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クマノミ・イソギンチャクの飼育や生態に関してのFAQ




●クマノミのエサ・餌付けについて



クマノミ類は人工飼料に餌付かない個体はいないくらい餌付けの簡単な種類です。
ほぼ全ての個体が入荷してから数日で餌付きます。
当店で与えているエサは、フレーク状や粒状の物です。

飼育環境やエサの種類が変わると、慣れるまでの数日間は何も食べないこともありますが、
人で例えると「一食ぬいた」程度のことで、健康への害はほとんど気にしなくても大丈夫です。



●クマノミとイソギンチャクの共生の組み合わせについて



海中での共生の組み合わせは、ほとんど例外なく決まっています。

カクレクマノミとハタゴ・センジュ
クマノミとシライト各タイプ・イボハタゴ・アラビアハタゴ
ハナビラクマノミと触手ロングタイプシライト・センジュ
セジロクマノミとアラビアハタゴ
ハマクマノミとタマイタダキ
(沖縄以外の海でのことはわかりません。)

飼育下でもこの通りの組合せが望ましいですが、
飼育環境や好みなどもあるので、異なる組み合わせの共生も「あり」かと思います。

異なる組合せでもちゃんと共生するかどうかは、実際にお見合いしてみないとわかりません。

当店では、様々な組合せで飼育していますが、共生するまでに数日かかる場合はあっても、ほとんどは共生しています。

1つのイソギンチャクに対して、1ペアまたは1ファミリー1種類との共生が基本です。
1つのイソギンチャクに、複数のペア・ファミリーや異なる種類のクマノミ類を共生させるのは良くありません。



●天然ペア(ファミリー)について



クマノミ類の天然ペア(ファミリー)は、海中で一つのイソギンチャクに共生していたものです。
雌雄及び血縁及び仲の良さは必ずしも定かではありません。
ペア(ファミリー)でもケンカすることもあります。



●クマノミ類の混泳・ケンカについて



クマノミ類に限らずケンカをする魚は珍しくありません。
ケンカをする理由は、主に縄張り争いです。
縄張りを持つ習性の魚は程度の差はありますがケンカをします。
これは本能ですので変えられません。

しかし、水槽内でもうまく縄張りさえ確保できれば混泳できるはずです。
ヤッコ類もチョウチョウウオ類もケンカしますが、それらの縄張りの範囲はどうなっているのでしょうか?
クマノミ類の縄張りはイソギンチャクの周囲です。
クマノミ類は縄張りの範囲が狭く分かりやすいのでうまく混泳させやすいように思います。
それぞれの個体/ペア/ファミリーにイソギンチャクを与えてやることで混泳できる可能性が高くなります。

特にケンカになりやすいのはメス同士で、メスは体も大きく力も強いので相手に与えるダメージも強く、半殺しにするまで激しくケンカをします。
一つのイソギンチャクには一匹のメスしか共生しないことから、一方を完全に排除する為だと考えられます。
大抵、どちらかが圧倒的に強い場合が多く、途中でおさまることなくすぐに勝負はつくので、すぐに隔離しなければいけません。

オス同士のケンカは、サイズの近いもの同士が、優劣を比べるようなケンカで、メス同士ほどには激しくありません。
一つのイソギンチャクに複数のオスが共生できるので、優劣の勝負がつき群れの中での順位が決まるとおさまることもあります。

明らかにサイズが異なる者同士がケンカをすることはあまりありません。
3cm以下程度の小さい個体同士もよくケンカをしますが、相手に重症を負わせたりする程の力はなく、多数での混泳がやりやすいです。



●クマノミ類の病気について



クマノミ類がよく罹る病気はトリコディナ症です。
海水魚の代表的な病気の白点病にはほとんどかかりません。

罹らないようにする秘訣はイソギンチャクと共生させることです。
「イソギンチャクの刺胞毒で病原菌をやっつけるのか?」
「刺胞に刺されないクマノミの粘膜に秘密があるのか?」
は、分かりませんが、
共生させることで、ほとんど病気にかかりません。

当店では、共生させて飼育していますので、ごく稀にかかっても全て自然治癒します。
薬品類での治療は一度もしたことがありません。

共生して飼育していない個体が発症してから、治療の為に共生させようとしても、体表に病気を持った状態では刺胞に刺されてイソギンチャクに入れないことがあるので、治療の為に共生させる方法は使えないです。
予防の為の共生です。



●クマノミ類の繁殖について



海中での繁殖期は、水温の高い3~10月くらいで、その間に何度も産卵するようです。
11~2月の水温が低い時期はあまり産まないようです。

7cm位から産卵するようです。
健康的に少し太っている位が良いようです。
オスのサイズは、5~6cm位です。

イソギンチャクとの共生は当然させたほうが良いです。
クマノミとイソギンチャクが健康に飼育できていれば勝手に繁殖することでしょう。
共生の組合せは、本来の組合せが良いでしょう。
イソギンチャクの大きさは、20cm以上あるほうが良いでしょう。



