ヘブンバーンズレッド開始記念麻枝准考察記事 part.1 Tactics編

注意 冒頭は茶番となっています。どうぞ読み飛ばし下さい。

noteと迷い込んできた子羊のの皆様初めまして、そしてTwitterで顔なじみの野郎ども久しぶりだな!某はてなブログにてエロゲの記事を書いていました保坂と申します。色々と思うところもあり既存ブログをぶん投げてこちらで記事を書くことに決めていました。

とはいえ書くネタもなく、あちら側のリメイク記事でも書こうと思いながら早一ヶ月、あるゲームの配信予定日がようやく発表されました。

画像1

それがヘブンバーンズレッド。発表当初から色んな意味でKey界隈を賑やかし、音沙汰がなくなっては延期ばかりで沈黙、殺伐ラジオでは愚痴が聞こえてくる上に待望のアニメは非難轟々、挙句の果てにTwitterアカウントを消すわ、失踪疑惑が発生するわ、裏垢は発見されて晒されるわと地獄絵図です。

ゲームのシステム自体もソシャゲと呼ぶには少々、いやかなり不適、マップ移動画面などの要素を含めどちらかというとコンシューマにありがちなシステムとなっています。このためどれだけの人が続けられるか正直怪しい限り、複雑で時間のかかるゲームは受けない今日この頃のソシャゲ事情ではどうあがいても厳しい戦いになるでしょう。そもそもCygamesの有力どころがアニバーサリーでどんちゃん騒ぎをする2,3月にリリースぶっこんでんじゃねえよ、自殺志願者か?

ただこの作品、ゲームとしては麻枝准約6年半ぶりの新作となります。2nd Beatはどうしただの、サマポケの方が期待できるだの、Keyなんて今のご時世はやらないわだの散々なこと言われたとしても我々ファンにとっては待望の心臓病でぶっ倒れた初めて出す最新作のゲームなのです。だからこそ本当に楽しみにしていました。

ということでこの作品がリリースされるまでに麻枝准の過去作を振り返り、どのようなシナリオを書き続けていたかを語っていこうと思っていたのですが……蓋を開けたら大好評!
いやマジかよ。
書き切れねええええええええええええええ!とか言ってるうちに配信が始まって前評判や配信直前生放送のコメントの殺伐っぷり、各アフィリエイトブログのネガキャンも何とやら、全部ひっくり返してとんでもないことになっています。
ならば支援弾になればと思い、前後編の予定だった記事をpartに分けて頑張って書いていきたいと思います。
当分エロゲはできないっすね!
ただもしヘブバンで興味を持ってくれた人がいるのならその人のための道しるべに、帰ってきた人がいるならばその足跡を振り返り思い出に浸ってみてください。
ちなみにpart.5くらい行くと思われます。

ということで麻枝准を追う長い長い旅にお付き合いください。

0.序文

まずは基礎知識、麻枝准というシナリオライターをどれだけご存じでしょうか?

画像2

生まれは奇しくも、私と同じ三重県、三重高校から中京大学へと進学しゲーム音楽を作りたくて有名ゲームメーカーに就活をしたところ全滅、シナリオライターへの転向を決めましたがエロゲ業界にしか就職先は見つからずにscoopというエロゲメーカーに就職します(もちろん解散済)。因みに第一志望はアリスソフトでしたが生き残れないと判断して諦めています。現在にいらるまでRPGを作りたいと様々なインタビューで語っている氏の夢はアリスソフトに行けばすぐに叶えられたのかもしれません。その時にはエロゲもノベルゲームが主流になることはなかったのかもしれません。よくよく考えてみると大きな分岐点です。

その後1作scoopでゲームを作った後に退社、現在はソフ倫の元締めを務めるネクストンに入社してTacticsでゲームを作ることに、ここでKey創立メンバーと出会うことになります。今では考えられないような凌辱もののMOON.から始まり、泣きゲーの始祖として名前の挙がるONE~輝く季節へ~を製作、その後会社との方針のぶつかり合いもあってVisual Art'sへ、そこでKeyを設立しています。この移籍騒動は色々と曰く付きな部分も多いので気になる方は自分で調べてみましょう。

そんな新天地で作られたKanonは大ヒットとなり、Keyの立ち位置を確固たるものにしますがここで当時絶大な人気を誇っていた久弥直樹は離脱、当時Keyから去ろうとしていた中で後一作だけとして作られたのが今も名作と名高いAIRでした。ここからKeyといえば麻枝准という声を確固たるものにしていきます。

