2024慶應ロー再現答案(不合格)
おにぎりです。慶應ローの再現答案です。
慶應は第一志望かつ、慶応の前に受けた明治中央で途中答案(明治は民法、中央は刑法)を作ってしまったので、それをなくそうと思って答案構成せずに全科目書き切りました。
そのため、再現答案の科目ごとの文字数が比較的多いですが、これは構成時間を取らなかったために答案作成時間が長く取れたからです。
再現答案では直していますが、本番の憲法は、違憲審査基準定立で制約の態様について書いていなかったので最後に書いて矢印で挿入しました。
結果:不合格でした
不合格答案の参考としてみてください!
1.憲法
1.答案
第1.Xが100円を支払うように求める本決定に基づく特別会費徴収は思想良心の自由(憲法19条)に反し、違憲ではないか。
1.まず、Xが寄付をするかしないかを決める自由は思想良心の自由によって保障されているか。
⑴ 思想良心の自由が保障する思想良心とは個人の世界観、価値観をいう。よって、思想良心の自由は個人の世界観、価値観に介入されない自由をいう。
⑵ Xがどこに寄付をするか、寄付をしないかという意思決定は、Xの価値観にしたがって決められるべき事柄であるから個人の価値観に基づくものといえる。
⑶ よってXの寄付について決める自由は思想良心の自由によって保障されている。
2.そして、本決定に基づく特別会費徴収は、Xの価値観と異なる行動を結果的にさせるものであるから思想良心の自由の付随的制約といえる。
3.では、かかる制約は憲法上許容されるか。
⑴ まず、思想良心の自由は、上記のような価値観を保障するものであり、個々がそれぞれの価値観を有しているからこそ民主主義はより発展するという点に鑑みると重要な権利といえる。もっとも、本件でXにおいて問題になる自由は、Xの価値観、世界観の核心ではないことから重要性は核心に比べれば劣る。また、本件特別徴収は上述のとおり付随的な制約である。たしかに、C自治会は南九州税理士会事件で問題となった税理士会のように強制加入団体ではないし、加入しないからといって仕事がなくなるわけでもない。しかし、地域の95%以上が加入しており、未加入者は被災時にC自治会からの協力・援助を受けることができないことから、実質的な強制加入団体であるといえる。よって、制約は一定程度強力なものといえる。
そこで、かかる制約が憲法上許容されるためには、目的が重要で手段が目的と実質的関連性を有していなければならないと考える。
⑵ 検討
ア.C自治会は、「地域課題の解決に取り組むこと」で「住みよい地域社会の形成に資すること」(C自治会規約4条)を目的とする団体である。D川の堤防決壊によって、A市の多くの地域で家屋浸水の水害が生じている。そして、C自治会はA市B地区の自治会であることから、被害を受けたA市の多くの地域は、C自治会からみても「地域」であるといえる。よって、当該被災地域に見舞金を支払うことはC自治会の目的に沿い、重要といえる。
イ.本件被災によって多くの家が家屋浸水しており、この修理のために多額の費用を要すると考えられる。よって、C自治会が見舞金を送ることは有効かつ適切な手段といえる。
ウ.また、特別徴収される金額は100円であり、C自治会の年会費6000円と比較しても低額であり、会員に不相当な負担を課すものともいえないから、手段相当性もある。
⑶ よって、本決定による特別会費徴収は、目的が重要で手段が目的と実質的関連性を有しているといえる。
4.以上より、憲法上許容される制約であるから憲法に反するとはいえない。
以上
2.感想
2.民法
1.答案
〔設問1.〕
1.DのB、Cに対する請求の根拠は、所有権(206条)に基づく返還請求としての甲4階、5階の明渡請求である。
⑴ 要件は、➀本人所有②相手方占有である。
⑵ Dは甲のもと所有者Aとの間で2022年3月1日に甲を目的物、代金を5億円とする売買契約(555条)を締結している。よって、現在甲はDが所有しているといえる(➀充足)。現在、甲4階、5階はB、Cが占有していることから②も充たす。
⑶ よって、請求の要件をみたす。
2.これに対して、Bは賃借権を主張して、占有権原があると反論する。
BはAとの間で賃貸借契約(601条)を締結(以下「本件賃貸借契約」)している。そして、本件賃貸借契約の目的物は甲4階、5階であるから本件賃貸借契約は「建物の賃貸借」といえ、2021年6月1日に引き渡しを受けていることから「引渡し」(借地借家法31条)があったといえる。よって、Bは「借地借家法...対抗要件を備えた」(605条の2第1項)といえ、2023年3月1日に甲を「譲渡」されたDに賃貸人たる地位は移転する。
