【ネタバレあり】『天気の子』感想。新海誠はセカイ系とジュヴナイルの中で「光」と「女の子」を描きたい。
天気の子ネタバレ感想。メモをそのまま貼ります。
はじめに
◆お互いの両親に関する説明がほぼなし。セカイ系っぽい。
◆一方で子供が「悪い大人」と対抗してカタルシスを得るジュヴナイル要素も強い。
ジュヴナイルとしての『天気の子』
◆自分も見てから気付いたことだったけど、ジュヴナイルにおける「悪い大人」は、子供が見ても大人が見ても一目で悪とわかる「人間」でなければならない。今作でいうとヒロインの天気を変える力を利用しようとする悪の組織とかでないと純然たるジュヴナイルとして楽しめない。「悪い大人」の役割を警察官に持たせるのは、「警察も警察なりに正しいことをしているハズなのに主人公のこの行動は本当に正しいのか?」という不要の疑念を鑑賞中に持ってしまうためノイズになる。
◆また、ジュヴナイルにおける「親」は、「大人の立場として主人公と対立するけど最終的には味方してくれる」ものなんですけど、これは10代の少年が抱く親へのコンプレックスを適度に解消する方向に働いてくれる。が、今作において主人公の親は名前も顔も登場せず、「親」の役割は東京で主人公を拾ってくれたオッサンがやる。立場的に主人公と対立しつつ最後には助けてくれるというジュヴナイルの「親」役そのものであるが、最終的に味方になった時のカタルシスを生む力がやはり弱い。結局今作では最後まで主人公の親は出てこないし、主人公は親の元を離れるので、家庭内でのコンプレックスが全く解決されないまま話は終わる。
◆総じてジュヴナイルとしては要素が足りない。
セカイ系としての『天気の子』
◆一方でセカイ系としても、ジュヴナイル要素でいうところの「大人」や味方の「子供」が大変邪魔である。特にヒロインの弟が大変邪魔である。ヒロインと同一存在になりたいというセカイ系におけるカタルシス(まぁつまりセックスの暗喩なんですけど)を素晴らしいほど絶妙に邪魔してくる。3人でホテルに泊まりながら、ラブホで主人公とヒロインが話し合う作中で一番エモいシーンでも、結局弟はほぼハブられている。ジュヴナイルとしての要素を強めるなら、ヒロインの悲惨な状況は主人公と弟で共有されるべきであった。
その他気になったところ
◆自分が知ってるコンテクスト、つまりセカイ系とジュヴナイルの観点からはそんな感じ。もしかしたら俺も知らない最近のコンテクストがあってそれに則ってるかもしれないし、その観点からは当然のストーリー運びなのかもしれない(最近の流行というとなろう系や転生系だろうけどそういうストーリーでは一切ない)。
◆歌入りのBGMだけ入りがやたらデカい。編集は新海誠一人でやってるらしく、せっかく作ってもらった歌を前面に出したい気持ちはすごく分かるんですけど、他のBGMとのバランスはもう少し大事にして欲しかった。最後の方、主人公が非常階段を登っていくシーンで「愛にできることはまだあるかい」の歌詞が自然に聞こえてくるところはそういうのは気にならなくてとてもよかった。全部あれくらいでよかった。
新海誠の「描きたいもの」と観客の「観たいもの」のバランスが絶妙に取れている傑作
◆以上が文句言いたかった点。他の要素はほぼ満点と言っていいほどすばらしかった。
◆新海誠作品は「ほしのこえ」と「君の名は。」だけ見てるんですけど、多分この人、光の表現と可愛い女の子が描きたいだけなんだろうなと思う。それを誰にも邪魔されたくないので脚本監督編集全部やっちゃうんだろうなと。ただ「ほしのこえ」で女の子一人に喋らせてるとどんどん陰鬱な空気になってしまった。女の子を可愛いと思うのに必要な要素として、結局周りの世界をどんどんリアルに描いていく必要が出てきて、ただ「君の名は。」では設定上、生物学的性の部分に触れすぎてしまった批判があり、今作では反省があったのかどうかわからないがそういうセクハラ要素はだいぶ減っている。それが許容範囲かどうかは人によると思うけど。
◆つまり「光の表現と可愛い女の子の可愛さを、余計なことを考えずに観れる」という点において、天気の子はほぼ文句の付け所のない傑作である。「監督:新海誠」の要素に期待して見に行けば、期待通り、あるいは期待以上のものは観れるという点で、見て損はないです。
◆RADWIMPSの楽曲も総じて素晴らしい。もちろん好みはあるだろうけど。洋次郎の声より女性ボーカルの方が映えるのは、まぁ仕方がないかなぁ。
◆3人でラブホに泊まるシーンがエモい。エモすぎる。そこに至るまでの展開も自然だし、そこがラブホであることを理由に本人達が恥ずかしがるみたいなシーンがないのもとても良かった。おそらく純粋であるが故に本人達はそれがラブホだと気付いてないという意図だと思う。子供が見ても違和感なく、大人が見ると無駄にドキドキするっていう、アニメ映画の理想的な作り。ヒロインが主人公の前でバスローブを脱ぐシーンは感極まる。しかしここがセカイ系とジュヴナイル要素が鎬を削ってぶつかり合いお互いにマイナスにしてしまっている最大の難所でもある。
総評
◆10代のころに女の子と一緒に観に行きたかった…カップルに挟まれて一人で見る映画は楽しいなぁ!?(半ギレ
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