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2024明治ローⅠ期(既修)再現答案(免除なし合格)

こんにちは。おにぎりです。今日(2023/08/06)明治ローを受けたので、忘れぬうちに再現答案を書きます。

追記(2023.8.29)合格していました。免除はなく、普通合格です。


1.当日の感想等

合否については発表されたら公開します。
答案用紙の形式:A3縦(横書き)1枚 両面印刷 ※全科目1枚ずつです

試験は難しかったというか、7,8割基本問題が出題されているにもかかわらず、満足な回答ができなくて悔しいです。
ロー入試を初めて受けた感想は、よく言われることですが、普段の勉強以上に良い答案が書けることはなかったです。あと1ヶ月知っている論点や判例について一つ一つ丁寧に理解する勉強をしようと思いました。

問題を一つのファイルにまとめました

2.民法



問題
1.AはEの請求に対して、取得時効(162条1項)によって甲土地をAが原始取得することからEの請求の要件を欠き、Eの請求は認められないと反論する。
2.この反論は認められるか。
⑴ 条文から読みとれる取得時効の要件は①20年間②所有の意思を持って③平穏、公然と④他人の物を⑤占有することである。また、取得時効は時効であるから145条より⑥援用も要件となる。
⑵ア.20年間について、186条2項より両時点で占有が認められれば継続した占有が認められる。本問では、1990年3月1日と2023年4月1日時点において占有が認められると考えられる。よって、この間の継続した占有が認められる(①⑤充足)
イ.所有の意思を持ってについて、186条1項により推定される。また、所有の意思は占有開始原因によって客観的に判断される。Aは甲土地を売買契約によって占有開始していることから客観的にみても所有の意思を持ってといえ、推定が覆る事情はない(②充足)。
ウ.平穏、公然について186条1項により推定され覆す事情はない(③充足)。
エ.他人の物について、取得時効の趣旨は、継続した事実状態を法律によって保護する点にある。この趣旨は自己物についても妥当することから、自己物の取得であっても取得時効は認められると考える。本問でAが主張する甲土地はA自身の土地であるが、④は充足する。
⑶ 以上より、①〜⑤の要件を充すことから、時効援用をAがすることによって(⑥)Aは甲土地を原始取得すると考える。
3.したがって、Aの反論は認められる。

問題1.
1.本件欠陥は本件請負契約による工事によって生じたものであると思われるから、Aは「債務の本旨に従った履行」(415条1項本文)をしていないといえる。また、本件欠陥によって本件建物の価値は2割程度減少していることから、その減少分は工事に「よって生じた損害」といえる。よって、BはAに対して損害賠償債権を有している。
2.Cは、この損害賠償債権が支払われるまで、請負契約代金債権を支払わないとして、同時履行の抗弁権(533条)を主張することが考えられる。
⑴ 同時履行の抗弁権の趣旨は①履行促進と②反対債務の担保にある。そこで、履行促進が見込めない場合、同時履行の抗弁権は認められないため、同時履行の抗弁権が認められるためには本人の負担する債務の債権者と本人の有する債権の債務者が同一人でなくてはならないと考える。
⑵ 本件損害賠償債権の債務者はAである一方で、本件請負代金債権の債権者はCである。よって同一人とは言えない。
⑶ よって、同時履行の抗弁権は認められない。
3.以上よりBの反論は認められない。
問題2.
1.CはAに対して、修補に代わる損害賠償債権(415条1項本文)あるいは、代金減額請求権(559条、632条、563条1項)を主張することが考えられる。
2.もっとも、債権譲渡の譲受人に対する抗弁は、債権譲渡前に生じた事由に[途中答案]


