![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/23940755/rectangle_large_type_2_b8bc5d573046cd9f5770d8733bc0770f.jpg?width=1200)
ヌマーのボマー
筆者は勝手に相掛かりのことを沼と言っている。ややこしい局面が多く検討が高確率で沼るなどが理由だ。
そんな相掛かりの入口に、爆弾の名前がついた乱戦定跡がある。
五手爆弾である。
今回はこの五手爆弾について書く。
急にこれを投げつけてくるボマーはまれにいる。後手相掛かりを指すならこれらの変化は知っておかねばならないのだ。
相居飛車の4手目である。
以前なら相掛かり模様どころか、模様をつけずに相掛かりと断言しそうな局面だが、今では相掛かりと角換わり両方あるという感じだろうか。
相掛かりなら▲7八金、角換わりなら▲7六歩が常識的なところだが、ボマーたちは▲2四歩と突いてくる。
▲2四歩△同歩▲同飛
一見すると早くも後手が失敗しているような局面だ。
とはいえ、次の反撃が有名で、後手が良いと知っている人も多いはずである。
△8六歩
取れば△8七歩。後手が先に角を取れる、というやつである。
あえて五手爆弾を選ぶ側としてもこちらが本線なのだが、一応手抜く手もある。
まずはそちらから見よう。
▲2三歩△8七歩成▲2二歩成△同銀
この場合は先に角を取られてしまうが、後手も角を逮捕していて駒損にはならない形である。
そうなると歩をたくさん持っているのが大きい。
先手は飛車を引くくらいだが、そこで△2七歩の叩きが厳しい。
▲2八飛△2七歩▲5八飛△8六歩
飛車筋をずらしてからの、焦って攻めない△8六歩が好手だ。
こうなれば後手が駒得になりそうである。後手良しだ。
また、△2七歩を▲同飛と取る手もなくはない。その時に△8八とといけるかは微妙なのだが、△3二金▲2八飛△2七歩と進むと似たようなことになる。
▲5八飛なら△8六歩である。
というわけで、△8六歩には一回▲同歩が本線だ。
▲同歩
△8七歩▲2三歩△8八歩成▲同銀
これで角得だが、後手の角も死んでいる。
むしろ、先に角を持った得を生かしたいところだ。
というわけで馬を作る。このあたりまでが有名である。
△3五角▲2八飛△5七角成▲2二歩成
先手も遅れて角を取ってくるが、ここでの取り方が悩ましいのだ。
馬を作ってヨシまでの知識で指していて、ここで手が止まったことのある人もいるかもしれない。
△同飛と△同銀があるが、正解はどちらだろうか。
両方の変化を書くが、まずは△同銀から。
△同銀▲4五角
銀で取るのは良くないとされている。
というのもこの角打ちがあるからで、おそらく先手のボマーはこのあたりを研究済みである。
銀が浮いてはいけないので馬作りが妙に受けづらい。
△6二飛はいかにも危なく、実際に▲5二歩の手裏剣で参ってしまう。
△同飛と取るしかないのでは△6二飛は受けになっていなかった。
この変化は有名なのだが、この記事を書くにあたって検討をしたところ、後手の返し技があることをソフトくんが教えてくれた。
△2七歩▲同飛△5四歩
連続であやしい歩を放ち、技をかけにいく。
先手も▲同飛、▲同角と素直に応じるくらいだと思う。
▲同角△8六飛▲8七歩△5六飛
△8六飛がハッとする手である。2二の銀が浮くのだが、銀の取り合いは5七馬のぶん後手が勝つ。
▲8七歩には△5六飛と玉頭に回る。これが角取りにもなっている。
まだ銀がタダだが、やはりまだ取れない。
▲2二飛成には、△5八歩▲同金左△同馬▲同金△5七歩のおかわり攻めでほぼオワだからだ。
よって、一回受けるのが正着だ。
▲5八歩
ここは分岐点である。できれば△5四飛と取りたいのだが……。
▲5七歩△同飛成▲5八金右△5二竜となれば話がうまい。
しかし、先手はこう指してこない順があって危険だと思う。
なお、▲5八歩に対して自重する手は△2六歩である。
△5四飛▲2二飛成△6七馬▲2一竜
一回竜を弾いてから△8九馬と取れば後手が指せるかもしれないが、これは危ない変化である。
自重しよう。
△2六歩
飛車の頭を押さえても、まだ角取りが残っている。
▲5七歩と馬を外してくるが、後手は竜を作った反動で角を取り返せる。
▲5七歩△同飛成▲5八金右△5四竜
▲2六飛△3二金
先手が飛車取りを解除したところで△3二金と収めておく。こうなれば竜のぶんだけ後手が指せる局面である。
この順があるので、△同飛ではなく△同銀でも一応なんとかはなる。
しかし、△同飛のほうがはっきりまさるので、そちらを覚えるのがおすすめだ。
局面を戻した。
△同飛▲2三歩
飛車の逃げ方問題である。
ここは△1二飛もあるが、△8二飛を本線とする。
△1二飛以下は途中を飛ばして進行一例だけ出しておく。
このように、向かい飛車系の角交換振り飛車になった気分で、馬で2三の歩を払って指す。これも後手が指せると思う。
△8二飛▲4五角
先手は例の▲5二歩狙いでさきほどと同じ角を打ってくる。
ここでは▲2二角の打ち込みも見えるが、と金を作っても8二飛の守りが効いているうちは続く攻めがあまりない。
(図は△6七馬とした場合)
後の変化は割愛するが、これくらいで後手が良いようだ。
▲4五角に対しては、実はさきほどの△同銀の変化ではできなかった手が有効になっている。
△2七歩▲同飛△5四歩▲同角
△8六飛▲8七歩△5六飛
歩を二枚取らせて技をかけにいく再びの順である。
▲5八歩の時に△5四飛と取れるのが形の違い。
今度は先手がダイレクトに銀を取れず、▲2二歩成は遅い。
▲5八歩△5四飛▲5七歩△同飛成
▲5八金右△5二竜
よって▲5七歩と馬を取るしかないが、竜得になったこの局面は後手良しだろう。
というわけで、〆に入る。
五手爆弾は返し技さえ覚えれば後手が指せるようである。覚えよう。
長く、図も多く、難しいめの記事になってしまった気がする。
おつかれさまだ。
この記事を読んで爆弾への恐怖をなくせた人は、元気良く4手目に△8五歩を突いてほしい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?