12/6の枝野代表申し入れは何だったのか

 2019年12月6日、立憲民主党の枝野代表が国民民主党、社会民主党、衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」、無所属フォーラムの4党派に行った申し入れに対して様々な解釈がなされています。
 そこで、一文ずつ読み解いていくことで、この申し入れで枝野代表が行った申し入れは具体的になんだったのか理解していこうと思います。
※先に述べておきますが、これは自分の解釈で、正しさは保障できません。
 異論反論等はtwitterに送ってくれると助かります。
 今後、記事修正や僕自身の考えを改める可能性もあります。

申し入れ内容原文と要約

 では、申し入れの文言について確認してみましょう。

 第200回臨時国会では、皆さんのご理解をいただき、共同会派を結成して大きな構えで政府・与党と対峙することができました。
 二閣僚を事実上の引責辞任に追い込み、英語共通テストを中止させ、さらには「桜を見る会」に関する数々の疑惑を浮き彫りにすることができたのは、他の野党会派の理解と協力を得ながら、共同会派として大きな構えで結束し、多様な皆さんの力、持ち味を発揮して国会対応にあたることのできた成果です。また、共同会派としての運営を進める中で、会派内での相互理解と信頼関係の醸成も進みました。

 立憲民主党は、これまで、理念政策をともにする方が個人として入党いただけるなら歓迎するとの立場でした。
 しかし、この間、共同会派結成にあたっての合意に基づき、一体となった国会対応で成果をあげることができたことは、会派を共にする皆さんが、それぞれ寛容な心でご尽力をいただいた結果だと感謝しています。このことを通じて、私は、会派を共にする皆さんとは、十分、理念政策の共有をしていただいていると考えます。

 以上のことを踏まえ、今般、私は、より強力に安倍政権と対峙し、次の総選挙で政権を奪取して『まっとうな政治』を取り戻し、国民生活と公平公正な社会を守るため、会派結成にあたって合意した考え方に基づき、共同会派を共にしていただいている政党、グループの皆さんに幅広く立憲民主党とともに行動していただきたいと思うに至りました。
 安倍政権に代わって政権を担いうる政党を築き上げ、次期総選挙での政権交代を現実のものとするため、会派を共にする、国民民主党、社会民主党、社会保障を立て直す国民会議、無所属フォーラムの皆さんに立憲民主党とともに闘っていただけるようお呼びかけいたします。

 年明け早々にも解散総選挙の可能性があります。解散がない場合でも、通常国会ではさらに強力な体制で国会論戦に挑み、安倍政権を倒す闘いを進めていかなければなりません。
よろしくご検討いただきますようお願いいたします。

引用元:共同会派代表者会談で枝野幸男代表より各党会派へ申し入れ

 一節ずつ要約すると

・共同会派は、成果を上げ、会派内の相互理解と信頼関係の構築が進んだ

・今までは理念政策を共有する”個人”の入党だけを認めていたが、現在は会派全体で理念政策を共有できていると考える

・会派を共有する4党派に立憲民主党とともに闘うように呼び掛けた

・解散があろうとなかろうと、さらに強力な体制で闘いを進める必要がある

となります。

立憲民主党のスタンスの変化

 僕が注目しているのは、2節目で、「立憲民主党は、これまで、理念政策をともにする方が個人として入党いただけるなら歓迎するとの立場でした。」を「しかし」で受けています。今まで、立憲民主党は個別入党だけを認めて(政党単位での合流は認めずに)党勢を拡大してきました。このこれまでの方針からは転換すると述べているわけです。

 この代表者会談後に行った記者会見でも「社民党、並びに国民民主党、それから岡田さんたちの会派に党全体として来てくれと言ってるのでしょうか?それとも、一人ずつある意味で来たい人だけ来てくれという意味なのでしょうか?」という質問に対して、「あえて呼びかけの中で、これまで個人として入党頂けるなら歓迎するという立場でした。『しかし』のことのあとで、国民民主党、社会民主党、社会保障を立て直す国民会議、無所属フォーラムの皆さんに、という」

