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2023年、心に残った10冊(前編)

前述の通り、私は結構本を読む方だと思うのだけれど、今年読んだ本を振り返ってみると、圧倒的にノンフィクションが多い。分野はいろいろだけど。小説も好きだし、好きな作家さんも結構いるのですけど、フィクションは読んでる時は没頭してても、読み終わると忘れちゃう、というのもあるかも。。。前置きはこの辺で、今年読んだ本(今読み途中の本もありますがそれは除く)で特に心に残った本を10冊選んでみました。最初は5冊選ぼうとしたけど、5冊選ぶのは難しすぎたので、倍にしました。

①「一汁一菜でよいという提案」by 土井善晴
去年ぐらいから私は土井さんのファンで、中島岳志さんとの対談も読みましたが、この本にはやっぱり土井さんの哲学のエッセンスがぎゅっと込められていると思いました。私は常々「美味しいものは世界平和に貢献している」と思っていますが、まさに彼の本を読んでると、料理すること、食べることは本当に人間の根源的なところ、美しい部分につながっているよなあ、と思います。ちなみに、私は彼とクリス智子さんのポッドキャスト「料理を哲学する」も大好きで、彼の関西弁を聞いてるだけで幸せな気分になれます。日本ってやっぱりいいなー、日本人でよかった、としみじみ思える一冊。

②「ボーダー:移民と難民」by 佐々涼子
これは仕事関連本なのですが、日本ではまだまだ馴染みが薄いと思う方の多い、難民や移民の実情を描き出しています。最後の方に出てくる「難民たちのサンクチュアリ」というのが、鎌倉にあるアルペ難民センターで、私も去年お邪魔して、スタッフの方々の献身的なサポート、そして地元の方達のボランティアとしての熱心なお手伝いに大変感銘を受けました。本当に偶然なのですが、今朝のNHKのニュースにこの佐々さんの話が出てきて、彼女は希少ガンで余命数ヶ月と言われているのだと知りました。ファンの方々に書き続けて欲しい、と言われながら、迷い、悩んでおられる姿も印象的でした。

③「サル化する世界」by 内田樹
内田樹さんも、私がなんとかっこいいおじさま(73歳とは思えず)と敬愛している先生の一人。フランス文学者でありながら、武道家でもあるというマルチな才能(はい、私はそういう人に弱いです)をお持ちで、彼の書くものには武道家らしい一本筋が通っている感がありながら、すごく柔軟。この本の中ですごく好きな一節:「倫理というのは別に難しいことではない。今ここにはいない未来の自分を、あるいは過去の自分を、あるいは『そうであったかもしれない自分』を、『そうなるかもしれない自分』を、『自分の変容体』として受け入れることである。」

④「さらば、男性政治」by 三浦まり
最初に断っておくべきだったかもしれないけれど、私はジェンダー問題に強い関心を持つフェミニストなので、ジェンダー関連の本もよく読みます。何せ日本を去った理由の一番大きなところが、こんな男女差別の激しい国では自分の可能性は伸ばせないと早々に見限ったからですので。。。この本では、男性にほぼ独占された永田町というのが、偶然の産物でも何でもなく、構造的な問題によってつくられていること、そしてそれを打ち砕くために何が必要かというのが鮮やかに説明されています。政治が男性に独占されてる限りは、この国に未来はない、とかなり確信を持って思います。

⑤「暇と退屈の倫理学」by 國分功一郎
この本はベストセラーになってたので、読まれた方も多かったと思います。私にとっては、まるで自分のことを言われているようで、目から鱗の本でした。ちょうどこの本を読み始めた頃、私は仕事のことで悩んでいて、まあ要するに、去年恐ろしく忙しかったのと比べると「何となく退屈」だったわけで。ちょうどアフガニスタンに応募できそうな仕事があったので、半分本気で考えたりしてたのですが、はっと正気に戻らされました。元々、母にも「あんた気が多い」と言われるほど興味の範囲が広く、いつも新しいことにチャレンジしていないと気がすまない性格ではあるのですが、この本を読みながら、パスカルの言う「部屋にじっとしていられないことの問題点」を噛みしめました。。。

最初の5冊、いかがでしたでしょうかー。なんか真面目な本が多いですよね。やっぱ真面目な性格なのでしょうね。あとやっぱり、今この現代に起こっていることを理解したいという欲求から本を選んでる気もします。後編もお楽しみにー。



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