そして長い長い開発期間の果てに生まれたのが本日もTwitterのトレンドを賑わせたCLANNAD、アニメも含め不朽の名作として今もなお愛される作品となっています。しかしそんなKeyにも暗雲が、CLANNADのファンディスクとして発売したのが智代アフター~It's a Wonderful Life~、こちらはFDなのにとんでもない終わり方をしたせいで大炎上、現在では名作と呼ばれる扱いになっていますがとあるトークショーで智代アフターのアニメ化に対する声に対して炎上したのにアニメ化を求める声に懐疑的なコメントをVAの社長である馬場社長が口にしたほどです。ここで発狂して休職期間に入ります。

そんな中で新たなシナリオライター都乃河勇人を迎え入れて作られたのがリトルバスターズ、それまでのKey作品と少々色が異なる仲間内をベースとした作品が作られ、成功をおさめます。この成功があったからかなのか初のアニメ原作を務めたAngel Beats!も仲間との絆が一つの要素として組み込まれた作品となっており、最近の作品の傾向ともなっています。只こちらも少々賛否両論の評価となり、作る予定のゲームも遅々として進まずに2014年年末まで氏の活動は音楽がメインとなり、シナリオライターとしての仕事は漫画原作くらいとなっていました。

どこまでも停滞した中で2013年にはAngel Beats! 1st Beatが発表されるものの再び沈黙、ようやく成果として見え始めたのは2014年の年末の発売日発表とCharlotteの製作発表でした。ただこちらのCharlotteも賛否両論、麻雀をしながら愚痴を呟き、配信をしていた時期を知っています。そんな中で病魔に侵され4ヶ月の入院、心臓病で身体障碍者認定を受けた上に心臓移植が必要な状況に追い込まれていました。

それでも作品は作り続け、アルバムの製作やSummer Pocketsへの音楽、そして今週いよいよ開始となるヘブンバーンズレッドの情報が公開、そして神様になった日が発表されたのがコロナ渦巻く2020年でした。そしてここから先は皆様ご存じでしょう。アニメは今まで以上に否が多い評価となり、失踪します。そんな中で動きが一切見えなかったヘブバンはもう一度動きだしたのが2021/9/11でした。そんな合間に初の文芸小説である猫狩り族の長が発売され、真価が問われる状況にいます。

そんな過去の栄光と比較すると散々な麻枝氏ですが、本当に描いてきたことは変わってしまったのか?そんなことを作品を追いながら考察していきましょう。

1.MOON.

ではKeyとしての始まりの作品であるMOON.から見ていきましょう。

Keyの原点たる作品で前述のとおりその後にKeyを設立することになるメンバーが初めて作り出した作品になります。この作品は他の作品とは大きく作風が異なる凌辱もの、このため昔からKeyを知っている人の中でも実際にプレイしたことのある人は意外と少ないのではないでしょうか?

画像3

18禁なので作品リンクは貼れませんがググれば出てきます。DL版もありますが、とある要素がカットされているのでもし気になるなら初期ロットをプレイしてみてください。システムやそもそも起動しないなんて壁もありますが……頑張っていきましょう。

あらすじは以下のようになっています。

長い間、傍に居なかった母が帰ってきた。
宗教集団FARGOの隔離施設へ行ったきり、永らく逢う事が無かった母が帰ってきた。
母との幸せな生活がおくれると思った矢先、母が謎の死を遂げる。
何故母は死んだのか。
彼女が最後にいた宗団の施設で、いったい何が行われていたのか。
母の怪死の理由を突き止めるべく、天沢郁未は単身、FARGOの隔離施設へと向かう。
そして、その中で出会う2人の仲間。
固い信念を持ち、義兄を連れ戻しに施設に入った少女、巳間晴香。
無邪気な笑顔の裏に陰惨な過去を秘めていた少女、名倉由依。
徐々に真実に近づくにつれて、明らかになる『不可視の力』の存在。
繰り返される悲劇。過酷な現実。
その先にある「真実」とは、果たして何か。そして、彼女達の運命は……?

