函館旅行記(その4)
5月末頃から生活が忙しくすっかり更新が滞っていた。函館旅行記の続きを書く。実はこの旅行のサビに当たる部分はここからなのだけれど、今回で仕舞いにしたい。
ひと月以上も前のことを思い出しながら書くから、意図せずして多分に脚色が入ると思う。何かを思い出すというのは、いまの心象のレンズ越しに、その事柄の色を塗り直したり、陰影をつけ直したりすることだと思う。繰り返し想起され幾重にも色を塗られた旅の様子は、あの日の像とは異なった様相をしているはずだ。
5月19日(日)午後
すこし買い物をした後、赤レンガ倉庫から自転車を駆って元町地区へ。几帳面に仕切られた区画に、函館山から港に向けて延々と伸びる坂道と立ち並ぶ洋館が印象的な観光スポット。
元町地区を見て回る前に、海を観に行こうという。カフェもあるらしい。道中、Angelique Voyageというパティスリーがあり、賞味期限30分を謳うクレープを食べる。スペシャリテらしい苺のミルフィーユにした。ふわりとしたクリームの甘みと苺の甘酸っぱさ、パイ生地の触感を、もちもちの生地で包んであっておいしい。
さすがに結構な傾斜があり舗装の行き届いていない坂道を漕ぐのは難儀したので、アシストをつけると、苦労していたのが嘘のようにすいすい進む。風を切って走る。観光客もあまり来ない場所なのか、車も道行く人々もなく自由だ。右を向くと景色がひらけて海が見える。同行者と「海だーー!」と叫び合う声を置き去りにする。
ティーショップ夕日というところに着く。湾を望む喫茶店。窓越しに浮かぶ船が見える。夕方が特に美しいそうだが、昼の海も負けず劣らず美しい。窓際の席に通してもらって煎茶とお茶請けをいただく。自転車をわーっと漕いでくたびれたところだったこともあり、おいしい。店内があまりに静かで過ごしやすくてうとうとする。
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のんべんだらりと過ごした喫茶店を後にして、元町の方へ向かう。スポットスポットに立ち寄りながらそのまま突っ切っていって立待岬まで行こうと話す。
元町公園に立ち寄り、函館の街を見下ろす。山に懐かれて海を抱え込んでいる。少し進むと正教会とカトリックとプロテスタントの教会が立ち並ぶ区画がある。宗派によって随分と意匠が違うなと今更思う。カトリック教会の風見鶏がかわいい。
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立待岬に近づくと風が強い。向かい風で上り坂だから、アシストがあってもきつい。海風だから肌寒い気もする。岩がごつごつしていて蒼い海から白波が打ち寄せている。かもめが鳴く。火曜サスペンス劇場だ!!と思う。設けられた柵にはイカのキャラクターがあしらわれている。
日の光にちらちらときらめく海の美しさは、人間をずっと超えているなぁという気がする。敵いようがないなと思う。当たり前のことだけれど。
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立待岬から市街地の方へ戻る。帰りは下り坂だから楽ちん。まだまだ時間はあるけれど、おなかも空いたしビールが飲みたくなったから自転車を返す。それから赤レンガ倉庫の方まで歩いて行って、函館ビヤホールへ。開拓使ビールというものを飲んだ。サイクリング後のビールは格別にうまい。
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ビヤホールで時間をつぶしてから、地元のお寿司屋さんへ行った。どうしてもイカと魚が食べたくて。そこでもサッポロクラシックと日本酒を飲んだ。お酒と魚介類の組み合わせはたまらない。
函館駅からバスで空港へ行く。お土産を荷物に詰め直しているときに、真っ赤に灼ける夕日を見た。祭りが終わるときの、まだまだおさまりそうにない昂りと、喧騒が止んだ道を行く寂しさに似た感情になる。
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おわり