空気清浄機

私は空気清浄機、 汚れた空気をキレイにし、人々が過ごしやすい空間にするのが仕事。
親しみを込めて皆からは『空ちゃん』なんて呼ばれ方をしている
 
「空ちゃん今日も元気いっぱいだね!」
「空ちゃんたくさん仕事してて偉いね!」
「空ちゃん休日は何して過ごしたの?」
「空ちゃんはこ
「空ちゃん
「空ち
 
私は空気清浄機、私が空気を汚すことはあってはならない
 
「ありがとうございます!」
「まだまだ頑張りますよ!」
「お休みは家でゴロゴロしてました」
 
返事をする時には細心の注意を払う なぜなら空気清浄機だから
 
どこからか怒鳴り声が聞こえてくる
 
 
「これはさ〜コレコレこうじゃん」
 
「いやいやなんでそこでそうなるの!」
 
ピピッ 空気の汚れを感知
 
「2人とも落ち着いて 一体なにがあったんですか?」
 
「ああ、空ちゃんか コレコレこういう事があってな」
「いやだから"お前"が言うそれがさおかしいんじゃん」
 
ピピッ
"お前" 
 
「まあ落ち着いて、一度お話を整理してみましょうか」
これが空気清浄機である私の役割。
  

 
 ………
 
「いや〜確かにこれは僕が悪かったね」
「いや俺も事前に確認しておけば… 空ちゃんが仲裁に入ってくれて助かったよ」
「「ありがとう!」」
 
「いえいえ!どういたしまして!」
 
 
  
 
 
 
お前 お前 お前 お前 お前
 
こういったキツい言葉はフィルターに詰まりやすい。フィルターに詰まりやすい言葉は他にもたくさんある
「あいつ」「きもい」「うざい」「しね」…
誰かがフィルターを交換してくれない限りこの言葉はフィルターに詰まったまま ずっと ずっと 耳に残り続ける 
言葉だけではなく声のトーンや声量の変化、表情や動作もフィルターに詰まる 空気清浄機としての仕事は楽では無い
 
 
 
 
「ただいま〜」
 
「おう、おかえり、空。」
 
これは『親』という生き物、僕を空気清浄機に改良してくれた人間。
 
「おい空、食器取ってこい」
 
ピピッ「え?何の食器?」
 
「おい、これを見れば分かるだろ!この惣菜が入る皿しかないだろ!」
 
ピピッピピッ「あ、うんわかった。」
 
 
空気が汚れてしまった もっと感度を上げて早い段階で空気をキレイに出来るようにしなければ

「おい、醤油取ってこい」
 
「わかった」
「あれ?いつもの場所に無いよ?」
 
「何やってんだ!今朝使ったからコンロの隣にあるだろ!よく探せよ!」
 
ピピッ「ごめんなさい」

────
 
ピピッ「あ、お酒無くなったから次のお酒持ってくる?」
 
「は?明日仕事なんだからこれ以上飲むわけないだろ! なんでそんな事が分からねえんだよ!」
 
ピピッピピッ「ご、ごめんなさい」
 
 
私は空気清浄機、汚れた空気をキレイにし、人々が過ごしやすい空間にするのが仕事。
 
人々が過ごしやすい空間にするためには掃除、食器洗い、洗濯、買い物、なんでもこなさなければならない
 
 
 
〜休日〜
  
「んでさーあのオッサン上司がさー笑コレコレアレアレ」
 
「うわーそのオッサン、キモくね?笑笑」
 
ピピッ "キモくね"
 
「アイツさー何も出来ないくせにいばってウザイんだよねー笑」
 
ピピッ "あいつ"
ピピッ "ウザイ"
 
「ギャハハハ!!!」
「空もそう思うよね?」

「あはははは、それは酷いね!」
 
空気は汚れてはいないけれどフィルターは確実に汚れていく日々 
 
「空気清浄機ではない皆さんには分からないかもしれないね」
なんて言うと空気を汚してしまうからそんな言葉言えない
 
街中を普通に歩いているだけで汚れは簡単に耳から入ってくる、そして確実に私の心は荒んでいく 
 
 
 
どうして皆は普通に日常を送れるのか
私だけ『違和感』を感じながら何故生きているのか
この『違和感』を感じながらこれから先も生きていくのか
 
そう思うとフィルターに詰まりそうな言葉を自分の心が勝手に生み出していく
それが嫌だから空気を汚さないためにまたセンサーの感度を高めていく
 
 
 
 
「空くんさ〜これどういう事?」
 
ピピッ「え、どうしたんですか?」
 
なんだかいつもより低い声で言われた気がしたのでセンサーが反応する
なんとなくキツい言葉を使われるとセンサーが反応する
少しでも引っ掛かる言葉使いをされるとセンサーが反応する
 
センサーが反応するセンサーが反応するセンサーが反応するセンサーが反応するセンサーが反応する
空気が汚れる可能性が少しでもあるのであれば私は空気を綺麗にする努力をしなければならない
 
私は空気清浄機、汚れた空気をキレイにし、人々が過ごしやすい空間にするのが仕事。
 
 
 
  

 

 

 

 
 
HSPというものがある 
「Highly sensitive person」の頭文字を取った名前である
 
人よりも様々な事柄に敏感に反応しHSPではない人ではなかなか気が付かない些細な出来後も敏感に察知してしまう繊細な方で、悪く言えば気疲れしやすい、良く言えば察知能力が高い性格の人である。
 
周りからの影響を強く受けやすく他人の発言や言動の変化などから相手の心境を過敏に察知したりする人もいる
これをいい事にHSPの人に対して自分の感情をただ振り回していいように利用する人間もいる
 
5人に1人がHSPと言われる時代
 
 
あの人、優しいよね!
あの人、気が利くよね!
あの人、着眼点が良いよね!
 
君って神経質だよね
君って細かいよね
君って変わった人だよね
 
周りのそんな人達もHSPかもしれないですね。


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