『チェンナイの夜』(英語字幕)感想

#チェンナイの夜 これは邦題で、原題を直訳したものは「都市」になるらしい。大都会に住む人の他者への無関心による無慈悲さというのがテーマだけど、ロー監督がこの映画で特にこだわったのは「匿名性」。人がその役割(職業も含む)でしか認識されない世界での、各個人の行動が及ぼす影響を描いてる。

そんな冷たい世界でも、誰かが温情を施せばそれを得た人が恩義を感じ、その思いから別の人にも情けをかけられるようになって……という連鎖がプラスの方向に働いて、何となく世界は昨日よりも今日の方がちょっとだけ良くなったかもしれない……と思いたいけれど、そうは問屋が卸さないという話でした。

こう書いちゃうと身も蓋もないし、夢も希望もなさそうだけど、どっこい冒頭と違うのはそこにドスティが確実に存在してるってトコなんですよ。もうね、このドスティが確固たるものになるべくこの映画全体があるといっていい。もちろんドスティ結ぶのは主役のイケメン二人ね。区別ついてて良かったわ。

実は見始めて最初は後悔しました。だって冒頭、英語字幕を全然読み切れなくて人間関係が全く把握できなかったんですもん! でもそのまま見ている内に分かりました。これ、日本語字幕で見てても把握できないかもしれないって。情報量過多なのよ~お!

ツイッターで、イケメンが二人出てきてその内の一人は『狼と子羊の夜』の子羊くん、と教わってて本当に助かりました。これを知らなかったら私はイケメン枠を一人と思い込んで二人の見分けがつかなかったかもしれません。よく見ると違うんだけど、タミルの男前は皆雰囲気が似てるのよ。

冒頭、盛り込みすぎだし慌ただしすぎると思うんだけど、ローケーシュ監督はまずそうやって観客を煙に巻いておいて、後からじわじわそれがどういうことだったかを説き明かすのが好きなんだと思う。でもさ、そこにたまたま居合わせただけの人の過去までは必要ないんでない?

この辺を上手く整理できたのが『囚人ディリ』なんだろうな。
コレはジョン・カーペンター監督の『要塞警察』辺りが元になってそうだけど、後年の『LEO』(『ヒストリー・オブ・バイオレンス』が元ネタ)と同様、ロー監督独自の味付けとインド風味が加わって別物に仕上がるんだよね。


本日(3月14日)はローケーシュ・カナガラージ監督のお誕生日ということで、まことにおめでとうございます。監督の #囚人ディリ が面白かったので次に公開された #マスター はすぐに観賞予定に入れました。おかげでタラパティとセードゥパティの二大ヴィジャイを知ることができました。 このご恩は忘れません。これからもじゃんじゃん面白い映画を撮って下さいませ。

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