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「伝統工芸 長崎刺繍とは」



長崎刺繍は、長崎くんち 注)に登場する傘鉾や奉納踊の衣裳・装飾品に組み込まれることによって、 その歩みとともに発展を遂げたと言われる。

このことは、その代表的な作品が、 くんちに奉納される傘鉾の垂や 衣裳に多く見られることからもわかる。長崎くんちに登場する代表的な長崎刺繍の作品としては、いずれも長崎市指定有形文化財となっている「桶屋町傘鉾及び十二支 刺繍」の「十二支の垂」、「諏訪町傘鉾 垂及び下絵」のかつての「諏訪法性の 兜の飾」に合わせて刺繍を施した「諏訪伝説の垂」、「万屋町傘鉾 垂一式」のうち垂に施された「魚尽し」 がある。

文化財指定のもの以外にも、馬町「傘鉾飾の亀」、西濱町「傘 鉾垂の姑蘇十八景の図」、籠町(本籠町)「傘鉾垂の龍の幕」、 万屋 町「鯨の潮吹き」 船頭衣裳、 さらに、曳き物を奉納する各踊町に も、長崎刺繍を施した川船や唐人船の船頭衣裳が伝えられている。

このうち、万屋町傘鉾の垂 「魚尽し」は、平成11年(1999) から古くなった刺繍を順次新調する作 業が進められ、平成25年(2013)の奉納にあたって、すべての刺繍が新しくなった。手掛けられたの は、長崎刺繍の唯一の継承者である嘉勢照太氏(「長崎刺繍」 技術保持者平成2年3月 県無形文化財認 定)である。

これまで、大黒町 「唐人船」 飾り船頭衣裳 新調、 東古川町「川船」 飾り船頭衣裳復元新調 、榎津町 「川船」 飾り船頭衣裳新 調、小川町「傘鉾」垂新調、船大工町 「川船」 飾り船頭衣裳復元新調、 魚の町「川船」飾り船頭衣裳復元新調、籠町 「龍踊」 宝珠衆衣裳背刺繍を手掛けられた。

このほか、平成14年(2002)には、伝統工芸の継承と人材育成を目的とした長崎伝習所・「長崎刺 繍」 再発見塾(塾長・嘉勢路子)を開塾し、塾生の指導にあたられている。

ただ現在長崎刺繍の技術を継承しているのは嘉勢先生(現在72才)お一人だ。刺繍を学ぶ基礎となる日本刺繍を体得することを目的に講習会を開催し、そして「長崎刺繍」の見学や資料づくり、「長崎刺繍」のオリジナル製品を作り出し、長崎歴史文化博物館内にて限定販売を行い、県内外の観光客へも知名度アップにつなげている。

長崎歴史文化博物館内においては、伝統工芸スタッフとして、長崎刺繍の楽しさを広めるためのボランティア活動を行っている。

このように多くの活動をされている嘉勢先生であるが現在の年齢を考えるといつ何時体調を崩されると言うことは考えておくべき課題であり早急に取り組む問題である。

注)長崎くんちは、長崎市の諏訪神社の秋季大祭。毎年10月7日から9日までの3日間に催されるお祭り。国の重要無形民俗文化財に指定されており、その歴史は400年近くにも及ぶ。


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