函館旅行記(その1)

令和6年5月18日~19日、函館へ旅をした。その旅行記。


0.前日まで
 函館行きを計画したのは今年の3月。ANAのHPを眺めていて、たまたまリーズナブルな航空券を見つけた。とりあえず急ぎ2人分予約し、その後同行者に行くかどうかを訊くと、日程は空いているから行きたいと言うのでそのまま決済した。いつもひと月前くらいにしか旅行を手配しないから、新鮮な気持ちがした。

 はじめて道南に行くということで、下調べは入念に、計画を綿密に立てて、という気持ちだけがあって、結局、その前の日に函館のガイドブックを買ったほか、特に相談することも調べることもなく前日を迎えた。あっという間に来たなぁと思う。年々歳月が過ぎるのがはやくなる気がする。

 前日、荷物の準備のためにキャリーケースを開けると、地球の歩き方シリーズの北海道版が出てきた。昨年の3月に道東へ行くに際して購入し、どこに行ったかなぁと探していたものだ。昨年3月以来も何度か使っているのに、その間ずっと入っていたのかと思って、我が事ながら横着具合に呆れて言葉もない。お土産用の十分なスペースを確保しつつ、パッキングを済ませる。

 携行する本は、悩みつつもタリアイ・ヴェーソスの『氷の城』、イーユン・リーの『理由のない場所』、古井由吉の『辻』にした。以前フォロワーさんが、みんなの「抱きしめたい本」を知りたい、というようなことを言っていて、そのときには挙げ忘れていたのだけれど、『氷の城』も、『椿の海の記』や『もっと、海を─想起のパサージュ』などと並んで、そのひとつだなぁと思う。旅の伴とする本はスペースの関係もあっていつも悩むけれど、古井由吉は遠出するときにはいつも持って行く。他の本がなんとなくうまく馴染まないというようなときでも、古井由吉は虚心に読めるような感じがある。

 往路の便は12時台発で早くないとはいえ早く寝るに超したことはないのだが、気持ちがウキウキして眠れない。遠足の前日、楽しみで眠れなくなるタイプ。そのままベッドに転がっていて眠れるはずもないから、歩きに行く。好きな音楽をかけて口遊みながら(HM/HRではありません。)、2時間程度徘徊した。これから夏を迎えんとする季節は、渡る夜風がなつかしい。

1.5月18日(土)午前~空港まで~
 一度6時前に起きたが、さすがに早過ぎるし特にすることもないので、二度寝をして8時過ぎに起きる。Twitterを見ると白水社が9時30分からブックフリマを始める様子で、ならば余裕で羽田に間に合うなと思いキャリーケースを引きずって向かう。すこし早く着くも、既に待機列ができておりさすがの人気だなと感心する。そのまま列に並んだところ、たまたま通用口付近となり、社内の会話が漏れ聞こえてきた。そのやりとりによるとどうやらブックフリマ自体は他の店舗と同じく10時かららしい。10時20分くらいの電車に乗れば余裕を持って空港に着くから、すんなり通してもらえれば多分平気だろうと見込む。
 徐々に日が高いところにのぼり、日差しも強くなってきたなぁ、首筋が日焼けしそうだなぁとかぼんやり考えているうちに、前を見ると誰もいない。それまでは建物に沿うように並んでいたのが、同じ道路の日陰のある側へじりじりとずれていったのだろう。今更そっちに合流するのも恥ずかしいからと、強情にそれまでの場所に立ち続けていたのだけれど、後から来た人が見たら、キャリーバッグを携えたのがひとり列から外れている状態になっているわけで、並んでいるのかもわからないし、完全に浮いていたはず。せめて誰か声をかけてほしかったよ。
 10時よりほんのすこし前に開店となり店内に通される。ざっと店内を見回し、まずはエクス・リブリス等が並んだ海外文学コーナーを見る。ゾラの『パリ』、ボラーニョの『野生の探偵たち』は欲しいなぁと思うが、いずれも四六判2巻本で、当初の目当てに加えて買うと随分な荷物となってしまうので泣く泣く断念。
 目当ては『レーニンの墓─ソ連帝国最期の日々』。最近白水社が始めた「現代史アーカイブス」というシリーズにおける第1回配本に当たるものだ。同シリーズは、ピュリツァー賞受賞作等のノンフィクションの名作を集め後世に残すという意欲的な企画。次回の配本は『赤軍記者グロースマン』とのことで、楽しみでならない。これらを含めた第1期においては10点の刊行が予定されているようで、第2期、第3期と長く続いてほしい。
 『レーニンの墓─ソ連帝国最期の日々』上下巻を手に取り、せかせかとレジへ向かう。知り合いもレジに立っていて仕事しているんだぁと当たり前のことが頭に浮かんでちょっと笑ってしまう。会計担当の方から、今回のブックフリマの記念すべき第1号だと聞く。「ツイートしていいですか?」「もちろんです!」後で確認するとしっかりツイートされていた。まだちょっと他を覗く時間もありそうだったが、焦るのもいやでそのまま駅に向かった。
 都営三田線で三田まで行き、都営浅草線に乗換え。乗り換えた列車が1本早いもので、空港アクセス線に乗り入れないものだったので、品川駅で京急に再度乗り換えて、羽田空港第1・第2ターミナル駅まで。京急沿線はほとんどなじみがないけれど、電車から見えるまちの様子がどこかなつかしい気がして、いいまちなんだろうなと思う。今度近いうちに、この辺りをぷらぷらと散歩してみたい。
 11時過ぎに羽田空港第1・第2ターミナル駅に到着。着いたよと連絡をし、チェックインを済ませてから、ベンチに座って同行者の到着を待つ。20分ほどすると同行者も到着し、保安検査場をさっさと抜けて、出発までの間、軽食用に持ってきてもらったパンをかじりながらガイドブックを見て、どこそこに行きたいね、今日はこっちで明日はこっちかなと話をする。

(続く)

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