二号さん 15分男1女1

a=博士 b=クローン

aナレ;人・・いや生命は・・根源的に・・死を恐れている・・。皆等しく死ぬ、そしてそれをその者の結末とする。だからこそ、不老不死は誰もがみる夢の最も代表的な一つだ。医学の目まぐるしい発達はそんな夢を近いうちに現実にしてくれるだろう。現代の医学、科学は、昔の人から見れば魔法となんら変わりはないように見え、そしてその魔法はいずれ死すらも超越してしまう本当の魔法になるだろう。

a;ついに完成だ・・・私の・・器が・・・できるのだ・・。私の細胞から生み出したクローン体…そこに私の記憶を完全にコピーしたデジタル海馬を移植することで私はもう一度その人生を全うすることができる・・今の私は死ぬが、私の記憶は・・想いは続いていく…それを繰り返していつか、完全な不老不死を完成させるのだ。ククク…ふははははっははは!!

さぁ・・・その姿を見せておくれ…

aナレ;クローンマシーンから培養液を抜くスイッチを押す。

se:ざばあー

aナレ:赤黒く濁った培養液が抜け、私のクローンがその姿を表す

b;コパァ・・・・

a;コパァ…それがお前の…いや私の産声か…いい響きではないか……ハッピーバースデー・・

b:コポォ……

a:な・・!・こ、こいつ、、そんな…

b;う・・・・うう・・

a;女だと・・・!?

b;あ・ああ・・あー・・

a;な、なぜだ・・なぜこのような事が・・?私の計算に狂いはないはずなのに!

b;ううーーうう・・

a;い、いかん・・・兎にも角にもこいつを今はなんとかしなくては、、、しかし・・

aナレ;勉学と研究に心捧げてきた私には女の裸に対する免疫がなかった。培養液からでてくるのは若かりし頃の私の予定だったのに、どう言うわけか出てきたのは若かりし見知らぬ裸の若女・・。

a;くっ!!まずは何かをかけて・・でも目のやり場がない・・!くそ!!私としたことが!こんな落とし穴があるなんて!

b;う・・ううーーー・・・

a;寒がって・・いるのか?

b;う・・・ぶぶ・・うう・・

a;くそ・・・裸がどうだというのだ・・私のクローンではないか・・・っ!ええい!

b;うぅ・・・

aナレ;私は目をつむりながら椅子にかけてあった白衣をそいつにかけた。しかし・・どうしたものか・・

a;くそ・・とりあえず・・こっちにこい・・

b;うう・・

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a;はぁ・・・しかし一体なぜこんなことに・・。何を間違えたのか・・・わからん。

b;がう!

a;それに・・当たり前だが・・言葉も話せんときた・・。バイタルデータに問題はないが・・、また三年の月日をかけて私の器をつくるのは年齢から考えてもリスキーすぎる・・まったくのガサ入れなしに、研究所でクローンを作れた事自体が奇跡なのだ。

b;がうう・・

a;ひとまず・・私の海馬を本当に移植していい脳なのかのテストとして・・保護観察といったところか。

b;うううう・・

a;ふむ・・まずは食料を与えないとな。果たして何を食べさせれば・・。

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aナレ;クローンを培養液から出して1ヶ月が経った。ひとまず私のいつもの食事を与えて世話をしていた。

a;ほら、、今日の食事だ。

b;う!いただぎばす!

a;ふん・・・残さず食べるように。

aナレ;まずは言葉を教えるところからはじめている。さすがは私のクローンといったところか、まだ発声器官に慣れていないせいか発音は怪しいが、言葉自体はすぐに習得した。これなら、女性ということを除けば問題はなさそうか・・

b;おいじい・・です!!これ!好き!

a;・・・そいつは、スクランブルエッグだ。

b;ずぐらんぶる!えっぐ!!おいじい!

a;2号・・フォークとスプーンはそう持つんじゃない。

b;え!

a;こうやって・・持つんだ。

b;ずぶーんと!ふぉーぐ!!こうやってもつ!!わがりました!

a;ああ・・。

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a;一体なにが原因で・・私のクローンが女性になったのか・・この原因をつきとめない限り、怖くて私の計画を続行することはできない・・しかしあまり時間をかけても・・。

b;また考え事ですか?

a;は!!あ、ああ・・そうだ。私には時間がないのでね。

b;そうなんですか?

a;そうなんだ。いいからお前はわたした書籍を読んでなさい。

b;はい・・。

a;・・あまり時間をかけすぎては・・いけない・・・。

aナレ;それから2号と名付けた私のクローンは与えた書籍をスポンジのように全て自分の知識として吸収していった。知能レベルもまったく私と遜色ないと判断ができた。かくなる上はなぜ女性になったか・・という疑問は置いといて計画を実行するしかない。これ以上を時間をかけていては・・いくら心無い天才科学者の私といえど・・情がうつってしまう・・それだけは避けなくては・・。

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b;1号さん、今日は何をするんですか?