今作のメインとなるのは上記の3名、天沢郁未、巳間晴香、名倉由依。
彼女達はそれぞれの決意を秘めて宗教施設FRAGOに潜入します。
そんな3名ですが、実は胸に秘めた決意には微妙に差異があったりします。

晴香と由依ですが、経緯は違えどFRAGOに行ってしまった隣人を取り戻すために潜入しています。
ところが郁未は日常を奪った存在への復讐を目的として潜入していきます。その中で出会った少年との邂逅と別れにより、別の幸せを知ってそれを失っても幸せのために日々に帰っていく姿が描かれています。

この作品では様々なトラウマに向き合う描写があり、本作の根幹をなす不可視の力もそのトラウマに根差した能力となっています。そんなトラウマを乗り越えて力を支配し、楽しかった日々を失ってもまた別の幸せを見つけるために日常に戻っていく、この後散々語ることになる麻枝准のシナリオの根幹ともいえる要素がこの時点であります。発売された数年前には地下鉄サリン事件があった中で、宗教色が強くかつスカトロ上等な凌辱ものなためプレイしていない人もかなり多い作品だとは思います。ただこの頃から変わらずに描かれている1つのテーマがあることは知っておいてほしいです。

2.ONE ~輝く季節へ~

MOON.を発売したその翌年……どころか半年後に業界を一変させたこの作品が発売されます。この作品がなければクリエイターになっていなかった人も多いと言われる作品、それがONE~輝く季節へ~です。この作品の売り上げは凄まじく、後年NEXTONの社長がONEのおかげで会社が成り立っていたというほどのものでした。
しかし現実としてはこのくそみたいな短納期の影響でこの作品を最後にVisual Art'sへ移籍してしまいます。

画像4

そんな今作のあらすじは以下のようになっています。

1998年、冬。普通の学生であったオレの中に、不意にもうひとつの世界が生まれる。
それはしんしんと積もる雪のように、ゆっくりと日常を埋めてゆく。
そのときになって初めて、気づいたこと。繰り返す日常の中にある変わりないもの。
いつでもそこにある見慣れた風景。好きだったことさえ気づかなかった、大好きな人の温もり。
すべてが自分をこの世界に繋ぎ止めていてくれるものとして存在している。
その絆を、そして陽光に輝きだす。
そのときオレはどんな世界に立ち、そして誰がこの手を握ってくれているのだろうか……

当時大人気となっていて、その後にともに葉鍵として1つの時代を作ったLeafのTo Heartのような作品を作れと言われて作成されたのが本作、いわゆる泣きゲーのフォーマットとして呼ばれるようになる作品でした。
物語としては今でも普通にみる学園物、一人のヒロインを選んで攻略し、恋愛関係を結んでいきます。ただ大きく異なるのは永遠の世界というギミック、この設定により泣きゲーというジャンルを築くまでになりました。

幼い頃のとある出来事で現実を否定した主人公は永遠の世界に行くことが定められてしまいます。この永遠の世界に行った場合、世界から忘れられ周りの人の記憶から存在が消えていってしまいます。そんな中で関係を結んだ少女たちとの絆を失わずに、消えた後の1年間を超えることができればもう一度世界へと帰ってくることができるという構造になっています。これらの要素により出会いと別れが演出され泣きシナリオとなっているのです。

そんな今作ですがこの作品人気となったのは麻枝氏が担当したヒロインではなく、この後Keyといえばこのライターとして認識されることになる久弥直樹氏のシナリオでした。彼の担当した川名みさきは今を輝くTYPE-MOONの武内崇氏がアンソロジーで二次創作を投稿するほど入れ込んでおり、同ブランドの奈須きのこ氏も本作のファンと公言しており、かつ久弥氏担当ルートのファンであることが語られています。
さてそんな本作の評価の分かれる2人の担当したルート、ここには明確に異なる要素が存在し、その要素はやはり麻枝作品の根幹を成すものでした。

この差異を生んでいるはエピローグに色濃く出ています。
久弥氏担当ルートのエピローグでピックアップされるのはヒロインと再会してどのように未来に進んでいこうとするかでした。
この要素を描くために各エピローグの始まりは1年後のある日、ヒロインが主人公以外とかわすやり取りの中で主人公が帰ってきたことを気づき、再開するところから始まります。そこから再会した後の約束を果たして一緒にもう一度歩いていく姿が描かれ、幸せに向かって一緒に歩いていく姿で物語を閉じるようになっています。
対して麻枝氏の担当ルートはどうなっているか?氏のルートで根幹となるのは再会までにどのように歩んできたかが強調して描かれます。このため物語はヒロインと主人公が再会した瞬間で物語が閉じられ、どのように過ごしていくのかは描かれることがありませんでした。
この差異以外にもヒロイン、または主人公自身の成長していく物語となっているのでヒロインと恋愛する部分が薄く、また麻枝氏の書く主人公像がかなり癖があったことからプレイヤー自身と重ねることが難しかったことも1つの要因なのかもしれません。

ただやはり今に繋がる氏の大きなテーマはこの作品にあり、もうそろそろ20周年が見え始めているというのに未だに愛される作品であるCLANNADにも繋がる要素が見えるシナリオがあります。
それが長森瑞佳ルートです。
本ルートの骨格をまずは挙げていきましょう。