3.CはBとの間で2022年6月1日から甲5階を目的物とする転貸借契約(以下「本件転貸借契約」)を締結している。Cはこの転借権を占有権原としてDに対抗することが考えられる。
4.これらのBCの反論に対して、Dは、本件転貸借契約は無断転貸であるから612条1項2項よりBCの主張は認められないと再反論する。
⑴ 賃貸借契約は、売買契約等とは異なり、一回給付的性質ではなく継続した状態を維持することをその性質として備える契約である。そして、この継続状態の維持の基礎となるのは当事者間の人的関係であること、契約の性質からして簡単な解除を認めるのは妥当ではないことから導かれる法理が信頼関係破壊の法理である。612条の転貸借の制限はまさに信頼関係破壊の法理の表れであるといえる。そこで、612条に該当する場合は原則として契約解除ができるが、信頼関係が破壊されていないといえる特段の事情がある場合には、612条を根拠に賃貸借契約の解除はできないと考える。
⑵ 本件では、Dは甲を購入するときに4階がスポーツショップとして利用されており、5階がスポーツバーであることを認識している。そして、その上で甲を購入している。そうだとすれば、本件賃貸借契約において目的とされた甲4階5階をスポーツショップとして利用するということについての信頼はDについては生じていないといえる。
⑶ よって、甲4階5階の使用形態がスポーツショップとして使用されるということについてのDの信頼が認められない以上、5階をスポーツバーとして利用している状態は信頼関係が破壊された状態とはいえず、信頼関係が破壊されていないといえる特段の事情があるといえる。以上より、DはBCに612条による解除主張はできない。
5.以上より、BCの占有権原が認められるため、Dの請求は認められない。
〔設問2.〕
1.Cの請求は、必要費の償還請求(608条1項)である。
⑴ 「必要費」とは賃貸目的物の使用収益ができなくなる瑕疵の修補代金等、使用収益に必要不可欠な費用をいう。
⑵ 本件では、甲の屋上に亀裂が生じている。屋上の亀裂によって雨漏りがあれば、5階をスポーツバーとして使用することは困難になるため、亀裂の補修費用200万円は使用収益に必要不可欠な費用といえる。
⑶ よって、補修費用200万円は「必要費」に当たる。
2.もっとも、Bが無資力の場合、Dに請求することができる。なぜなら、必要費償還請求は賃貸人が負うべき債務を賃借人が代わりに負っているものであるところ、BC間の転貸借契約はBD間の賃貸借契約の上にあるものであり、大本の賃貸人はDだからである。
以上
2.感想
3.刑法
1.答案
問題1.
1.XがAに組み付いて頭から床に思いっきり投げつけた行為に傷害致死罪(205条)が成立しないか。
⑴ 「傷害」とは、人の生理的機能侵害をいう。AはXの行為によって頭部打撲を負っており、生理的機能が侵害されていることから「傷害」にあたる。そしてAは死亡していることから「人」が「死亡」している。
⑵ 「よって」といえるか。傷害致死罪は傷害罪の結果的加重犯であることから、傷害行為と死亡結果との間に法的因果関係が認められるのであれば、すなわち傷害行為の有する危険が死亡結果として現実化したといえる場合には、因果関係が肯定され、「よって」といえる。
本件では、大学の柔道部キャプテンのXが自身よりも身長が15cm低く、体重が25kgも軽い中年男性Aを頭から思いっきり床に投げつけている。この行為は、人の死亡をいう結果を発生させる危険性の高い行為である。また、実際にAはXの行為によって頭部打撲を負い、それに起因する急性硬膜下血腫によって死亡しているため、Aの死亡結果はXのかかる行為の危険が現実化したといえる。
以上より、Xの行為とAの死亡結果には因果関係があるといえる。
⑶ また、Xは故意(38条1項本文)に欠けるものもないことから、故意が認められる。
2.Xの行為は正当防衛(36条1項)として違法性が阻却されないか。
⑴ 「急迫不正の侵害」とは、刑法上違法な法益侵害が現存しているか間近に迫っていることをいう。
⑵ 本問では、Aは気が動転してゴルフクラブを思わず強く握りしめているだけであって、誰かに危害を加える意図を有してなかったことから、Xに対して刑法上違法な法益侵害が現存しているとも間近に迫っているともいえない。