3.憲法

第1.設問前段
1.本件特別会費徴収決議は憲法19条に反し、違憲無効であるからXは本件特別会費の納入義務を負わないと判断する。
2.本件決議によって生じる納入義務は、自身の政治信念とは異なる政党への資金提供のための支出をさせるものである。よって、自身の政治信念に沿った政党を支援する自由を間接的に制約しているといえる。
 憲法19条は思想・良心の自由を保障している。思想・良心の自由とは、自分の人格や価値観について介入されない自由であるから、自分の政治信念に沿った政党を支援する自由も思想・良心の自由として保障される。
 したがって、本件決議は思想・良心の自由への間接的な制約といえる。
3.憲法上の権利に対する制約といえども必ずしも違憲となるわけではない。そこで、本件決議による制約は憲法上許容される制約といえるか。
⑴ 思想・良心の自由は、自分の人格や価値観を確立するものであって、民主主義社会において重要な役割を果たす。よって権利の重要性は高い。また、税理士会は強制加入団体であり、税理士会にいなければ税理士としての仕事はできない。この制度の中でXが会費を支払わなかったために税理士会の役員の投票権を失うことは、税理士会に自分の意見が浸透しなくなる強力な制裁であるから制約の強度は強い。もっとも、税理士会は税理士法49条6項で税理士業務の改善進捗を目的とする団体であり、それについての税理士会の裁量はある。
 そこで、本件決議の目的が重要で、その手段が実質的関連性を有し、かつ他に取りうる手段がなければ合憲となる。
⑵ア.本件決議の目的は、税理士会に有利な法改正のために政党に資金提供するものである。税理士会に有利な法改正は税理士全体の利益となることから重要といえる。
イ.その手段として政治資金提供をしている。政治資金提供を受けた政党の議員は、税理士にとって有利な法改正案に賛成票を投じる可能性が高いことから目的と手段の適合性はあるといえる。しかし、税理士法49条の11によって税理士会は権限のある官公庁に対して建議あるいは諮問に答申することができる。そうだとすれば、本件決議の目的は、この方法によって達成することができるといえる。
⑶ 以上より、本件決議の目的は重要といえるが、その目的達成のために税理士法49条の11にある手段を用いることができることから、他に取りうる手段があるといえる。よって本件決議による制約は憲法上許容される制約とはいえない。
3.したがって、本件決議は憲法19条に反し違憲無効であるからXの主張は認められる。
第2.設問後段
1.復興支援拠出金として利用する場合は合憲である。
2.本件支援金の目的は他の税理士会であるB税理士会の復興のためであるからまさに「税理士業務の改善進歩」(税理士法49条6項)のためであるといえる。よって、税理士会に広い裁量が認められる。また、思想・良心の自由に対する制約にもなっていない。
3.これらの理由から復興支援拠出金として利用する場合は合憲である。

以上

4.刑法

問1.
第1.甲が甲車でX車に追突した行為(以下「本件追突行為」)によって、Xがむち打ち症を負ったことについて甲は傷害罪(204条)の罪責を負わないか。
1.⑴ 「傷害」とは、人の生理的機能侵害をいう。Xは加療2週間を要するむち打ち症を負っており、生理的機能侵害が認められる。よって、甲は「人」の「身体」を「傷害」したといえる。また、これによって傷害結果が発生している。そして、本件追突行為がなければXは負傷しなかったといえるし、本件追突行為は人を負傷させる危険性の高い行為であるところXの負傷はそれが現実化したといえるため因果関係も認められる。
⑵ また、甲はXが負傷することについての認識認容があるため故意(38条1項本文)も認められる。
2.Xは本件追突行為について同意していることから違法性が阻却されないか。
⑴ 違法性の本質は、社会的相当性を欠く規範違反である。そこで、原則として被害者の同意があれば社会的相当性が認められ、違法性は阻却される。もっとも、被害者の同意があったとしても➀同意した理由が社会通念上認められるものでなく、②その行為によって生じる危険が大きい場合には、違法性は阻却されない。
⑵ 本問では、本件追突行為についてXが同意したのは、保険金を騙し取る目的によるものであることから、社会通念上認められる理由による同意とは言えない。また、追突行為は他の歩行者等を巻き込むおそれのある危険な行為である。
⑶ よって、Xの同意があったとしても甲の行為の違法性は阻却されない。
3.以上より甲は傷害罪の罪責を負う。
第2.本件追突行為によってBが負傷したことについて甲は傷害罪の罪責を負わないか。
1.Bは打撲傷を負っていることから生理的機能が侵害されているといえ、「傷害」を負っている。また、設問1と同様に他の客観的構成要件も充たす。
2.もっとも、甲はBの負傷について認識していないことから故意が認められないのではないか。
⑴ 故意責任の本質は反規範的人格態度に対する道義的非難にある。そして、規範は構成要件の形で与えられている。よって、構成要件該当行為であることについての認識認容があれば、反対動機を形成することは可能であるから故意責任を問いうる。
⑵ 本問では、甲はBの傷害結果についての認識認容はない。しかし、Xの傷害結果についての認識認容は認められる。よって、本件追突行為が傷害罪の構成要件該当行為であることの認識はあるといえる。
⑶ 以上より、甲に故意が認められる。
3.したがって、甲は傷害罪の罪責を負う。
第3.罪数
  以上より、甲は2つの傷害罪の罪責を負う。これは本件追突行為によってどちらも生じていることから観念的競合(54条1項)となる。
問2.
設問⑴ 傷害致死罪(205条)
設問⑵ 傷害罪(204条)
設問⑶
➀ 行為時の一般人の認識及び行為者の認識以外も考慮要素に入れると反対動機の形成可能性なく、不当だから。
② 同一行為同一結果であるにもかかわらず、行為者の主観によって罪名が異なるのはおかしい。

