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足場業界の今後や将来性は?現状から考える今後の展望 2023/10/16

2018年6月に働き方改革関連法案が成立し労働基準法が改正されました。2019年から建設業など一部の業界を除き施行された、改正労働基準法の大きなポイントは、時間外労働時間の上限規制が明確に定められたことです。

建設業や運送業、医師などに対しては法の適用に猶予期間が設けられていましたが、2024年4月以降は解除され、法律を遵守しなければなりません。

一方、2020年に世界へ感染が広がった新型コロナウイルスは、私たちの生活に大きな影響を及ぼしました。感染拡大を防ぐため、人やモノの流れが停滞して経済活動に大きな影響を与えたのです。

株式会社帝国データバンクの調査によると、2023年9月時点で2020年2月以降新型コロナ関連によって倒産した企業の累計は6600件以上にのぼります。

参考:帝国データバンク「新型コロナウイルス関連倒産動向調査」

https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/pdf/tosan.pdf

今後、建築業界を取り巻く環境はどうなるのでしょうか。今回は、足場業界の将来性にも大きく関係する建築業界の現状から、今後の展望について解説します。


1.建設業界の現状

建築業界の主な課題として、次のことが挙げられます。
・資材高騰
・2024年問題
・倒産件数増加

1-1.資材高騰

国土交通省が2022年6月に公表した「最近の建設業を巡る状況について【報告】 」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001487405.pdf

によると、建設事業者へのヒアリングで「資材価格高騰による影響が出ている」と回答した事業者は約90%、そのうちの約60%が「影響が大きく出ている」と回答しています。

また、
一般財団法人建設物価調査会のデータ 
https://www.kensetu-bukka.or.jp/wp-content/themes/custom/pdf/business/so-ken/shisu/shisu_shizai/1-3_summary_shisu_shizai_2022.03.pdf

によると、東京における2022年3月時点の建設資材物価指数は、前年同月と比較して14.9%増加しています。

足場工事や建築に欠かせない鉄骨に使用する鋼材も価格が高騰し、この現象は「アイアンショック」と呼ばれています。

アイアンショックが発生した原因の一つは、鋼材の急激な需要拡大です。新型コロナウイルスの影響で一時は減少した鋼材の需要が、世界の経済活動が徐々に戻り始めると同時に拡大し、世界規模で鉄鉱石不足となり、鋼材の価格高騰につながりました。

1-2.2024年問題

改正労働基準法の猶予期間が終わる2024年4月以降、時間外労働は原則月45時間以内、年360時間以内と制限がかけられます。

大手企業をはじめとする各社は、2019年から働き方の工夫に取り組んでおり、就業管理を厳密化するなどして、法律を遵守する体制を整えつつあります。

現場で働く人が無理な長時間労働を強いられることが無くなり、企業のイメージアップにつながるチャンスとなるかもしれません。一方、工事現場の日程管理や作業指示などを行う施工管理業務については、依然として担当者の負担が大きく、さらなる改善が必要です。

1-3.倒産件数増加

帝国データバンクが実施した調査 
https://www.tdb.co.jp/tosan/syukei/22nendo.html

では、2022年度の建設業における倒産件数は1291件でした。2020年度の倒産件数1167件や2021年度の1084件と比べると約10%から20%増加しています。その主な要因は「物価高騰」と「人手不足」とされています。

新型コロナウイルスの感染拡大により工事の遅れや新規工事の受注が伸びなかったことに加え、ロシアによるウクライナ侵攻、円安などの影響で、鉄骨を始めとする様々な建設資材が高騰しました。

資材が高騰しても入手できれば良い方で、1割以上高価な資材に変更しても予定通りに届かないといった事態もありました。このような事態によって、工事を中断しなければならない状況が続き、建設会社の負担が大きくなったことで倒産件数が増えました。

また、建設業界の課題である人手不足も倒産の原因となっています。労働年齢の高齢化や給与水準の問題に加えて、建築工事の需要拡大により、施工管理者などの現場を管理する人材が不足している状況です。

2.足場業界の将来性は?

建築業の一部を担っている足場業界の将来性はどうでしょうか。建築業界とは切り離せない足場業界も、同様の課題があります。

資材高騰については、足場工事で使用する資材の多くは、国内で賄っているため、円安による影響は少ないと考えます。

深刻な問題は人手不足で、専門の職人(とび職)の高齢化による退職と若手の離職率の高さから、足場業界は慢性的な人手不足に陥っています。

3.今後に備えて準備すること

人手不足を解消するためには、現状分析が必要です。一般的に人手不足の中には「人材不足」も含まれているようです。人手不足は単に働き手が足りていない状態のことで、人材不足は必要な能力やスキルを持った人がいない状態のこと言います。

足場の作業を行うとび職人は、専門的で高度な知識と技能が必要なため、一定期間の経験が必要です。ここでは、人手不足と人材不足に対応する方法について解説します。

3-1.新3Kの実現

人手不足・人材不足対策として、新3Kの取り組みがあります。新3Kとは、「給与・休暇・希望」の頭文字Kのことです。

国土交通省は、建設業全体の働き方や待遇を支えて行くために、新3Kを掲げました。昔の3Kは「きつい、汚い、危険」とネガティブなイメージでしたが、新3Kによってイメージを払拭する動きがあります。

https://www.mlit.go.jp/tec/content/001368311.pdf

給与については、一般社団法人日本建設業連合会から「労務費見積もり尊重宣言」が発表され、建築業全体の賃金を全産業の平均レベルに近づけるための取り組みを行っており、休暇については、働き方改革関連法案によって労働環境の改善に向かっています。

https://www.nikkenren.com/sougou/pdf/ikusei/2018_0918.pdf

3-2.DX化による業務効率を上げる

次の課題として業務のDX化があります。足場作業を円滑に行うためには、作業者も必要ですが管理・監督者も必要です。

現場の作業が終わってから事務所に戻って仕事をしていては、管理・監督者の時間的な負担が増えるばかりです。そこで、DX化による業務の効率化が必要になります。

代表的なDX化としてはクラウドシステムの導入でしょう。

資材発注や会計処理、工事の進捗報告などクラウドシステムで行うことで、現場にいてもスマホやタブレットを使って事務作業を行うことができます。

また2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入され、取引先に個人事業主などの免税事業者が多い場合、会計処理を正確に行わないと税負担が大きくなる可能性があります。

2024年1月からは電子帳簿保存法が改正され、請求書などは印刷して保管することが認められなくなります。今までの会計システムでは対応できない場合、新たな制度に対応したシステムの導入を検討しなければなりません。

DX化によって現場から発注や経費処理、進捗報告などをできるようにして、人手不足・人材不足に対応する必要があります。

3-3.資格取得制度を確立する

とび職人になるには、「足場の組立て等特別教育」や「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」などの資格取得は不可欠です。また一人前の職人になるには、「足場組立解体作業主任者」や「鳶技能士」などの資格も必要となります。

資格取得にかかる全費用を負担する、資格取得者による後輩の育成など、会社側が資格取得に向けてサポートする体制を作ることが重要です。

4.まとめ

難しい課題もある足場業界ですが、今後は現場での長時間労働規制や、DX化による業務効率の改善など、働きやすく魅力的な仕事になる可能性を大いに秘めているのも現実です。若手の育成も含め、誰もが働きやすい業界へとイノベーションし続けていくことが、足場業界の展望を明るくするのではないでしょうか。


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