明日はきっと 青空だって

季節外れの陽気が何度も訪れた戸惑いの11月が過ぎ、本来の季節の足音が
聞こえ始めた12月も5日を経過した頃、ある一報が仕事の昼休憩で一息ついている自分の目に飛び込んできた。

「チバユウスケ死去 享年55歳」———

は?

いやいや、チバは病気なんか克服してまた元気な姿を自分たちに見せてくれるはずだろ?
そして年を重ねて増々年季の入ったしゃがれ声でまだまだ最高にかっこいい歌を届けてくれるんだよ。
冗談にしてはタチが悪すぎる。やめてくれ。

しかしそれはどうしようもないほど間違いなく現実で。
SNSで悲しみの気持ちを吐き出すファンを見る毎に徐々に現実味が増して。
信じたくもない事実を嫌というほど痛感させられた。

2023年はなぜかミュージシャンの訃報が相次ぐ年だった。
しかしまさかそこにチバが加わるなんて思いもよらなかった。
今でもまだ信じられない。信じたくない。

当然その日の午後は仕事なんか手につくはずがなかった。


自分とチバ、というかミッシェルとの邂逅は今だに覚えている。
実家に程近いコンビニに立ち寄ったとき、店内放送で流れていたゲット・アップ・ルーシー。
シンプルでタイトながらも抜群にかっこいいサウンドと今まで聞いたことがない類のボーカル。
決して綺麗ではないけど本能が惹きつけられるようなしゃがれた歌声。
それまでの短い人生の中で出会ったことがなかったタイプの楽曲にそのたった一聴きで魅了された。
家ですぐさま調べてミッシェル・ガン・エレファントというバンドを知った。

そこから狂ったようにミッシェルの曲を聴き漁るようになった。
アルバムは全て聴いたけどその中でも「High Time」は何度聴いたかわからないくらい聴きまくった。
今でもあえてミッシェルのアルバムの中で1枚選ぶならこれになるだろう。
チバが好きすぎて髪型を真似てたこともあったし、今ではもう吸ってないがチバの影響で紙タバコも吸っていた(ラキストは自分には強すぎて無理だったが)。
電気グルーヴも好きだった自分は電子音楽もロックも演りたくて両方学べる専門学校に入学した。
結局音楽の道は趣味程度になってしまったが、それほどミッシェルが、チバが自分に与えた影響はあまりにも大きかった。

ミッシェルのライブにも一度だけ行けた。
会場は仙台wasse。
オーディエンスの熱量がすごすぎてジャンプで会場の床が揺れまくり、わずか3曲消化したところで照明が落下しそうになった結果、ライブが中止になるというある意味伝説の会場である。
その後の振り替え公演(別会場)にももちろん参加した。
カルチャーの間奏でスネアに合わせて手拍子をする客に対して「拍手やめろぉ!」と怒っていたチバの姿は今も覚えている。
懐かしいな。
あの歌声を、音を、空気を、熱量を生で感じられたのは本当に幸運だった。
最高の夜だった。

その後ミッシェルが解散を発表したこともショックだったが、それ以上にショックだったのがミッシェルのギタリスト・アベフトシの急逝だった。
将来いつかまた再結成してくれたらな…という自分の淡い期待は残酷な形で打ち破られた。
ミッシェルのギターはアベじゃなきゃダメなんだよ。
その当時もしばらくの間何も手につかなかった。

チバはミッシェルの解散後、ROSSO、The Birthdayなど様々なバンドやコラボ、プロジェクトに参加していたが自分も年を重ねるごとに音楽に比重を置く時間がなくなっていき、以前ほどチバの動向を追うことが出来なくなっていた。
それでもROSSOのアルバムBirdは死ぬほど聴いたし、Birthdayの曲も定期的に聴いてその度に「チバの歌声は変わらずかっこいいな」なんて思っていた。
Birthdayの動向も追えなくなってきた近年、あるきっかけで久々に見たチバが一気に年を取ったような風貌をしており少し気にはなったものの、相変わらず歌声はかっこいいままだったし、そのときは「年齢的にもこんなもんなのかな…」程度の認識だった。
今となっては分からないが、今思えばその頃から兆候はあったのかもしれない。
そんな折、映画SLAM DUNKのOPにBirthdayの曲が使われるのを知ってめちゃくちゃ嬉しかった。
好きな作品の劇場版に好きなボーカリストの歌声が乗る。
とても幸せなことだ。
実際劇場に足を運んで見たOPは最高にかっこよかった。
これでチバを知らなかった人たちにもこの魅力が、かっこよさがますます広まることだろう。
次はどんな世界を見せてくれるんだろう。
どんな世界を届けてくれるんだろう。
そう、思っていた。


しかしもうそれは永遠に叶わない。
チバがもうこの世にいないということが信じられない。
信じたくないし受け入れられない。
いつまで経っても性根がクソガキの自分は多分一生受け入れられることはないだろう。
チバが紡ぎ出す新たな世界は見れなくなってしまったけど、遺してくれた楽曲にチバの魂はずっと宿り続ける。
以前ほどではないかもしれないけど、自分はこれからも変わらず聴き続けるよ。
そしていつまで出来るかわからないけど、チバが見れなかった分の明日の景色を見続けるためにみっともなく足掻きながら懸命に今を生きるよ。
ここまでこんな駄文を読んでくれた人達、ありがとう。
みんなも生きような。
いつかそっちに行くことがあったらまたチバのステージが見たいな。
ギターはアベで。

誰にも真似できないしゃがれ声を持った最高にかっこよくて少しお茶目で、最期までロックを貫き通した唯一無二のボーカリスト。
あなたは変わらずずっと憧れの存在です。
これまでも、これからも。

サンキュー、チバユウスケ。


今は12月。
シャロンの季節が今年もやってくる。

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