クリップディテクタで音楽のあら捜しすることのバカバカしいところ
さてまあこういうふうに0.5Hzの三角波のテストトーンを作ります。なんでそんなに低い三角波なのかっていうとわかりやすくするためです。当然スピーカーやヘッドフォンで鳴らそうにも計測用機器でもない限りDACのフィルタに引っかかって多分鳴らないもんです。鳴ったところで聞こえません。
ゲインを盛った後、16bitで書き出してクリップさせます。クリップしました。おめでとう。
んでもってそのファイルを-1dBしたファイルも用意します。
でもってAudacityのクリップディテクタで測ってみるとこんなかんじ。
後者のほうは反応しません。
ホントだよ。というGIF。
更に過剰にクリップさせてみます。倍音ができてる。ようするに音のキャラが変わっちゃってる状態です。
みんな知ってると思うけどゲイン下げたって一度変わっちゃった音をもとには戻せません。ディストーションペダルをつないだギターからクリーンギターを再現する程度に難しい話です。この2つをAudacityのクリップディテクタに並べると
こんなふうにやっぱり下げた方は検出されません。
だからマスター後の2mixの時点で本当はクリップしてるけど0dBに張り付いた音をクリップとみなすクリップディテクタで音質を測ろうとするのはそもそもの間違いです。だいたいこれじゃトラックにリミッタやコンプ挿してレベリングしてるときに割れた音を検出できません。
あと、悪質なレコードレーベルの場合は単純に-0.5dBくらいしたような音源をリリースしているかもしれません。
あとクリップしたところで変わったのか変わってないのかわかりにくい音、代表的な例をあげると立ち上がりもリリースも高速で可聴域すべてが出ているもの、例えばインパルスみたいな音はクリップしたところで誰が聞いたってわかんないし、最近のリミッタは割れてないように聞こえるように設計されてるもんなのでたとえクリップを検出しても違いがわかんないことがあります。
こんなやつです。意地悪クイズとしてクリップしてる音とそうでない音をランダムに混ぜたもんをおいておきます。クリップしてるのは何番目の音でしょうというやつです。耳だけで違いがわかるやつはちょっとすごいです。
さあ苦しめ!
あとは圧縮音源を作る際にエンコーダのせいで音が変わっちゃってクリップとか、なんで圧縮音源で計測すんのかよくわかんないやつもいたり、最初からたとえそんな音質だったとしてもゲイン下げりゃクリップディテクタは反応しなくなるので本当に無意味です。
あと、サンプル間ピークによってクリップするというのもあります。コレに関してはwavやaiffなどのPCMデータではパッと見わかりません。
わかんないからタチがわるく、ソレ用のリミッタやアナライザなんかも最近では安く売られてたり無料で落としてこれたりします。
リミッタを使ったことがある人はシーリングいって出力の際に-0.5とか-0.3dBするための機能がついてるのを知ってるかと思いますが、あれはそういう感じで波形の変化やサンプル間ピークの影響で書き出しの際にクリップするのを防ぐためにあります。古い手法ではあります。
サンプル間ピークというのはデジタルの波形データをDACに送ったりリサンプルするときに、CDだったら1/44100秒刻みで音を点としてサンプルするわけですが、リサンプルやアナログ信号化するときにどうしてもその点と点を線で繋げなければいけない(ないしは線があるところに点を置く)わけで、それが対処しないとピークをはみ出して割れるというものです。
(だからそういうサンプル間ピークを割れてないように聞こえさせるリミッタはリスニングに有効だよね)
そういうわけで、最近のアニソンとか劇伴の音質がクソで、スーパーの隅っこで売られてるちょっと安い海苔みたいな波形なのはわかるけれど、それをクリップディテクタで音質を箚し測ろうとするのはおかしいよっていう説教でした。サンプル間ピーク、略してサンピー。俺は時々するよ。薄い本読みながら。一人で。
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