2024中央ロー再現答案(免除なし合格)
おにぎりです。2024中央ロー既修入試の再現答案を載せます
追記(2023.9.15):合格しました。(免除なしの普通合格です)
1.憲法【B】
1.答案
設問1
1.臨時特措法は、財産権(憲法29条)の制約に当たるが、合憲である。
2.まず、臨時特措法によって財産権を制約されうるのは、特定懸念人物すなわちA国民である。そこで、A国民にも憲法の人権保障が及ぶか。
⑴ たしかに、憲法11条は「国民」を人権享有主体としている。しかし、外国人を別異に取り扱う理由はないことから、選挙権など日本の体制そのものにかかわり日本国民にのみ認められると考えられる権利を除いては、外国人も人権享有主体となる。
⑵ 財産権は、選挙権とは異なり日本国民のみに認められる性質のものではない。よって、外国人も財産権の保障はされる。
⑶ したがって、A国民の財産権は保障される。
3.臨時措置法はA国民の財産権制約といえるか。
⑴ 財産権は他の自由権とはことなり保障範囲を明確にすることが困難であるから制約の認定が難しい。もっとも、既に得ている権利利益を事後的に制約することは、財産権制約といえる。農地の特措法判例とおなじ類型である。
⑵ 本問では、臨時措置法によって国内所在資産が収用される。国内所在資産は、A国民が既に得ていた資産であるから、既得権の事後的な制約といえる。
⑶ よって、臨時措置法は財産権を制約している。
4.財産権の制約はすべてが違憲無効になるわけでない。むしろ、「公共の福祉に適合するやうに」と憲法29条2項が規定するように広範な立法裁量が認められる。そこで、かかる立法裁量の逸脱濫用といえるときに当該財産権制約は違憲となる。
⑴ 立法裁量の逸脱濫用といえるためには、上記広範な立法裁量に照らせば、合理性を欠く財産権制約といえる時に逸脱濫用といえる。具体的には、制約される財産の性質、制約目的、制約態様を総合考慮して判断される。
⑵ 制約される財産である国内所在資産は、A国民が日本国内で有する銀行預金、有価証券、土地・建物、動産、知的財産権など経済的価値のあるものすべてをいうから、制約される財産は大きい。
一方、制約目的は、A国に経済制裁を課すことによって軍事政権の弱体化を図りもって民主政への復帰を促すものである。A国の軍事政権は、反対派のA国民を投獄したり拷問したりしている。日本国憲法前文は、日本国の理想として専制と隷従を排除し、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れることを理想とするものである。また前文において日本は国際協調主義を掲げている。A国軍事政権の反対派への弾圧はまさに、反対派が恐怖と欠乏の最中にいるものであり、国際世論はこれにたいして経済制裁を課そうとしている。よって、かかる制約目的は、憲法前文の理想の達成を目的とするものであって国際協調の一環であるから正当な目的といえる。
また、A国軍事政権が政府機構を私物化し、それによって得た資産を先進国に移転していることに鑑みると、かかる制約は、目的達成のために有効な手段といえる。
⑶ 以上より、臨時特措法は合理性を欠く財産権制約とは言えない。
5.したがって、臨時特措法の内容は憲法に違反せず合憲である。
設問2
1.Cの損失補償請求(憲法29条3項)の要件は「正当な補償の下に」「公共のために」用いることである。
⑴ 「正当な補償の下に」といえるためには、➀特定人への制約であって②受忍限度を超えるものでなければならない。
本件では、臨時特措法は特定懸念人物を対象とするものであるから特定人への制約といえる(➀充足)。しかし、臨時特措法の上記目的からすると受忍限度を超えるものとはいえない(②不充足)。
よって「正当な補償の下に」には当たらない。
2.以上よりCの請求は認められない。
以上
2.感想
2.民法【B】
1.答案
設問1.
第1.➀
1.CはAに対して債務不履行に基づく損害賠償請求(415条1項本文)としての乙の価値相当額の賠償請求をすることが考えられる。
⑴ 「債務者が債務の本旨に従った履行をしない」について、ACは2023年3月1日に甲を賃貸目的物として賃貸借契約(601条)を締結している。そして、賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う(606条1項本文)。本問では、賃貸物である甲の屋根の内部で毀損箇所が生じていることからAはかかる毀損箇所の修繕義務を負っていたといえる。それにもかかわらず、Aは放置していることから「債務者が債務の本旨に従った履行をしない」といえる。
⑵ 「損害」について、損害とは債務不履行がなければ債権者が置かれていた財産状況と債務不履行によって債権者が置かれていた財産状況の差額をいう。本問では、雨漏りによって乙が毀損し、50万円の価値喪失が生じている。雨漏りはAが修繕をしていれば生じていなかったといえるから50万円は「損害」といえる。
⑶ 「よって」とは債務不履行と損害との因果関係をいう。因果関係は相当因果関係をいい、416条によって規定されている。本件では、雨漏りの修繕をしないことによって乙の毀損による価値喪失が生じると一般人が認識することはできないことから「通常生ずべき損害」(416条1項)とは言えない。もっとも、AはCが芸術家であることをしっており、かつ甲をアトリエとして利用することを認識していたのであるから修繕をしないことによって雨漏りが生じた場合には損害が生じることは「その事情を予見すべき」(同条2項)であったといえる。よって、債務不履行と損害との因果関係はあるため「よって」に当たる。
⑷ なお、債務不履行はAの責めに帰することができない事由によるものであるとは言えないため415条1項ただし書きの適用はない。
2.以上よりCの請求は認められる。
第2.②
1.Cの請求の根拠は必要費償還請求(608条1項)である。「必要費」とは、賃貸目的物の使用収益に必要な修繕費用である。
2.本件では、甲は屋根の内部が毀損していることから「賃借物の修繕が必要」(607条の2柱書)であるといえる。そして賃借人Cは賃貸人Aに対して修繕するように求めていることから「通知」(同条1号)している。もっとも、通知から相当期間内は経っていない。しかし、Aが拒絶している以上、相当期間Cが待つ必要はないことから修繕は認められる。
3.以上より、Cの支出した30万円は必要費といえるから請求は認められる。
設問2.
