『ASONDE CLASS HITO』の歌詞を意訳気味に英訳した事についての解説

新アルバム『ASONDE CLASS HITO』の歌詞を意訳気味に英訳しました。

[ASONDE CLASS HITO] Lyrics(Free translation in English)
https://note.com/clarknaito/n/n7fe68a40ba45

英訳自体が別にやらんでもいい事だとは思うんですが、更にやらんでもいい事の上塗りで、英訳をした事についてあれこれ解説します。

まず、何でわざわざ英訳など書いたのか?という事から。
去年Bandcampで今の自分と近い音楽をやっていて面白そうな人はいないかな?と探していたんですよ。Bandcampだと「folk」と「rap」など、複数のハッシュタグで検索できる機能があって(この検索ができるのはPCのみ、スマホは不可)、これは便利だなと思ってハマったんです。
そうやってBandcampで見つけたのがSophia Lucia、Trash Folk、Benjamin Haycokといった人達でして。Sophia Luciaさんは現役で活動中だし、なんともアンダーグラウンドな匂いがあって凄く好きになりまして、歌詞が知りたくなりInstagramでご本人を見つけてDMを送ったんですよ。ちゃんと丁寧に返信していただいて歌詞も送っていただき、和訳もしながら「ハーこういう歌なんだ!」と思ったりしたと。ちなみにDMのやり取りや歌詞の和訳は基本的にDeepLという翻訳サイトを使ってました。
https://www.deepl.com/ja/translator
で、リスナーとしてこちらから「歌詞を知りたい」と思って連絡をしたのであれば、発信する側としても日本語以外の訳を予め用意しておいた方がいいだろうと思った、というのが英訳をしようと思ったきっかけです。

そしてここが大事なことなんですけれども、いざ英訳を初めてみてすぐ「英訳ってメチャクチャ面白いというか、遊びの要素が多分に含まれているじゃないか」と気付きました。歌詞を英訳するのメチャクチャ面白いですよ。なんだろう、もう一つの歌詞を作る感覚というか、曲をリミックスする感覚に凄く似てます。凄く似てます。自分で歌詞を書いてる方は是非英訳も作る事をおすすめします。

例えば。
「I Hate Rock'n'Roll」の歌詞に
「I hate Rock'n'Roll 
天国へのパスポート? 
I hate Rock'n'Roll
いいえ 地獄で笑う方法」
という歌詞があります。
これはThe Blue Heartsの「青空」に出てくる「天国へのパスポート」というフレーズに対して、「天国」の対義語である「地獄」という言葉を使いつつ、語尾で韻を踏みながらアンサーを返す事によってロックンロールへの愛憎を表現したわけです。

この、うまい事を言った感じを英語でも表現するならどうすればいいか。
まず、「天国へのパスポート?」は「Is it passport to heaven?」でほぼほぼ動かしようがないだろう。じゃあ「いいえ 地獄で笑う方法」をどうするか。直訳するなら「No, It's way to laugh in hell」になるけれども、これでは韻も踏めていないしあまり面白くない。最後が「~~ in hell」になってそこで韻が踏めないのはしょうがないとして、その前の部分でもう少し面白くするのがいいだろう。では「方法」という言葉をやめて「気晴らし」という言葉の英語を探してはどうか。「pastime」という言葉があった。「passport」という言葉に対して「pastime」と返すのであれば、頭の部分で韻が踏めているし面白いんじゃないか。

というわけで、

I hate Rock'n'Roll
Is it passport to heaven?
I hate Rock'n'Roll
No, it's a pastime to laugh in hell

と英訳しました。

英語としてネイティブの人達に面白さが伝わっているかはわかりません。しかし「意訳でよい」としてみると、こんな風に自分のクリエイティビティを刺激される所がたくさんありました。
音楽そのものは聴き手に委ねたい事も多いから、聴きどころとかは主張しすぎないようにしているつもりですが、歌詞の英訳ぐらいは多少見どころを説明してもいいんじゃないか。そういう事にして列挙するなら、
「Happy End」の「お株は奪われる」が英語でも「I was stolen my thunder」という事、
「防災訓練」の「昔々の新しい自由が昔ながらの不自由となる」を「Once upon a time Neoliberalism was born, and we lost freedom」と訳せた事、
「Away」のHooKである「ホームって/何だっけ」を「I don't know/what is home」と韻を踏みながら訳せた事、
「だまされたい」の「絵にかいた餅」がやはり英語でも「pie in the sky」という事、
また同じく「だまされたい」の「まんまんちゃんあん」を「goner」と訳せた事(直訳すると死者で完全には一致しないものの、アメリカにギターウルフをリリースしたGoner Recordsというレーベルがある)、
等々こういった発見や工夫がいくつもありました。

英訳なのだから英語圏の人達向けにのみ用意しておけばいいんじゃないかとも最初は思っていたのですが、前述したように歌詞のリミックスとしてあまりに面白い作業であった為、解説を添えつつ日本の人達にも発信したいと思った次第です。

また、英訳の投稿にはいくつか注釈を付けくわえています。例えば「咳をしても一人」といった歌詞が尾崎放哉の俳句からサンプリング感覚で使われている事は日本ではだいたい伝わると思うんですが、英語圏の人達向けに英訳すると、それが伝わる可能性はほとんど0になります。なので、言葉の元ネタが日本の文化からサンプリングされているものについてはなるべく注釈を付け加えました。日本の人達が読んだ時にも新たな発見があるかもしれないので、そういう意味でもご一読してみていただきたいと思っています。

何しろ今回のアルバムタイトルが『ASONDE CLASS HITO』ですから、宣伝活動についてもこういった形で色々と遊んでいる様や、遊べるものを提示していこうと思っています。書き物はこれでひと段落したかなと思われまして、この後は少し間隔が空きつつもまた別の形で遊びます。

そして7月2日(金)にはアルバムのレコ発パーティーを開催予定です。

画像1


『ASONDE CLASS HITO』release party
日時:2021年7月2日(金)
場所:下北沢THREE
時間:18時オープン(変更の可能性あり)
料金:¥2000(+1d)
出演:
クラーク内藤
三代目DJひょっとこ
シンムラテツヤ
久土'N'茶谷
FUCKER

・事前の予約をお願いします。各出演者にて承ります。
・入場時、検温、手指消毒、マスクの着用、連絡先の記入をお願いします。
・発熱等体調不良の場合は無理せず入場をご遠慮下さい。

こちらにもやはりいくつか遊びの仕掛けがあります。後日言えるかもしれない事、言えない事などありますが、このメンツをご覧いただくだけでも充分期待していただけるんじゃないでしょうか。事前の予約が必要となっておりますので、ご来場いただける方はご連絡ください。よろしくお願いします。

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