ながしまくんとおもちつき

小学校の同級生に、『ながしまくん』という男の子がいた。
彼はとても体が大きくて、いつも背の順では前から2、3番目に並んでいた私は、彼を見上げないと話ができないくらいだった。
ある年のお正月、学校で餅つき大会をすることになって、なかなか体験できない杵と臼を使って餅つきをした。
杵は体の小さかった私にはとても重く感じた。
みんなそれぞれ数回ずつ杵を振り上げては下ろした。
最後は力持ちのながしまくんに仕上げまでついてもらおうということになって、みんなで臼の周りを取り囲んだ。

普段は大人しくて無口なながしまくん。
みんな息を飲んでながしまくんの一挙手一投足に見入った。
ながしまくんが杵を振り下ろした瞬間。

杵は臼の縁に当たり、縁が大きくえぐれた。
木片が細かく砕け散り、餅に大量の木片が混ざってしまった。
手で取り除けるものは取り除いたけれど、すべては取り除くことができず、木片を除けながら食べることになった。

こんな出来事のおかげで、未だに私は杵と臼でついたお餅を食べるときには、あの時の木片が入っていなかと警戒してしまう。

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