第1.➀
1.Cの主張は、Eとの間でも賃借権があるというものである。この主張が認められるためには、AからEへの賃貸人の地位の移転がなければならない。
2.CはAとの間で甲建物の賃貸借契約を締結した時に甲建物の「引渡し」(借地借家法31条)を受けている。よって、Cは「借地借家法…を備えた」(民法605条の2)といえる。そして、AC間の賃貸借契約は2023年3月1日に締結されたものであり、Eの甲取得は2023年10月4日であるから対抗要件具備後に甲はEに移転しているといえる。
3.よって、AC間の賃貸借契約の賃貸人の地位はAからEに移転しているといえるから、CはEとの間でも有効な賃借権を有しているといえる。
第2.②
1.Cの主張は留置権(295条)である。
⑴ CはE所有の甲建物に居住していることから「他人の物を占有」(同条1項)しているといえる。
⑵ 「その物に関して生じた債権」とは、留置権の趣旨が担保、履行促進にあることから、被担保債権の債務者と留置物の所有者が留置権行使時に同一人であることをいう。
被担保債権すなわち事実8の各請求の債務者はAである一方で、留置権の行使時の留置物である甲の所有者はEであるから同一人とは言えない。
2.よってCの主張は認められない。
以上
2.感想
3.刑法【C】
1.答案
1.甲の罪責 甲は、最初のA宅に侵入した行為は、「正当な理由なく」「人の住居」に「侵入し」たといえるから住居侵入罪(130条前段)の罪責を負う。Aの顔面を手拳で殴りつけて昏倒させた行為について傷害致死罪(205条)が成立しないか。「傷害」とは、生理的機能侵害をいう。Aは甲の殴打行為によって昏倒していることから生理的機能が侵害されたと言え「傷害」に当たる。また、Aは死亡しており、その死因は殴打行為による脳出血であるから結果及び因果関係も認められる。故意(38条1項本文)について、傷害致死罪は暴行罪(208条)の結果的加重犯であるから甲にA暴行の故意がある本問では故意も認められる。なお、強盗致傷未遂罪(243条、240条)が成立するか問題となるも否定されるべきである。なぜなら、甲のAに対する暴行は窃盗の機会に行われたものではないから238条の適用がないからである。また、これに加えて後述の通り乙に成立する住居侵入罪、殺人未遂罪(203条、199条)、窃盗罪(235条)の共同正犯(60条)の罪責も負う。
2.乙の罪責 まず、最初にA宅に行って行われた一連の行為は甲乙は実行共同正犯であるから、乙はこれらの罪の共同正犯となる。では、2回目にA宅に侵入した行為について住居侵入罪が成立するか。客観的に見ればAは死亡していることからAによる管理権の観念ができない。しかし、殺害した者との間では死者の住居権が観念でき、A殺害は甲乙によるものであるから乙は住居侵入罪の在籍を負う。次に、Aを刺突した行為について殺人未遂罪の罪責を負うか。Aは既に死亡していたことから不能犯となるのではないか問題となも否定される。なぜなら、乙は刃長10cmという殺傷能力の高い武器を用いてAの腹部という身体の枢要部を何度も刺突しており、行為時点において乙はAの死亡を認識しておらず、一般人から見るとこの乙の行為は死亡結果発生の具体的危険のある行為だからである。もっとも、刺突時点においてAは死亡していることから「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」(43条本文)と言える。また、乙はかかる行為を強盗殺人目的で行なっていることから殺人罪の故意がないように思える。しかし、強盗殺人罪と殺人罪は人の生命という同じ保護法益を有する犯罪であり、行為態様も人を殺害するという点で共通している。よって両罪は構成要件的重なり合いがあるといえるから軽い罪の殺人未遂罪の限度で故意が認められる。また、乙は窃盗罪の罪責も負う。窃盗罪においても殺害した者との間では占有が認められるからである。【途中答案】
2.感想
4.民事訴訟法【C】
1.答案
設問1.
