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崩壊3rd 1.5部における旧約聖書のモチーフについて

注:
この記事では、崩壊3rd1.5部のストーリーに関するネタバレを含みます。

はじめに


皆さんはメインストーリー1.5部のポロス編を進めていた時に、こんな感想を持ったことはないでしょうか?

「いやこれノアの方舟そのままやんけ!」

実際これはその通りで、ポロス編はノアの方舟を踏まえたものとなっています。
しかし、1.5部ではセント・ソルトスノー編を含めて、他にもいくつかの宗教的なモチーフが出てきていることに気づいたでしょうか?

「なぜシュレーディンガー博士は塩の柱として出てきたのか?」

「ポロスの博物館で滝から伸びてきた梯子は何なのか?」

等々、聞かれてみるとなんだか不思議な表現も多く見受けられるような気がします。
そういった不思議な表現の全てが聖書をモチーフとしているわけではありませんが、該当するものが多いこともまた確かです。

この記事では、崩壊3rd1.5部のストーリーの中で登場した旧約聖書・新約聖書モチーフのものに関して解説していきます。
崩壊3rdはエヴァが好きすぎてエヴァとコラボするほどですが、元々のエヴァも「アダムとイヴ」のうちイヴが語源ですし、宗教的なモチーフがそこかしこに敷き詰められています。
ですから、この記事の中でエヴァとの共通項を見つけ出すこともあるでしょう。

なお、この記事で引用する旧約聖書・新約聖書の文章については、口語訳版を参照するものとします。
(分かりやすいので)




そもそも旧約聖書・新約聖書とは?

「聖書」という言葉を人生で一度は聞いたことがあると思います。
また、もしかすると聖書には旧約聖書・新約聖書というものがあるということを知っている方も多いかもしれません。
ところで、旧約聖書・新約聖書の違いは何でしょうか?

一口に言えば、旧約聖書はユダヤ教およびキリスト教の教典で、新約聖書はキリスト教の教典です。
これはキリスト教がユダヤ教、および旧約聖書の内容を土台として発生したからです。時代的にはユダヤ教が先にできて、それを踏まえてキリスト教ができた、ということです。

「はじめに神は天と地とを創造された」「神は『光あれ』と言われた。すると光があった」などの有名な文がある『創世記』や、預言者モーセが海を割る『出エジプト記』、ソロモン王が登場する『列王記』など、どこかで見たり聞いたりしたことのあるエピソードは割と旧約聖書が出所であることが多いです。
一方で新約聖書はイエス・キリストがどういうことを言ったかに関する記録である「四福音書」(『マタイによる福音書』など)や、世界の終末についての預言である『ヨハネの黙示録』(「アポカリプス」の語源はここから)などが入っています。

それでは旧約聖書・新約聖書がどういうものかについておさらいしたので、本番に入っていきましょう。

セント・ソルトスノー編

塩の柱

セント・ソルトスノーにおいて、シュレーディンガー博士は塩の柱として登場します。
また、ヴィタがその本性を現した後、セント・ソルトスノーの住人もまた塩の柱と化してしまいます。

これは旧約聖書におけるロトの妻の塩柱というものがモチーフとなっています。
これはソドム、およびゴモラという当時の堕落した町が神の怒りを買って滅ぼされる時に、ソドムにいたロトおよびその家族に対して神が逃げるよう指示しますが、「決して後ろ(ソドム)を振り返るな」という指示に従わなかったロトの妻が塩の柱と化したものです。

「ニュルンベルク年代記」のもの。中央にいる白いものがロトの妻の塩柱

ここでは、ヴィタという神によって住民が塩の柱になったこととの対応関係が見てとれます。
また、塩は聖書において何度も登場し、調味料としての登場以上に神への捧げものや神との契約を示すもの、聖なるものとして用いられています。

ところでセント・ソルトスノーおよび砂鉄の国がもしかするとソドムとゴモラに対応するかもしれません。
(これは少しこじつけかなという気がしていますが)

ポロス編

ノアの方舟

これに関してのあらすじは有名なため説明不要かと思いますが、細かく見ていくと本編との合致する部分がいくつか見受けられます。
たとえば、ノアの方舟に乗っている人間は8人(ノア、ノアの妻、ノアの息子3人+その妻3人)であり、グレーシュを除けば7人の小ヴィタ達の人数に合致します。

ヤコブの梯子(Jacob's Radder)

ポロスの話はまんまノアの方舟ですけど、博物館で出てきたこれは「ヤコブの梯子」(Jacob’s Ladder)ですね
旧約聖書の創世記で、ヤコブがエサウから逃げている時にヤコブの夢で梯子が出てきます。
(そこから転じて、雲の隙間から太陽光が漏れ出てるときの羽衣みたいなものも「ヤコブの梯子」と言ったりします)

時に彼は夢をみた。一つのはしごが地の上に立っていて、その頂は天に達し、神の使たちがそれを上り下りしているのを見た。

この梯子は天使が昇り降りするものであるという記述があります。
さらに、旧約聖書では下記の記述もあります。

そして彼は恐れて言った、「これはなんという恐るべき所だろう。これは神の家である。これは天の門だ」

神である娑に戦いを挑むにあたってこのヤコブの梯子が出てくること、そしてその梯子を登っていくフカとグレーシュ、小ヴィタ達という天使は非常に良い描写ではないでしょうか。
そしてさらに娑がヴィタを捨てなかった描写についても、聖書にその由来となる記述があります。

「わたしはあなたと共にいて、あなたがどこへ行くにもあなたを守り、あなたをこの地に連れ帰るであろう。わたしは決してあなたを捨てず、あなたに語った事を行うであろう」

博物館の梯子

7つの目

フカとグレーシュは娑との戦いに赴きますが、これ以降の描写は新約聖書にある『ヨハネの黙示録』との関係が深くなっていきます。
娑が鐘の音とともに出す7つの目ですが、これは聖書というよりもエヴァに似たようなマークがあることに気づいたでしょうか?

ゼーレ(エヴァンゲリオン)のマーク

これはエヴァンゲリオンにおける「ゼーレ」のマークであり、これも7つの目が入っています。
これは『ヨハネの黙示録』における「7つの目の羊」がモチーフとなっています。

黙示録の7つの目の羊

ところで『ヨハネの黙示録』には7という数字が頻繁に登場しています。これは天地創造が7日間で行われたことにも由来しているでしょう。
7つの封印が施された巻物も登場し、その封印を一つずつ解いていくごとに災いが生じます。
(有名な「ペイルライダー」もここが由来となっています)
また、ポロスにおける「星が落ちてくる」描写も、黙示録に描写のある「ニガヨモギ」という星(隕石)が由来となっていると考えられます。

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