①世話焼きな瑞佳との日々(共通ルート)
②罰ゲームで付き合い始め、それを疎ましく思う主人公
③彼を傷つけ、隣にいる資格がないと気づいた瞬間に初めて知る彼女のかけがえのなさ
④大切な人との日々と喪失
⑤約束と再会

このルート非常に賛否の分かれるルートとなっていますがその原因は主に②と③にあります。正直やらかしたことはクソ主人公です
ただ粗削りながらも次のような要素が存在すると考えています。

1.日常の再肯定
2.日常の喪失
3.たった一つの願いの成就

まずは1について、こちらは①~③で描かれます。
本作の主人公折原浩平にとって瑞佳はあくまで日常の1ピースでしかありません。そんな彼女と付き合い始めたきっかけはあくまで罰ゲームでしかなく、日常の延長戦にある存在でしかなかったです。このルートにおけるBADに突入する条件は今のノベルゲーをプレイしている人ならほぼ確実に引っかかるでしょう。その条件は長森瑞佳に冷たくし続けること。たった一度でも瑞佳に対して甘い顔をしてしまった時点でBADエンドが確定します。そして何度も彼女を傷つける選択肢を続けることで折原は最低最悪な行動に出ます。気になる方はゲームで確認してみてください。
そんな最低な選択を続け、彼女との縁を壊した時にようやくその関係性はかけがえのないものだったと気づくことになります。彼女の存在は単なる日常の1ピースではなく自分にとって何よりも大切な存在だったとようやく気付き、その上でもう一度瑞佳と向き合うようになります。この展開が賛否を分けているのですが……しょうがない。
ただ彼女のことを日常の存在としか認識していなかった、いつも隣にいる幼馴染と認識していた彼の瑞佳への向き合い方は大きく変わります。

そんなようやく手に掴んだはずの日常は④でなくします。
彼女は本作において世界観の鍵を握る存在となっており、様々な解釈が行われているヒロインです。本当ならばとっくの昔に永遠の世界にいるはずだった浩平を繋ぎ止めた存在とも言われており、本作でも自分のルートで唯一一度主人公のことを忘れてしまうヒロインでもあります。
ただそんな彼女が彼を繋ぎ止める⑤における約束、これがたった一つの願いでした。その願いを込められたものを言うぬいぐるみに励まされながら過ごす日々の先、孤独に苛まれても前だけを向いて歩いていく。そのたくさんの本当は隣で過ごしたかったはずの時間の先に小さな奇跡は舞い降ります。ずっと一緒に居たいと願った二人が再会しこのルートは幕を閉じる、このようになっています。

これらの要素は後述するCLANNADにおけるグランドEDの構造も連動していますので覚えていてください。
ただの日常だと思っていたものを悲劇と喜びの中でかけがえのないものであったと気づき、その上で本当に自分にとって大切なものは何だったのかを再認識し、それを手放さないためのたった一つの願いのためにすべてをかける。これは麻枝准のシナリオを読むうえで重要な価値観となっていきます。

また本作、世界観等の設定は麻枝氏により作られていることから上記の価値観は世界観自体に組み込まれていると考えています。
だからこそ本作全体で共通していることとして少女の中にどれだけ浩平の居場所を作ることができるかにかかっている部分があります。その方法は簡単ではなく、どれだけ彼との日常をかけがえのない愛おしいものとして心に刻み込んでくれるかにかかっています。
そして帰ってきた暁にはどのルートでももう一度「輝く季節」をエピローグから続けていくのです。

余談ですが一つ同人誌をご紹介します。

瑞佳ルート後に瑞佳が永遠の世界に来てしまったという設定で構成された同人誌になります。
個人的にかなりお気に入りで(勝手ながら)紹介させていただきます。
彼女の設定上ありえそうなのがポイントでONEをプレイしたことがあるのならぜひ読んでほしいと思います。

幕間 part.1

さてここまでKeyが生まれるまでの作品を振り返ってきました。
麻枝氏を始めとしたスタッフはONEにおける納期を優先する製作方針を嫌がり、Visual Art'sへと移籍していきます。
ここからKanonが製作され、葉鍵という1つの時代を作っていきます。
その先で看板ライターの久弥氏の離脱、そして長い長い製作期間を経たCLANNADなどが待っています。
そのお話まではもう少し先!まだまだゴールするわけにはいきません。
それまでお付き合いお願いします。
次回は今週中には出せるように頑張ります!
ということでpart.2 Kanon・AIR編でお会いしましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?