●イソギンチャクのエサについて



海中では、
ハタゴとイボハタゴは、捕食しているのを見ることがあります。
近くに寄って来て偶然に触手に触れた、小魚や甲殻類や貝類などを捕らえているようです。
センジュやシライトやタマイタは捕食しているのを見たことがありません。
センジュやシライトやタマイタのあの触手では、動く獲物を捕らえる力はないでしょう。
浮遊物が、偶然に触手に触れたら「食べるかもしれない」程度だと思います。

飼育下では、
光合成の栄養で、問題なく元気なら、定期的に定量の餌を与えなくても良いと思います。
センジュやシライトやタマイタは、「必要ない」と言ってもよいくらいです。
ハタゴやイボハタゴでも、消化しやすそうな物を少量、たまに与えてやる程度で十分だと思います。
但し、小型のハタゴやイボハタゴは光合成の栄養に加えて、エサによる栄養の補充にも依存するようなので、「早く大きく育てたい場合」や「栄養不足(光量不足)で小さくなる兆候がある場合」は、適宜エサを与えたほうが良いでしょう。
しかし、与えすぎると、与えた時は食べても、数時間後、嘔吐します。



●イソギンチャクの大きさについて



一般的な水槽で飼いやすい10~30cmの個体に人気があります。

海中で見る、各種の平均的な大きさは、
ハタゴ:20~30cm前後
イボハタゴ:20~30cm前後
センジュ:40~60cm前後
アラビアハタゴ:30~50cm前後
シライトは、2タイプいて、
「浅場に棲む触手がそれほど長くない15~20cm前後の種類」と「触手が長い25~40cm前後のタイプ」。
タマイタダキは、20cm前後の個体が多いですが、インリーフには、10cm前後の分裂個体が多く見られます。
一カ所に密集していますので、一見、一つの大きな個体に見えます。

センジュが最も大型種です。
1m位の個体も普通に居ます。
宅配便で送るには、無理があります。
40cm位が宅配便で送れる限界の大きさです。

当店で取り扱っているイソギンチャク類は、水槽で飼育するのに適度なサイズを厳選して採取されています。



●イソギンチャクのレイアウトについて



イソギンチャクは、基本的に砂地にはいません。
一見、砂地に生息しているようでも、ただ砂地に刺さっている訳ではなく、足盤は必ず砂に埋まっている岩や礫に活着しています。

イソギンチャクは、外敵や台風などから身を守る為に、岩の隙間に潜るように縮む習性があります。
ですので、それができるようにレイアウトしてあげるのが良いと思います。
ウミキノコのような感じのラッパ状になるのは不自然な感じがします。



●イソギンチャクの移動(徘徊)について



種類によって差がありますが、イソギンチャクはお気に入りの場所を探し回り水槽内を移動(徘徊)します。
お気に入りの場所を探し当てたら、しばらくはそこに留まるでしょう。
でも、水槽の裏やガラス面に落ち着くと困ります。
剥がして動かすのではなくて、「そこにいるのが不愉快で移動したくなるように」「不都合な場所に行こうとしないように」仕向けたほうが良いです。
「ポンプの吸入口に吸い込まれたり」「不安定な岩組を崩されたり」には注意してください。



●届いたイソギンチャクを水槽に移す方法について



届いたイソギンチャクを水槽に移す際、長時間にわたり奮闘されている方もおられるようです。

普通の水合わせでいいと思います。
中には数時間かける方もおられるようですが、慎重にこしたことはないですが、
狭い袋の中より、極端な水質差がなければ、早く移したほうが良いようにも思います。

その際、
触手には触れないようにしましょう。
体壁や足盤は触っても大丈夫です。
もし、触手がくっついてしまった時に、振り解こうとすると余計にくっついてきたり、触手にダメージを与えてしまいます。
こちらはじっとして、イソギンチャクから離そうとすることに期待して待ちます。
(離してくれないこともあります。)
(刺された自分よりイソギンチャクを優先するかどうかは・・・)
また、
ビニール袋に活着している場合は、剥がさないといけません。
葉っぱで包んである餅・・・の葉っぱを綺麗に剥がす。
餅(イソギンチャク)から葉っぱ(袋)を剥がず際、変なところ(触手)をさわってしまうと、ベタベタくっついて収拾がつかなくなります。
くっついている所(活着面)に爪を入れて、葉っぱ(袋)をつまんで引っ張れば、自重で勝手に剥がれてくるイメージです。
たいていの場合は、結構すんなり剥がせますが、
剥がれにくい場合や出来そうにない場合は、無理をせず袋を切り取って、そのまま袋の破片ごと水槽に導入するほうが無難です。
あとは、破片から移動してくれるのを待つほかないでしょう。



●イソギンチャクの扱いについて



ハタゴやイボハタゴは毒性や粘着力が強い為、採取や取扱が困難な種類でもあります。
生体としてはとても丈夫な部類ですが、扱い方が難しい為、
採取~問屋~小売店~顧客の流通過程で不慣れな者に何度も剥がされたり触手を千切られたりなど、イジクラレスギテ状態が悪くなるケースが多いようです。
よほど慣れた者でないと、刺されないようにするのが精一杯でしょう。