⑶ よって「急迫不正の侵害」なく、正当防衛は成立しない。
3.もっとも、Xは正当防衛だと誤信して本件行為を行っていることから、責任故意が阻却されないか。
⑴ 故意責任の本質は反規範的人格態度に対する道義的非難にある。そこで、行為者の主観を基準にして正当防衛が成立しているのであれば、反対動機の形成可能性なく、故意責任を問うことはできない。
⑵ 検討
ア.XはAがゴルフクラブを強く握りしめたことから、Aの体に力が入ったことを認識している。そして、XはAが強盗犯と考えていることから攻撃してくるように考えていると思われる。よって、Xの主観では「急迫不正の侵害」があるといえる。
イ.そして、Xは自分が攻撃されないために本件行為を行っていることから「自己」「の権利を防衛するため」に本件行為を行っているといえる。
ウ.「やむを得ずにした」とは、防衛行為の相当性をいう。防衛行為の相当性は、武器対等の原則を基本としつつ性別や体格等諸般の事情を考慮する。
本件では、Xは素手なのに対してAはゴルフクラブという攻撃力の高い道具を有している。しかし、上述の通りXはAに対して体格年齢共に優位にある。そして、XがAに組み付いた時点でAの動きを制しており、この時点で防衛行為としては十分であったといえるし、それをXが認識できたといえる。それにもかかわらず、XはAを床に投げつけており、Xの主観を基準にしても相当性のある防衛行為とはいえない。
以上より、「やむを得ずにした」とはいえない。
⑶ よって、Xの主観を基準にしても正当防衛は成立せず、責任は阻却されない。
4.以上より、Xは傷害致死罪の罪責を負う。なお、正当防衛状況において多少の行き過ぎは非難できないという理由から過剰防衛についての刑の減免を規定する36条2項は、誤想防衛の場面でも妥当するから、36条2項準用によって、Xは刑の減軽がされうる。ただし、過失犯との均衡から刑の免除までは認められない。
問題2.
1.XがAの首を両手で数分間にわたって強く締めた行為は、Aの死亡という殺人罪の構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為である。また、この行為による窒息死によってAは死亡しており、Xに故意(38条1項本文)も認められることから、Xは殺人罪(199条)の罪責を負う。
2.XがAのスマートフォンとシステム手帳を持ち帰った行為に窃盗罪(235条)が成立しないか。
⑴ 「他人の財物」とは、他人の所有物をいう。Aは死亡しているが、Aの相続人に所有権は移転していることからAのスマートフォンとシステム手帳は「他人の財物」に当たる。
⑵ 「窃取」とは、他人の占有を排除して自己又は第三者の占有下に移転させることをいう。
ここで、Aが死亡していることから、Aのスマートフォンとシステム手帳に占有が観念できるか問題となる。この点、原則として死者に占有は認められない。しかし、殺害した者が殺害された者の物を持ち去るときには、死亡した者の生前の占有が継続していると考える。
本件では、XはAを殺害していることから、殺害後のAのスマートフォンとシステム手帳の占有は、Xとの関係ではAの占有継続が観念できる。よって、Aのスマートフォンとシステム手帳を持ち去ったXは当該物についてAの占有を排除して自己の占有下に移転しているといえる。
よって「窃取」に当たる。
⑶ 故意について欠けるものもないことから故意は認められる。
⑷ 窃盗罪では、故意に加えて不可罰の使用窃盗の区別から求められる➀権利者排除意思と、毀棄罪との区別から求められる②利用処分意思からなる不法領得の意思が必要である。
本件では、XはAのスマートフォンとシステム手帳をAの占有から排除しようとしていることから権利者排除意思が認められる(➀充足)。利用処分意思については、確かにスマートフォンも手帳も破壊する意思をもって持ち帰っていることから、認められないようにも思える。しかし、Xはこれらを破壊することで自分とAの関係を知られないようにしようとしていることから、その物の効用にしたがった利用をする意思があるといえ、利用処分意思が認められる(②充足)。
よって、不法領得の意思も認められる。
⑸ よってXは窃盗罪の罪責を負う。
3.以上より、Xは殺人罪と窃盗罪の罪責を負い、これらは併合罪(45条前段)となる。なお、キャッシュカードについては、暗証番号を知らない以上、利用処分することができないため問題とならない。
以上
2.感想
4.刑事訴訟法
1.答案
設問1.
