衝撃を与えて割ろうもんなら、世界がグニャングニャンになるレベルのエネルギーが漏れ出すんですよ」

トルバ「危険すぎるでしょそれ!? それ噛み砕いたらぜっっったい俺グニャングニャンになるよね!?」

それもう人に食べさせる以前に非売品だろ!?
ああやだやだ!
ちょっと期待してしまった自分が恥ずかしい!

クデラ「あー、大丈夫ですよー。 だって、あなたこの結晶、ありとあらゆる『矛盾』を作り出すエネルギーの塊なんですよ? あなたみたいな主人公なのに転生もしてない以下略の矛盾野郎が食べたところで、そんなに変わんないでしょ(笑)」

トルバ「変わるよ!! と、とにかく、俺はそんなおっかねえもん食べないぞ!」

俺は強くクデラのセールスをお断りして、家の扉のドアノブに手をかけた。

クデラ「ほう、本当に良いのですか? あなたが『特別』になれるチャンスなんですよ? この結晶は矛盾を発生させる力の塊ですからねー。 あなたのような人でも『特技』や『呪文』が手に入る、いわばチャンスだと思うんですが?」

トルバ「そ、そうかもしれないけど、リスクが高すぎるだろ?」

クデラ「そんなことを気にしている場合ですか?(痛いところ突かれた……!) あなたのご友人は勇者になって、もうあと一歩で魔王を倒すところまで言ってますよ?」

トルバ「えっ!? あいつが魔王と!?」

クデラ「ええ、新聞に書いてありました。 ほら、あなたの家に届いたこれに」

クデラは俺に新聞を手渡してきた。確かに一面にでかでかとそんな内容の記事が書いてある。

クデラ「どうします? あなたのご友人はここまで活躍していますよ? このままだと変に気を遣われて、友達としての関係が破綻せざるを得ないと思いますが」

トルバ「そ、そんなの嫌だ!」

クデラ「それに、そもそもあなた、このまま置いてけぼりで良いんですか? 同じ高校、大学と進学してきた仲間なのに?」

トルバ「…………」

クデラ「さあ、どうします? 勇者という職業にもう一度命を賭ける覚悟が、あなたにはありますか?」



ーーそうかもしれない。

どうしても叶えたい願いが、俺にはある。

"あの人"の言ってくれたことが確かならば。

"あの人"に追いつくためなら……そして、親友に追いつくためなら……

『いや、もう少し疑うべきだ』

以前の俺ならそう思って願い下げするかもしれないけど……

やれ……やるんだ……

俺自身の絶望と孤独が、悪魔の囁きとなって俺に語りかけてくる。

トルバ「……俺、諦めてた。 自分は特技も呪文もない。 転生だなんて運にも恵まれてない。でも、夢を捨てきれなくて、面接にまで落ちて、ようやく現実を見て起業した」

クデラ「うんうん、悲しいね」

クデラはどこから取り出したのかもわからないポップコーンを貪りながら、そんなことどうでもいいと言わんばかりにヘラヘラ笑っている。

トルバ「でも、やっぱり俺は諦めきれない。なれることならなりたい。 いや、それさえも超えたい……」

クデラ「うんうん」

トルバ「俺、命賭けるよ。 勇者に必須なのは勇気だ。 なら、ここで勇気を出して……俺の望む世界を、この手で切り開く!」

クデラ「フフ……そうですか」

クデラはいい返事を得て満足したようで、ニコニコしながら俺に結晶を渡す。

クデラ「お代はいりませんよ。 これは産廃……アッブネェ、お試し用のやつですから」

トルバ「産廃なのかよ……まあいいや、グニャングニャンだか何だか知らないけど、やってやるよ」

トルバはそう言うなり、結晶を飲み込んだ。



トルバ「ああ~~!? 骨がホントにグニャングニャンになる~~!?」

目の前で激しく光が点滅するかのような吐き気を催す感覚と、雷が貫いたかのような激しい痛みが、俺の体の中を駆け抜ける。

クデラ「あーあ、やっぱそうなるか。 さようならトルバ君、君のおかげで世界と私は救われたよ」

トルバ「あ、治った」

クデラ「おおマジか!? その状態からでも助かることってあるんだね〜! んじゃ、私は用が済んだので帰るね~。 おつかれっしたーー」

トルバ「あっ、ちょっと!」

ヒュンッ

クデラはトルバの目の前から一瞬にして消えてしまった。

トルバ「……あいつ、何で俺のことあんなに詳しいんだ?……ま、そんなことはもうどうでもいいか」

トルバは自分にみなぎってくるナニカを感じて、思わず笑みを浮かべる。

トルバ「本当はこのまま家に帰ってもいいけど……まずは……」

トルバはクデラがくれた新聞から、友人と魔王のいる場所を探した。

トルバ「魔王城か……。 まだ決着はついてないんだな。 ク、ククク、悪いけど、少し割り込ませてもらうよ、リーグス」

トルバの瞳からはハイライトが消え、代わりにいくつものトルバの知らない"ナニカ"が映し出されていた。

トルバ「久しぶりに勝負しような……待っててな、リーグス……」

トルバは新聞を握りしめると、目にかかった前髪を整えて、自身の家を後にした。



朝の日差しがギラギラと彼を照らす

彼のための決戦|《ステージ》が始まる

その星は今日も廻る

『主人公』である彼を中心にーー


クデラ「なーんてね、あとは頑張ってくれたまえ。 この会社の『ゴミ箱』さん」


クデラはトルバの知らない場所で静かにほくそ笑んでいた。



この小説は、『創作大賞2024 ファンタジー小説部門』への応募を行っているため、一部内容を改定してお送りいたしました。

提供

株式会社ツブエス

URLは続編を投稿した後に、こちらに貼り付けることとします。
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第2話 ケッショウー敵は蹂躙するー→https://note.com/preview/n20c55e10733e?prev_access_key=bbacf3ab66ff58a0434ec497a4ffcebd



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