環境変化には強いですから、ストック中や輸送中の水質・水温の変化で状態が悪くなるというケースは実は少ないです。
(極端な話、バケツで1~2日放置しても、弱った様子はありません。)



●イソギンチャクの状態について



一般には、イソギンチャクの状態の判断する時、口の開閉の具合をとても重視されるようですが、
私どもが判断する時、口の開閉の具合は、それほど重視しません。
それはイソギンチャクはもともと、ちょっとしたことで口が開閉する生き物だからです。

例えば、触手に何かエサとなりうる物が触れ捕獲したら、うまく触手を動かしながら、それを口へと運ぶのですが、
そのような時にも、口が開き、口の中の内壁ようなような物が、盛り上がってきます。
そうとは知らずにそれを見ると、異常だと驚くかもしれません。

そのような行動は、捕食の時に限らず、排泄の際にも行います。
イソギンチャクの口は、口でもあり、肛門でもあるからです。

触手の伸縮具合も同様で、ちょっとしたことで伸縮します。
伸びたり縮んだりしながら、体内に新しい海水を取り込んだり、体内の老廃物を出したりしています。

また、輸送中の袋の中で、商品画像のような綺麗な形を留めていなくてもおかしくはありません。
ひっくり返っていたり、小さく丸まっていたり、力なく広がっていたり、口が開いていたり、膨らんでいたり、浮かんでいたりは、するものです。
袋を揺するだけで、途端に形は変わります。

例えば、輸送中に激しく揺れると、袋の中の水は、洗濯機のように ぐるぐる になることもあるでしょう。
そうしたら、イソギンは、たまらず、ぐっと縮まります。
触手や体壁は急激な伸縮ができても、それほど急激には縮めない内壁のような箇所は、行き場がなくなり、口から溢れたようになります。
触手も破れて萎んだ風船のようにみすぼらしくなります。

また、撹拌されて大量に空気(酸素)が混ざった、泡のような水を飲み込み、体内に空気が溜まって、膨らんだり、浮いたりすることもあります。

それらは、充分に起こりえることですが、箱を開けた途端、そうとは知らずにそれを見たら驚くかもしれません。

口の開閉の具合や触手の伸縮具合が変わる度に、気にしていたらキリがありません。
一時的な開閉具合や伸縮具合で状態は判断できません。

また、輸送中に激しく揺れると、嘔吐します。
そうなると、当然袋の中の水は大変汚れ、死んで溶けかかっているのでは?と驚かれると思います。
しかし、嘔吐と死ぬ時になる体や内臓が溶ける事とは全く違いますので、混同しやすいですが注意しなければいけません。
すべて吐ききるまで相当吐きますが、吐ききるとすっきりするのか何事もなかったかのようになりますので、慌てずそれまでは水槽には移さずにバケツなどで強めのエアーレーションをしながら養生し、吐ききるまで換水を繰り返すと良いでしょう。

嘔吐物は、活虫藻と糞であることが多く、輸送のストレスで体内に共生している活虫藻と糞を吐き出します。
活虫藻と糞の混ざったものを吐き出すことは、海中や飼育下でも行われている生理現象で異常なことではありません。
海中や水槽内と比べて、袋の中の水量はごく少量の為、大変汚れてしまいます。




●イソギンチャクと魚類(クマノミ類以外)との混泳について



イソギンチャク自ら積極的に混泳魚を襲うことはありませんが、イボハタゴとハタゴは、刺胞毒・触手の粘着力が強いので、魚類や甲殻類が誤って触手に接触すると刺胞毒を打ち込み捕らえて食べてしまうことがあります。
驚いたり、ケンカなどで突発的に逃げ惑った際に接触する事や、夜間イソギンチャクが移動し岩陰で寝ている混泳魚が偶然襲われる事もあります。

その他の種類のイソギンチャクが混泳魚を捕食するのを見たことがありません。
イボハタゴとハタゴに比べて刺胞毒/触手の粘着力が弱いので、捕らえるほどではないですが、触手に接触すると刺胞毒を打つ危険はあります。



●違う種類のイソギンチャクは一緒に飼える?



「イソギンチャクどうしが、接触しなければ、どんな種類のイソギンチャクでも、同じ水槽で飼えます。」

種類のよって生息環境は異なりますが、水質/水温は同じでもよいでしょう。
光量や水流はそれぞれの種類の好みに合わせるようにすれば良いと思います。

同種同士であれば、接触していても、まあまあ大丈夫です。
ハタゴとイボハタゴのように異種でも接触していても、まあまあ大丈夫な組み合わせもありますが、
長期間にわたり、常時接触していると、良くありません。
やはり、刺砲毒の強い個体が勝り、弱い個体が弱りますし、強い個体もダメージが多少きます。
(タマイタの分裂個体同士は例外で、接触しても平気)





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