1.確認の訴えが認められるためには確認の利益がなくてはならない。確認の利益がある場合とは、確認の訴えのみが紛争の抜本的解決に役立つ場合をいう。確認の訴えは、既判力(114条1項)は生じるが、執行力がない。そこで、確認の利益があるか否かは、➀方法選択の適切性、②対象選択の適切性、③即時確定の利益を考慮して判断する。
2.本問では、XはYに対する甲土地所有権の確認の訴えを提起している。XはYに対して所有権に基づく返還請求として甲土地明け渡し請求をすることで紛争は抜本的に解決されるといえるから明け渡し請求のほうが適切といえる。また、給付訴訟は、確認訴訟を包摂する関係にあることから、給付訴訟が認められる本問では、方法選択が適切とはいえない(➀)。
3.よって、Xに確認の利益があるとはいえず、Xの訴えは不適法である。
設問2.
中間確認の訴え(145条1項本文)は本件訴えと密接に関連するものである。審理対象も重複するからである。そこで、弁論は原則として併合・分離可能(152条1項)だが、分離を認めると判決の矛盾抵触の恐れがあるし、訴訟不経済であるため、弁論分離は認められない。
以上
2.感想
5.刑事訴訟法【C】
1.答案
設問⑴
問題点は、当初の公訴事実は甲乙がVの両手首に粘着テープを巻きつけて包丁を差し向けて「殺すぞ」といったものであるが、公判前整理手続きの訴因変更によって乙が暴行脅迫をしているという訴因に変更された。それにも関わらず、裁判所が甲が暴行脅迫をおこなったと認定することは認められるのかというのが問題点である。
設問⑵
1.裁判所のかかる認定をするためには訴因変更(312条1項)が必要なのではないか訴因変更の要否がいかなる時に必要か。訴因の機能は一次的には審判対象画定機能であり、二次的には防御権告知機能である。そこで、審判対象が変動せず、また被告人の防御権への不意打ちとならないのであれば訴因変更をしなくてもよい。具体的には➀公訴事実の同一性が認められ、②被告人の防御にとって重要な事実の変動がなく③仮に②があったとしても具体的な審理経過に照らして不意打ちとならない特段の事情がある場合には、訴因変更は必要ない。
2.本問では、いずれの訴因も、令和4年9月11日午後2時35分頃、甲・乙がA市V方で行った強盗についてであるから公訴事実の同一性が認められる(➀)。また、甲が暴行脅迫を行っていたのか、乙が暴行脅迫を行っていたのかという事情は、甲乙が強盗罪の実行共同正犯である以上、どちらの暴行脅迫かによらずどちらも罪責を負うという点で被告人の防御にとって重要な事実の変動がないといえる(②)。
3.以上より訴因変更手続きは不要である。
以上
2.感想
6.商法【D】
1.答案
設問⑴
1.本件決議は「株主」(309条1項)ではないBによる議決権行使がなされていることから違法ではないか。
2.Bは自身の株券をDに譲渡しているから、「株券の占有者」(131条1項)であるDが株主と推定される。また、実際にBD間で株式の譲渡がされていることから、Dが株主である。しかし、甲社はDの名義書き換えをしていないことからDは「株主名簿に記載」(130条1項)されておらずDは株式会社に株主たる地位を対抗できない(同条1項、2項)。
3.もっとも、Dの名義書き換え未了は、甲社の過失によるものである。そして、130条1項が株主名簿の記載を対抗要件とした趣旨は、株式会社が株主名簿によって株主を画一的に取り扱うことを可能にすることで会社の事務処理上の便宜を図った点にある。そこで、会社が過失等によって名簿書き換えを行わなかった場合には、かかる便宜を図る必要がないことから、譲受人は名簿書き換えなく対抗できる。
本件では、Dは甲社の過失によって名簿書き換えがなされていない。よって、Dは甲社に株主たる地位を対抗できる。
以上より、Dは甲社との関係でも株主であるから、本件決議は違法である。
設問⑵
第1.➀
1.本件贈与及びAからEへの譲渡は、全体をみると甲社の会社財産を減らして株式数の変更をしないものであるから、仮装払い込みである。
2.そこで、E及びY1は213条の2第1項1号類推適用、213条の3第1項本文類推適用によって責任を負わないか。まず、本件の仮装払い込みは、新株発行に際して行われたものではないことから直接適用することはできない。しかし、これらの条文の趣旨は会社財産の保護にあり、この趣旨は、第三者間の株式譲受における仮装払い込みでも妥当する。
3.よって、E及びY1は213条の2第1項1号類推適用、213条の3第1項本文類推適用によって責任を負う。
第2.②
1.Cは甲社に対して株主代表訴訟(847条1項)を提起することが考えられる。
まず、Cは令和5年1月末から甲社株式を保有していることから「六箇月…株主」にあたると思われる。よって、Cは甲社を被告として、➀の責任追及をする。
以上
2.感想
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?