以上


5.民事訴訟法

問題1
 証明責任とは、主張の証明の負担を訴訟当事者のどちらが負うかという問題である。これはその証明によって利益を受ける方が負担する。例えば物権的返還請求の場合は、請求要件である➀本権があること、②相手方が占有していることの2つはそれが証明されることによって請求が認められるという点で原告に利益があるため証明責任は原告が負う。一方、賃貸借契約による賃借権があるために占有権原がある旨の主張は、それが認められることによって請求が認められないという点で被告に利益があるため証明責任は被告にある。
 証明度は、合理的疑いを超える程度で足りる。刑事訴訟における証明度とはことなり、高度の蓋然性までは要求されない。
問題2.
1.既判力とは、前訴確定判決が後訴に対して有する確定力ないし拘束力をいう。その根拠は、口頭弁論において自由に攻撃防御を尽くすことができたことによる自己責任、すなわち、手続き保障による自己責任である。そこで、既判力は事実審の最終口頭弁論終結時を基準に生じる。既判力は「主文に包含するもの」(114条1項)すなわち訴訟物たる権利義務関係の存否について生じる。なぜなら、既判力の趣旨は判決の矛盾抵触の防止にあるところ、訴訟物の存否についてのみ既判力が生じるとすれば十分だからである。
2.本問では前訴訴訟物は、金銭消費貸借契約(587条)に基づく貸金返還請求権である。前訴は、Xの勝訴であることから、XのYに対する貸金返還請求権の存在について既判力が生じる。
3.既判力が生じると、同一・矛盾・先決関係にある後訴に作用する。その結果、裁判所は既判力に抵触する事実認定をすることができないし、当事者も既判力に抵触する主張をすることができない。
4.本問では、後訴の訴訟物は不当利得返還請求権である。この請求権の要件の一つである法律上の原因がないことについて、Yは強制執行の原因がないとして主張している。しかし、本件強制執行は前訴訴訟物であるXのYに対する貸金返還請求権の実行として行われたものであるから法律上の原因はあるといえる。よって、かかるYの主張は前訴と矛盾関係にある主張といえるため、この主張は認められない。
5.以上より、後訴は棄却される。

以上

6.刑事訴訟法


1.本件捜査はいわゆるおとり捜査である。おとり捜査は刑事訴訟法上に規定がないことから「強制の処分」(197条1項ただし書)にあたる場合、強制処分法定主義違反として違法となる。
⑴ 強制処分とは、➀相手方の意思に反して②重要な権利利益を実質的に制約する処分をいう。
⑵ 本件おとり捜査は、Aの要請によって覚醒剤販売についてX₁を誘ったものである。しかし、X₁は少しも躊躇することなく承諾していることから、最終的に本人の意思によってなされていたといえる。よって、相手方の意思に反しているとはいえない(①不充足)。
⑶ よって、強制処分には当たらない。
2.強制処分でないとしても任意捜査の限界を超えることはできない。
⑴ 任意捜査として許容されるのは、捜査の必要性・緊急性を考慮して捜査手法が相当といえる場合である。
⑵ 本問では、本件捜査によって逮捕しようとしているのは、警察が所在がつかめないでいる本邦在住の外国人社会では長らく知られていたX₁であり、逮捕ができる機会がこれを逃せばないという点で必要性が高い。また、覚醒剤の犯罪は密行性が高く、摘発が困難であることからも必要性は高いといえる。そして、X₁が今回所持しているのは、高純度の医療用覚せい剤10kgでありその質、量から一度社会に流出することによる影響は大きいため、その覚醒剤を差押える緊急性もある。
 一方で、これらの逮捕差押えのためにしていることは場所の指定のみであって新たに犯行を決意させているといった事情がないことから相当性を逸脱するものとは言えない。
⑶ 以上より、本件捜査は任意捜査として許容される。
3.したがって、本件捜査は適法である。また、逮捕や差し押さえも適法な手続きによっていることから適法である。
設問2.
1.本件捜査が、強制処分にあたるかについては、設問1と同様に結局X₂は自身の意思で犯行に及んでいるため、相手方の意思に反してとはいえず、強制処分に当たらない。
2.では、任意捜査として許容されるかについては許容されないと考える。まず、X₂は覚醒剤についての犯罪を実行する意図がなかったことからおとり捜査を行う必要性はない。また、X₂に対して行ったおとり捜査は覚醒剤事犯の摘発件数を向上させるためである。
 よって、任意捜査として許容される捜査とはいえない。
3.以上より、本件捜査は違法である。また、この違法は、Aが覚醒剤事犯の摘発件数をあげるために犯意のない者に犯意を抱かせ、犯罪を実現したものであるから、重大な違法といえる。そこで、司法の廉潔性と将来の違法捜査抑止の観点から、現行犯逮捕等適法な手続きによって行われた捜査も違法とすべきである。

以上


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