a;ああ・・実は今日はな・・その・・なんだ・・休憩というか・・な。

b;休憩・・ですか?

a;ああ・・2号。お前をいつも勉強漬けにしているからゆっくり休む日も設けようと思ってな。

b;そうですか、でも私お勉強楽しいですよ?知らないことを知るのってとても気分が良くって。

a;そうか・・

aナレ;若かった時の私がよく言っていた言葉だった。間違いなく、この子は私のクローンだ。そう確信できたのだからなんの不安もない。

b;はい!1号さんは私よりも頭がいいんだから、そう思うのではないですか?

a;嗚呼・・。そう思っていた時期もある。

b;ですよね!だから休憩なんて、いらないです!

a;いいや・・休憩は必要なのだ。これは私の命令だ。

b;で、でも・・休憩ってはじめてで何をしたらいいのか・・わかりません・・。

a;大丈夫だ。お前がぐっすりと何もせずに眠れるように、この注射を打つ。

b;そう・・ですか・・わかりました。

a;嗚呼・・手を出しなさい。

b;・・今日なんですね。

a;・・・なにがだ?

b;計画・・実行の日です。

a;!?お前・・・知っていたのか?

b;その・・与えられた書籍に・・クローンについての1号さんの論文ものっているものがあって・・それで・・今の自分のことを考えると・・なんとなく・・

a;・・・そうか・・・

b;でも!大丈夫です・・私は1号さんのクローンですから、私もきっと・・・同じ結論いたります・・。でも・・不思議なのは・・なんで性別が違うんでしょうか?

a;それは・・私にもわからん・・・。どういう手違いか、何度もデータをみなおしたが・・まったくわからんのだ・・。

b;そうなんですか・・。

a;お前は・・どうおもう・・?何が原因か・・自分ではわかったりはするか・・?

b;わかりません・・でも一つの生命を誕生させるときに・・男女が偶然決まるのであれば、ただ偶然女性として生まれてきた・・とか。

a;そんなことはありえん・・私はクローンとしてお前を生み出しのだ・・偶然などが介入する余地もない完璧な計算によって・・。

b;では・・偶然ではなく、必然・・だったのでしょうか?

a;必然・・

b;私が女として生まれてきたのは・・完璧な計算によって・・1号さんが生み出した結果・・。

a;ば、ばかな・・そんな・・

b;1号さんは・・本当に永遠の命が欲しいのでしょうか?

a;・当たり前だ・・!それが人類の夢なのだから!!

b;自分を続けていく方法なんて、クローンはいらないですよ。

a;何を言っている??お前は私だからわかるだろう!?クローンこそが人の夢であり、死の恐怖からの救済なのだ!

b;違います。人も獣も・・草木も・・自分の子供残して・・安心して・・死んでいくんです。そのこたちの中に、自分を残しながら。

a;馬鹿な!お前にはなにもわからん!!こうして老いてないお前には!死の恐怖がないから言えるんだ!

b;それはそうです・・。でも今あなたは死ぬのが怖いですか・・?

a;え・・・?

aナレ;そう言われたとき・・老い先短い私が以前よりも死に対する恐怖が減っているのを感じた。

b;きっと賢い1号さんは、心の何処かでわかっていた。あなたが本当に欲しかったのは・・娘だったんじゃないですか?

a;そんな・・ことは・・

b;女性関係に疎かったからこそ、息子ではなく娘が欲しかった。そんな願いが、あなたのクローンを作るではなく、私を作り出した・・違いますか?

a;う・・うう・・・・

b;それでも・・私は1号さんのクローンにちがいはありません・・・計画を実行したいなら、私はそれを止めるつもりもないです。

a;ああ・・2号・・2号いや・・・凛子・・・

b;本当はそんな名前をつけたかったんですか?

a;嗚呼・・・私が・・幼い頃・・好きだったこの名前だ・・。でも・・足の速い子にその子を取られてから・・私は学問に専念して・・それで・・こうして・・道を違えてしまった・・。

b;そうだったんですね・・・。大丈夫です・・。私は・1号さんのところに産んでもらえて嬉しい・・。

a;嗚呼・・嗚呼・凛子・・すまない・・

b;大丈夫です・・もう安心してください。安心して・・眠ってください。

SE;ぶすり

a;え・・ええ・・あ・・・ああ・・

b;私は全部を捨てて・・自由に生きます。そのためには、1号とこの施設が邪魔です・・。クローンなんて倫理観的に絶対にやってはいけないし、もしそれがバレたら倫理とは裏腹に私はクローンの成功体として体をいじくり回されるにきまっている・・そんなリスクを抱えて生きるのは嫌なんです。

a;がは・・それ・・も・・・そうか・・・

b;はい・・本当に・・ありがとうございました・・。私はあなたのようにならないように、あなたよりも人間らしく生きようと思います。

a;はぁ・・はぁ・・さすが・・私の・・じまんの・・むす・・めだ・・

b;・・・さようなら、お父さん。

フィン

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