 では、どのような方針転換をしたのでしょうか。それは無論、個別入党からの転換なので、政党単位での入党も認めたということでしょう。
 現に政党単位での入党を肯定するための理論が申し入れのなかで語られています。

 立憲民主党は、これまで、理念政策をともにする方が個人として入党いただけるなら歓迎するとの立場でした。
 しかし、この間、共同会派結成にあたっての合意に基づき、一体となった国会対応で成果をあげることができたことは、会派を共にする皆さんが、それぞれ寛容な心でご尽力をいただいた結果だと感謝しています。このことを通じて、私は、会派を共にする皆さんとは、十分、理念政策の共有をしていただいていると考えます。

 大前提として、政党は理念政策を共有するものの集まりである、というのが立憲民主党のスタンスです。(おそらく他の政党もそうでしょうが)では、どうやって理念政策を共有しているのかを判別していたのでしょうか。
 いままでは、個人の意思に基づいた入党であれば、政策理念を共有しているであろうという理論で、個別入党のみを認めていました。
 では、これからは、というと、「私は、会派を共にする皆さんとは、十分、理念政策の共有をしていただいていると考えます」と述べているわけです。つまり、理念政策を共有をしているかどうかの判別は、個別入党せずとも、この臨時国会でともに活動していく中で、共有しているという判定ができた、と述べているのです。
 だから、個別入党のみを認めるという手段は変わったが、その目的である理念政策を共有している議員だけの入党だけを認めるという点では従来通りというわけです。

構成党派に呼び掛けた内容

 では、なぜ、枝野代表は「合流」という言葉は使ってないと一部報道をわざわざ否定したのでしょうか。
 これはいくつか考えられますが、一つは「合流」という言葉が対等合併・新党立ち上げを想起されるからでしょう。それは明確に否定したわけです。
 一方で、代表者会談後の記者会見で、枝野代表は何度か、こちらからの申し入れは、各代表者にご理解いただいて持ち帰っていただいたと考えている、と返答する場面がありました。
 では、国民民主党はあの申し入れをどのように受け取ったのでしょう。

 このように受け取ったわけです。これを間違いでないと表現しているのであれば、合流の呼びかけで間違いなさそうです。おそらく、一連の「合流」という言葉に関する発言は、報道各社と国民民主党の用い方の違いを機敏に感じ取ったのでしょう。

 また、「合流」という言葉を否定した理由。もっと言うと、わざわざ各代表への呼びかけに政党単位での入党ではなく、幅広くともに闘うといった回りくどい表現をしたのか。これは、あの呼びかけが、政党単位での入党に矮小化されるのを嫌ったからでしょう。では、政党単位での入党以外に、どんな「ともに闘う」在り方があるのかとすれば、例えば、統一名簿や共同会派の続行です。

 この呼びかけが統一名簿や共同会派だけに限定されない理由も述べておきます。
 なぜ、統一名簿だけに限定されないのか。これは「年明け早々にも解散総選挙の可能性があります。解散がない場合でも、通常国会ではさらに強力な体制で国会論戦に挑み、安倍政権を倒す闘いを進めていかなければなりません。」と述べていることから、分かるように国会論戦での在り方についても言及しているからです。
 共同会派の続行だけに限定されない理由。それは「共同会派を共にしていただいている政党、グループの皆さんに幅広く立憲民主党とともに行動していただきたいと思うに至りました」からわかります。「共同会派を共にしていただいている政党、グループの皆さん」に対して「幅広く立憲民主党とともに行動していただきたい」と思うに至った。つまり、「共同会派を共にする」という行為自体は「幅広く立憲民主党とともに行動する」には含まれていないのです。

結論

 結局、あの申し入れは何だったのか。
 まず、「個別入党のみを認める」から共同会派の構成党派に限り「政党単位の入党も認める」という立憲民主党のスタンス変化の表明。
 そのスタンスの変化に伴い、共同会派の構成党派に対して、政党単位の入党を含めた今後の選挙及び国会での連携を呼び掛けた。
 僕はこのように受け取りました。

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