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お客さまに「捨てられないパンフレット」を渡すコツ (1)

由緒ある新潟県・彌彦神社のお膝元、弥彦温泉で創業300年を超える「四季の宿みのや」。代表(現在は会長職)を務める白崎豊大さんに、意外な手帳術をお聞きしました。


インバウンドで増えた外国への営業

白崎:最近はインバウンド効果で、当館でも外国人のお客さまが増えています。10年前は外国人のお客さまはほとんどいらっしゃいませんでしたが、いまでは1週間のうち少なくとも5日くらいは、団体、個人を問わず、外国のお客さまをお迎えしています。

──外国人のお客さまを増やすために、何か営業努力はされていますか?

白崎:いま、シンガポール、香港、台湾といった海外の旅行代理店に、日本全国の地方自治体やホテル、旅館がひっきりなしに営業をかけています。そこで何を持参するかといえば、やはり紙のパンフレットですよね。それはもう山のように、どっさりと。で、パンフレットはどうなると思いますか?

──興味がなければ、捨てられてしまうかもしれませんね。

白崎:そうなんです。ある旅行代理店の担当者にこっそり聞いてみたら、「ここだけの話、ほとんど捨ててしまっています」というんですよ。それはそうですよね。彼のところには日本から年間3000人以上が営業にくるそうです。すべてのパンフレットにしっかり目を通し、保存しておくための時間とスペース確保しようとしたら、きりがないですから。

──たしかに、展示会などで山ほどパンフレットをいただいても、すぐに捨ててしまいますね。

白崎:大きな展示会があると、帰りの会場や最寄り駅のゴミ箱は捨てられたパンフレットの山です。苦肉の策でティッシュやお菓子を同封しても、抜き取られてパンフレットは捨てられます。そこで、「捨てられないように」「使ってもらえるように」と考えたのがこれなんです。

──なるほど。透明のビニールカバーに、資料やパンフレットを挟み込んでいるわけですね。

白崎:当館に連泊してくださる外国人のお客さまや、海外の旅行代理店の担当者には、こういったものをお渡しします。外側の見える部分には、季節感を感じる写真や、その方にちなんだ写真をプリントアウトしてお入れして。けっこうよろこんでいただけていて、初対面の方でも距離がぐっと縮まるんです。

──心が伝わる工夫ですね。中身はどうなっているんですか?

白崎:こちらは外国人のお客さま向けのものですが、中には弥彦村周辺や彌彦神社境内の地図、当館のパンフレットなどが入っています。海外への営業用は、英語で料金表などを入れています。こんなふうにビニールケースに入れておけば、簡単に捨てようという気にはなりませんよね。

──旅のしおりみたいな感じですね。コンパクトなのにパッとA4の用紙が開くから、スマホで情報を見るより便利かも。観光名所を記したエリアマップなどは、紙のほうが見やすいですね。

白崎:差し上げた方に使っていただけるよう、パンフレットだけでなく、メモノートやTODOリストも入っているんです。旅の道中でも使っていただけるし、これなら持ち帰ってもらえるだろうと考えて。いろいろなものが詰まっていることがポイントですね。

──これは捨てられませんね。ビニールカバーに入っているから、特別感もある。実際に使ったり、大事にしまっておくと思います。このアイディアはどこから生まれたんですか?

白崎:もともと私は野口悠紀雄先生考案の「超」整理手帳を使っていたんです。A4サイズを4つ折りにした縦長のサイズで、スケジュール・シートやA4の資料を「挟んで」使う手帳です。

重要なのは「資料をファイルできる」こと

──なるほど。「超」整理手帳からひらめいたサービスなんですね。

白崎:「超」整理手帳の大きな特長は「手帳でありながら、同時にA4ファイルとして使える」ということです。従来の綴じ手帳と違って、構成要素を簡単に着脱できるから、必要なものだけ挟んで持ち歩ける。仕事で使う資料はほとんどA4だから、4つに折ればスマートに携行できるわけです。

──みのやさんのパンフレットも、ぴったり収まるように、A4四つ折りサイズ、ジャバラ折りになっているんですね。

白崎:これは海外のお客さま向けのパンフレットですが、オンデマンド印刷で特注しました。いまは少部数印刷でも、比較的安価で融通がききます。A4四つ折りサイズだからこのケースにぴったりだし、ジャバラ折りだからパラパラっと開いて見やすいし、たためばコンパクトでしょう。

──これはビジネスをしているすべての方々に紹介したい使い方ですね。ところで、白崎さんはいつ頃から「超」整理手帳を使い始めたんですか?

白崎:もう20年以上になるでしょうか。野口悠紀雄先生の著書で紹介されていたのを読んで、使いはじめたという記憶があります。

──20年も使い続けているのはすごいですね。それまではどんな手帳を使っていたんですか?

白崎:いわゆるシステム手帳です。「超」整理手帳に出会う前は「ファイロファックス(Filofax)」というバイブルサイズの分厚いバインダー式手帳を使っていました。

──ビジネスマンはみんな、あの分厚い手帳を持っていましたよね。

白崎:そうそう。当時はリフィルを自作して、バインダーに合うように穴を開けて……と、いろいろ苦心していました。もともと私は手帳にいろいな資料を挟んで持ち歩きたかったんです。

──たとえば、どんな資料を挟むんですか?

白崎:旅館やホテルは装置産業といって、設備投資のために多額の借金をせざるをえない商売です。いうならば、20年分の仕入れを一度に行うようなもの。だから、銀行とのおつきあいが欠かせません。経営者は常に経営事情を把握していなければ、銀行に信用されない。だから、経営資料を常に手帳に挟んでおきたかったんです。

──なるほど。

白崎:経営資料の他にも、日々の予約管理など、A4の紙で見たいものがたくさんあります。そういうわけで、システム手帳時代は資料を縮小コピーしてリフィルに貼り付けて、折りたたむというめんどうなことをやっていました。だから「超」整理手帳を見たときに、「これだ!」と思ったんです。

──「資料をファイルできる手帳」というのが重要だったんですね。たしかに、紙の資料はほぼA4です。ペーパーレスの時代とはいえ、やっぱりまだまだ紙の資料を携行するシーンは多いですよね。

白崎:私自身、持ち歩きたいものって、実は数週間のスケジュール+重要な紙の資料なんですよね。たとえばスケジュール欄だって、過去の分を持ち歩く必要はないでしょう。

──たしかに、1年分のスケジュール欄を持ち歩くのは、非効率な気がします。

白崎:私は「超」整理手帳をお会いする人によくすすめているんですが、「手帳です」と紹介すると「ちょっと細長くて大きいですね」なんて言われてしまう。でも、「こうやってA4用紙を4つに折るとコンパクトに持ち歩けますよ」って、ファイルの役割を紹介すると、納得してくださるんですよ。


多忙な白崎さんのスケジューリングについての考え方は、次回(2)で。



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