小問⑴
検察官処分権主義(247条)などが代表するように、刑事訴訟は当事者主義的訴訟構造を取る。そして、裁判は訴因の存否について争われ判断が下される。そこで、訴因の機能は一次的には審判対象画定機能にあり、二次的には被告人の防御権告知機能を有する。そこで、312条1項による訴因変更が必要な場合とは、まず審判対象画定に必要な事実の変動があった場合をいう。審判対象画定に必要な事実の変動がなかったとしても被告人の防御にとって不意打ちとなるような事実変動がある場合には、原則として訴因変更を要する。もっとも、審理経過に照らして被告人の不意打ちとならない特段の事情がある場合には、例外として訴因変更は必要ない。
小問⑵
本件の訴因の基礎となる事実はXが令和5年1月10日午後10時20分頃にH市I町2丁目3番4号所在のX方において、V1を絞頸して殺害したというものである。そして、この事実は嘱託殺人罪(刑法202条後段)も裁判所の心証である殺人罪(199条)でも同一であるから、審判対象画定に必要な事実の変動があったとはいえない。
もっとも、嘱託殺人罪と殺人罪はV1の嘱託の有無によって罪責が変わるものであるから訴因変更なくかかる認定を下すことは被告人の防御にとって不意打ちとなるといえる。また、嘱託の有無について争点になっていると考えられないことから審理経過に照らして被告人の不意打ちとなる特段の事情もない。
よって、訴因変更をせずに裁判所は殺人罪の認定をすることができない。
設問2.
まず、問題となる住居侵入罪(刑法130条前段)と窃盗罪(235条)の実行行為は、Aが令和5年2月3日午後11時30分頃に金品窃取目的でH市J町3丁目4番5号所在のA方に侵入し、現金153万円及び時計1個を窃取したというものである。そして、これはYがAの共同正犯であるかあるいは幇助犯であるかに関わらず同一であるから審判対象画定に必要な事実の変動があるとはいえない。
しかし、訴因と裁判所の心証はYの関与方法については共同正犯としての関与なのか、あるいは車を貸した幇助犯にとどまるのかという違いがあり、この違いは正犯となるか従犯となるかの差があるため、被告人の防御にとって不意打ちとなる事実の変動があるといえる。
もっとも、本件では公判において共同正犯評価することができるかが争点となっている。そう考えると、共犯関係についての主張立証を当事者は尽くしたといえる。そこで、裁判所が共同正犯ではなく幇助犯と認定したとしても、幇助犯と共同正犯は広義の共犯として類似関係にあるため、審理経過に照らして被告人の不意打ちとならない特段の事情があるといえる。
よって、裁判所は訴因変更をすることなく幇助の認定をすることができる。
設問3.
1.公訴事実の同一性の判断にあたっては、基本的事実関係の同一性を検討し、その真偽が不明な時に補充的に両訴因の非両立関係を検討する。
2.本件での基本的事実関係は令和4年9月5日午後10時頃、H市K町4丁目5番6号所在のスナックLにてBからCに所得税滞納処分である差押え物件の公売を延期するように請託を受け、その謝礼として30万円を供与されたというものである。しかし、これについてのAの関与形態が不明なため、基本的事実関係の同一性の真偽が不明である。
そこで、両訴因の非両立関係を検討するに、旧訴因は収受賄賂罪(刑法197条1項)であり、新訴因は贈賄罪(刑法198条)である。これらの罪は、賄賂を受け取ったのか、あるいは賄賂を供与したのかという点で違いがあり、これを1人が行ったということはできない。よって、両訴因は非両立関係にあるといえる。
3.以上より、両訴因間に公訴事実の同一性が認められる。
以上
2.感想
5.民事訴訟法
1.答案
問1.
小問⑴
1.Xの後訴主張は既判力(114条1項)によって遮断されないか。既判力とは、前訴確定判決が後訴に有する拘束力をいう。その根拠は、弁論を自由にできたことによる自己責任、すなわち、手続保障による自己責任にある。そこで、基準時は、事実審の最終口頭弁論終結時である。また、既判力の趣旨は、不当な蒸し返し防止にあるから、既判力が生じる「主文に包含するもの」とは、訴訟物たる権利義務関係の存否をいう。そして、この権利義務関係の存否と同一・矛盾・先決関係にある主張を後訴においてすることはできない。
2.本件において、前訴訴訟物は、旧訴訟物理論によれば訴訟物は実体法上の請求権ごとに判断される。前訴において、Xは所有権に基づく明渡請求訴訟を提起している。そして、これは棄却されていることからXのYに対する所有権に基づく明渡請求権の不存在について既判力が生じている。一方、後訴は賃料不払いを理由とする賃貸借契約終了に基づく明渡請求であるから、これは、賃貸借契約の解除による原状回復請求権(民法541条、545条1項本文)である。そこで、前訴と後訴の訴訟物は異なるため、同一関係になく、矛盾先決関係にもない。
3.よって、既判力に抵触せず、後訴主張は遮断されない。
小問⑵
1.まず、前訴既判力は、XのYに対する所有権に基づく明渡請求権の不存在について生じている。そして、Yが後訴で主張しているのは、甲地についてのAY間の契約についてであるから、同一・矛盾・先決関係になく、既判力の抵触はない。
2.もっとも、争点効によってYの主張は認められないのではないか。
⑴ 争点効とは、当事者間で争点として争われ、裁判所がその争点について審理し下した判断について生じる拘束力である。そこで、争点効が認められるためには、➀当事者間で争点として争われ、②裁判所がその争点について審理し判断したといえるのであれば、その判断について拘束力が生じる。
⑵ 本件では、前訴において争点となったのは、AY間で15年前賃貸借契約が締結されたか否かである。そこで、Yの土地占有権原について争点となり(➀)、裁判所がそれについて審理し、賃貸借契約の存在について判断している(②)といえる。
⑶ よって、AY間の契約が賃貸借契約であることについて争点効が生じているといえる。
3.以上より、後訴におけるYの主張は遮断される。
問2.
