ルイスの教えてくれたこと(1)


ルイスは私の友だちで、
体はなくて、声だけで、
おそらく私の絵空事。

ルイスがほんとは誰なのか、
私にだって、わからない。

わからないけど、それでいい。
私はルイスが好きだから。

ルイスと初めて会ったのは、
私がくよくよしてたとき。

そのころ私はふらふらで、
失恋したてのほやほやで、  

私の拙い愛情も、
時間もお金も約束も、  

綺麗に全てを持ち去って、
私をひとりにしたひとを、  

いっしょうけんめい恨んでた。

あれあれなんだかおかしいな。

どうしてこんなに辛いんだ?  

私が相手にあげたのが、
ほんとにほんとの愛ならば、
こんなに苦しいはずがない。

こんなに惨めなはずがない。

ああそうか。  

私がいままであげたのは、
優しさなんかじゃなかったね。

欲しいと思って欲しかった。  

“与えてあげた”を奪ってた。  

すべてはここから生まれてたんだ。

悪いと思っていたものも。  

清いと思っていたものも。  

けがれてる…  

全くすべてがけがれてる…   

するとその時どこからか、 
なにかを諭すというよりも、
ただそうだからというふうに、
誰かがそっと、ささやいた。  

“すべてが生まれているのなら
 けがれているとは言えないよ” 

私はすんなり受け入れて、
なるほどそうかとうなずいて、
しばらくたって、はっとした。

ああついに、
頭がおかしくなっちゃった。

おかしな声が、聞こえるよ。

まあいいや。

ありがとう。

おかげで少し、落ち着いた。

名前ある?

“ルイスだよ”

その日から、
私はルイスとつながった。  

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