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ITストラテジスト|輸出入業務|課題対応|R01STPM2Q1

問題の出典:令和元年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問1 設問ア
論文の参考:令和元年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問1

ディジタル技術を活用した業務プロセスによる事業課題の解決について

問題文については、IPAのサイトからご確認ください。

設問ア あなたが携わったディジタル技術を活用した業務プロセスによる事業課題の解決において、解決しようとした事業課題及びその背景について、事業概要、事業特性とともに800字以内で述べよ。

1.解決しようとした事業課題及びその背景について

1.1.業務の背景
 A社は、ビューテイケア用品やヘルスケア製品の製造・販売を行う化学品メーカである。5年前に、海外の子会社・関連会社を含めたA社グループ全体の業務の効率化及び品質の向上を目的として、シェアードサービスセンタをアジアの新興国に設立した。A社は、グループ各社の業務の異なる手順を標準化して、シェアードサービスセンタへの業務の移管を進めてきた。今般、A社輸出入業務が、シェアードサービスセンタへ移管された。

 A社は、最近、アジア市場で売上げを伸ばしていることから、A社輸出入業務における作業量は大きく増えている。さらに、新興国の離職率は日本に比べて高く、業務ノウハウが定着しないことによって、入力ミスや書類の入力待ちの滞留などA社輸出入業務の品質の低下が懸念されている状況である。

1.2.解決しようとした事業課題
 A社輸出入業務では、信用状による取引を行っている。輸出業務においては、輸出先の信用状通知を確認した後に船積書類を発行することとしており、輸入業務においては、輸入先がA社の信用状通知を確認した後でないと船積書類を受け取ることができない。

 これら書類手続きにおいては手入力のものが多く、またイメージファイル化されているものについても、内容の確認においては目視での照合作業が行われている。これらの契約書や船積書類の到着遅れや入力ミスがあると、貨物が滞留することがあり、業務的には致命的な影響を与えることがある。

 このため、業務的なリスクが高く、ディジタル技術を活用した業務プロセス改善によって改善が図れると考えられる業務を選択し課題の解決を進めることとした。


設問イ 設問アで述べた事業課題の解決に当たり、あなたはどのようなディジタル技術を活用し、どのような業務プロセスを実現したか、その際に実現性を担保するためにどのような検討をしたか、800字以上1600字以内で具体的に述べよ。

2.活用したディジタル技術と業務プロセスの実現、ならびに実現性担保の検証について

2.1.活用したディジタル技術と業務プロセスの実現
 A社の輸出入業務において、担当者の作業量を測定した結果、メールで受信した契約書のイメージファイルや船積書類から、引渡条件や保険に関する情報を貿易システムに手入力する作業の負荷が、最も大きいことが分かった。具体的には以下の業務であり、改善可能性があると考えた。

(ア) インターネットバンキングでのダウンロード作業・アップロード作業は、1回当たリの操作に手間が掛かる。このため、1日1回しか行っていない。
(イ) メール送信作業・メール受信作業は、単純作業の組合せで負荷は低いが、頻度が多い。
(ウ) 貿易システムがもつ契約情報を照会して、海外の子会社・関連会社からメールで送られてくる契約書のイメージファイルや船積書類の内容と相違がないかを目視で照合している。契約書のイメージファイルの内容は、商品コードや出荷先住所などの文字がかすれていることがある。

 これらにおいて、人がPC上で行う操作を記憶できるソフトウェア型の仮想ロボット(以下、ソフトウェアロボットという)とOCRとを組み合わせて作業を自動化することで、作業の正確性と即時性を高めることができる可能性があると考えた。

2.2.実現性担保のための検証
 ディジタル技術により改善を行う業務については、実業務の細かい特性により想定どおりの効果がでない可能性もある。このため、実現性担保のための実証実験を実施した。実証実験では、作業の正確性と即時性の二つの観点で評価を行った。(以下の(ア)(イ)(ウ)は前項2.1.の記載に対応している)

 実証結果は次の通りである。まず、正確性の観点では、おおむね想定どおりに、ソフトウェアロポットの誤作動や異常停止もなく、作業の自動化が可能であることを確認できた。具体的には、(ア)のファイルのアップロード作業・ダウンロード作業については、人の介在なく自動化できると評価した。
(イ)のメール送信作業も同様の評価とした。メール受信作業は、受信するメールの内容が多岐にわたるので、自動化を進めるには、作業を詳細に整理する必要があると評価した。(ウ)については、入力作業に関係するOCRの識字率は、OCR単体では期待値よりも低かったが、ソフトウェアロボットとの連携によって、識字率は上がり、入力作業の正確性が向上すると評価した。

 次に、即時性の観点では、複数のソフトウェアロボットを並列稼働させることによって、作業全体の即時性を上げられることも確認できた。ただし、作業の自動化が進むことによって、A社輸出入業務のボトルネックとなる作業が解消された場合は、貿易システムと関連する他システムとの連携上のプロセスが次のボトルネックになる可能性があるため、今後の課題として管理することとした。


設問ウ 設問イで述べたディジタル技術を活用した業務プロセスが、事業課題の解決に貢献することについて、あなたが事業部門に説明した内容は何か。また、事業部門から指摘されて改善した内容は何か。600字以上1200字以内で具体的に述べよ。

3.事業課題の解決に貢献することについて説明した内容と指摘されて改善した内容
3.1.事業課題の解決に貢献することについて説明した内容について

 これまでに行った検証結果において、OCRとソフトウェアロボットを利用することにより、業務の即時性と正確性が向上することが確認できたため、事業部門に対してはこれらによる人手の業務量の削減ができることを説明した。
 ただし、事業部門においてソフトウェアロボットのメンテナンスや改良を行ってもらうこととしているが、実証実験を行う中で作業の担当者は、ソフトウェアロボット作成の習熟度が上がるにつれて、自ら思い思いに多くの種類のソフトウェアロボットを作成していくことになるという問題があった。このため、A社のIT部門は、作業の自動化が進むことで、どこでどのようなソフトウェアロボットが稼働しているかを把握するのが難しくなった。
 このような管理が不十分な状況で、複数のソフトウェアロボット間で連携して作業を行っている場合、他のソフトウェアロボットの誤作動や異常停止の原因になり、業務継続性が脅かされるおそれもあった。
 このため、本システムの本格導入に向けては、ソフトウェアロボットの利用ガイドラインを作成し、事業部門に対しては、それに沿った使い方をするよう依頼を行った。

3.2.事業部門から指摘されて改善した内容

 事業部門においては、メンバによるITリテラシーの差が大きく、今回の運用変更についていけないメンバーが一定数でてくることを懸念しているとの指摘を受けた。これにより、システム改善を行った部分のみは業務改善されるが、それをつなぐ人手の業務において生産性が落ちる可能性があると想定できた。また、本業務ではスキルの蓄積や継承が十分でないことも事業課題であったことから、システム導入時には、ITリテラシーの差に依らず利用できるマニュアルの整備を行うことを決定した。
 上記、検証時の問題と事業部門から受けた指摘とIT部門での更なる検討の結果、利用ガイドラインでは、ソフトウェアロボットの作成ルールだけでなく、テスト環境の利用ルール、誤作動や異常停止時のリカバリ手順作成要領、本番稼働前のIT部門によるレビュー実施などを定めることとした。また、マニュアルとしての使用性、保守性も確認観点として追加した。

 本格導入の計画では、A社のIT部門とシェアードサービスセンタで協力しながら、利用ガイドラインに沿って、実証実験で自動化しやすいと評価された作業から段階的に導入し、A社輸出入業務のDXを推進することとした。

以上

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