1.Xの請求は将来給付の訴え(135条)である。将来給付の訴えが認められるためには、請求適格と事前請求の必要性が認められなくてはならない。
2.請求適格
⑴ 請求適格があるといえるためには、➀債権の基礎をなす事実が既に存在し、その継続が予測され②債権の変更消滅など債務者にとって有利な事情があらかじめ明確に予測しうる事情に限られ③請求異議の訴えによってのみ執行を阻止しうるという負担を債務者に課しても格別不当とは言えない場合に認められる。
⑵ Yは甲地を不法占有していることから、賃料相当額の支払い請求の基礎をなす事実は既に存在しているといえ、Yが占有し続けることでかかる損害は発生し続けるからその継続が予測されるといえる(➀充足)。また、かかるXの請求は、Yが出ていくかXと賃貸借契約を締結するなどによってのみ消滅するものであるから、債務者にとって有利な事情があらかじめ明確に予測しうる事情に限られるといえる(②充足)。そして、YはXに対して現在占有していないことの主張さえすれば請求異議の訴えは認められることから、Yにとって格別不相当な負担とはいえない(③充足)。
⑶ 以上より、請求適格が認められる。
3.事前請求の必要性については、Yが支払いを拒むことも考えられるし、どのみち発生するであろう債権であることから認められる。
4.よって、訴えの利益はあるといえる。
以上
2.感想
6.会社法
1.答案
設問1.
1.本件名義書き換え請求は、譲渡制限株式を譲り受けたことを理由とする請求である。本件株式は譲渡制限株式であるから、Eは「譲渡制限株式の株主」(136条)にあたる。そして、Eは会社に対して承認するか否かの決定の請求をしている。そこで、甲社がこの請求の承認をしているといえるのであれば、「136条の承認を受けている」(134条1号)といえるため、「共同」(133条2項)して本件名義書き換え請求を行っているEFの請求の通りに甲社は名義書き換えをしなくてはならない(133条1項)。
2.では、本件株式譲渡の承認を甲社がしているといえるか。
⑴ 甲社は定款で株式譲渡の取得は、取締役会の承認決議によることを規定しており、甲社は取締役会設置会社であるから甲社の本件株式譲渡の承認は取締役会によってなされる(139条1項かっこ書き、ただし書き)。そして、譲渡制限株式の趣旨は、会社にとって好ましくないものが株主となることを阻止することで会社の健全な運営を図るという点にある。もっとも、承認を待つ間は、譲受人は不安定な地位におかれるため、取引の安全の保護も図るべきである。そこで、承認請求から相当期間が経過してもなお承認がされない場合は、承認されたとみなされると考える。
⑵ 本件では、Eによる承認請求から1か月も経過しているにも関わらず、甲社はその決定をしていない。1か月という期間は、甲社が承認をするかどうか決めるのに十分な機関であるから、承認請求から相当期間が経過してもなお承認がされないといえる。
⑶ よって、承認があるものとみなされる。
3.以上より甲社は本件名義書換請求に応じなければならない。
設問2.
1.本件選任決議の効力
本件選任決議は、株主Fではなく、Eに招集通知が送られている。株主総会の招集通知は「株主」に対して通知しなければならない(299条1項)が、これがなされていないといえる。よって、「株主総会等の招集の手続」が「法令」「に違反」(831条1項1号)しているといえる。したがって、取消自由となる。
2.本件剰余金配当の効力
剰余金は、株主たる地位に基づいて配当されるものである。この配当は株式の自益権たる性格のものであるから、剰余金配当が無効だとしても、当該剰余金配当を受けた者との間で無効とし、株主は別途不当利得返還請求(民法703条)をすればよいから、全体として無効とはならない。
以上
2.感想
7.質問箱のお知らせ
ご意見。ご感想はこちらに是非
Querie.meで質問を募集しています!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?