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タイポップ(女声編)3曲を熱く語る

あっつ!あっつ!(熱さアピール)

えー、ご紹介にあずかりましたchueと申します。普段は勤め人をしながらですね、たまにDJの真似事などをさせていただいておる次第でございます。

えー皆さんは、タイポップというものを聴いたことがありますでしょうか。日本から南西に飛行機で6、7時間ほどのところにタイ王国という国がございましてですね、象とかガパオライスとかで有名かもしれないですね。その国のポップスを指すのがタイポップ、というわけでございます。

じゃあタイポップってどんな音楽なの?といいますと、大昔はそこそこクセのある、逆に言うとマニアにはたまらない音楽ではありましたが、今はそんなことはございません。今の子達は物心がついた頃からYoutubeなんかございますからね。おそろしくセンスの良い楽曲が、言葉の壁だけを理由に日本では聴かれずに眠っている、非常にもったいないお話でございます。

そこで本日はですね、数多ある名曲佳曲の中からたった3曲、たった3曲だけ、皆様の貴重なお時間をいただきましてですね、ご紹介したいと思うわけでございます。それでは早速まいりましょう。

Ride or Die / Luss

ヴォーカルが元Jelly RocketのPun、トラックメーカーがさまざまなところでプロデュースワークをこなすBen、この2人のユニットです。Wayferというワーナー系のインディーズレーベルの今のイチオシで、コロナ禍下でもコンスタントに活動をしています。
(※Jelly Rocketがサマソニ出演と記載していましたが、事実誤認でした。Yello Fangとの勘違いです。失礼いたしました。)

この「Ride or Die」は、低体温ながらドラマティックに展開するトラック、タイ語と英語を自在に行き交う歌唱、ポップではありながら90年代R&B好きあたりにもアピールする強力な楽曲です。この曲を含むアルバム「One For The Road」には、「Trippin'」「My Favorite」など同系統のフロア映えする曲が収録されています。最近はもう少しだけ可愛らしいポップ寄りの曲をリリースしていますが、トラックの凝りようは変わらずです。

これはあまり教えたくないのですがこの曲、複数の場所で20代女子に異常にウケましたので、男性諸賢は記憶に留めておいたほうがよろしいかと。

Password / Fever

日本にも熱烈なファンの多い、2018年にデビューした12人組のアイドルグループですが、2021年7月に解散しました。コロナ禍で活動が困難になったとのことですが、メンバーへの告知も急だったようです。

この「Password」ですが、シティポップバンドMamakissからの楽曲提供を受けています。往々にしてアイドルはミュージシャンの実験場になりますが、それがズバリはまった一曲と言えるでしょう。シティポップの影響を強く受けたミュージシャンはタイにも多いのですが、その中でももはや(いい意味で)パロディの域に達しているMamakissの職人技、ギターの音色の選び方やシンセの使い方が光ります。

これもあまり教えたくないのですが、過日この曲の後にフィロソフィーのダンスの「テレフォニズム(Night Tempo Melting Groove Mix)」をつなげてかけたら、タイポップはおろか最近のポップスすらほとんど聴かない人たちが悶絶していました。お時間のあるときにお試し下さい。

แค่หน้าจอ (Your Story) / Pam Anshisa

前述のLUSSと同じWayferにいましたが、現在はR&B系アーティストを集めた同じワーナー系列のD.U.M.B. Recordingsに所属しているパム・アンシサ。実はタイは、台湾や香港、インドネシア等と比べて本格的R&Bシンガーが手薄でした。ここに来て、ようやくこのジャンルに軸足を置いたシンガーが出てきた感があります。

まず何より曲がいいのですが、その上でこの歌唱の安定感が素晴らしいのです。プロなのだから当然と思われるかもしれませんが、タイ語には5つの声調(母音のイントネーション。ちなみに中国語は4声)があり、ここまで非母国語リスナーに違和感なく聴かせるには緻密なコントロールが必要となります。かなりの技巧派です。また、作詞作曲を手掛けるLunarehことWiriyapa Chansuwongは、当然ながらヒップホップ人脈も太く、この曲のようなオーソドックスなR&Bからトリッキーなトラックまで幅広くこなしており、今後の活躍が期待できます。

ただ、タイでこのジャンルがどこまで受け入れられるか心配です。既にPamも過去曲のアコースティックバージョンがリリースされていますし・・・。

というわけでですね、今回この3曲をご紹介させていただいた次第ではございますが、あくまで大きな大きな沼の入口でございます。また恐ろしいことにですね、ルークトゥン/モーラムという日本で言うところの演歌民謡がゴリゴリのパーティ仕様になったようなジャンル、プレーンプアチーウィットというフォークソングみたいなものから派生したロック、メジャーレーベルが放つタイにおける王道ポピュラーソング、その他様々なジャンルが交わらずに併存しているという状況がタイにはございましてですね、良く言えば豊かな音楽リソース、悪く言えば分断と合従連衡が存在するわけでございます。

これを機会にタイの音楽に興味を持っていただけるとうれしいのですが、なかなかそう簡単には参りませんので、私としてはですね、うっかり穴に落ちた際に這い上がれないよう、深く穴を掘ってお待ちしたいという所存でございます。これをもちましてご挨拶と代えさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

#スキな3曲を熱く語る

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